【公演レポ】イタリア・オペラの巨匠リッカルド・ムーティ指揮による歌劇《マクベス》(演奏会形式)、全観客総立ちの歴史的名演!

4月21日、イタリア・オペラの巨匠リッカルド・ムーティ指揮《マクベス》(演奏会形式/字幕付)最終公演を東京文化会館で鑑賞した。

久々に聴かせてもらった海外超一流指揮者指揮による驚愕ずべき超名演。マエストロムーティの指揮ぶりは、あたかもギリシア・ローマ神話の主人公が降臨したかのような神々しい惚れ惚れとするような見事なもので、オーケストラを完全に制御・コントロールしていた。

指揮棒を振り下ろす一挙一動がオーケストラの音に、細部に渡り徹底的に反映されていたのは驚いた。それはあたかもイタリアオペラの神が指揮台から直接指示しているような錯覚に陥り、驚愕した。

マクベス役のバリトンは、俳優・演出家の経験があるルカ・ミケレッティ。マクベス夫人役のソプラノは、アナスタシア・バルトリ。両者とも若々しい豊かな表現力で、聴衆を大いに魅了した。


また、イタリア・オペラ・アカデミー合唱団も特筆すべき名コーラスを披露。同合唱団も弱音の出し方がすばらしく、終始にわたり引き込まれた。

そして、マエストロムーティに次いで最も称賛しなくてはならないのは、東京春祭オーケストラだろう。

4月6日~16日にかけて実施されたリッカルド・ムーティによる「イタリア・オペラ・アカデミーin東京」で徹底的に鍛えられた東京春祭オーケストラの名演奏は驚愕すべきレベルにあった。

各々のパート、それぞれの楽器の音色がピアニッシモからフォルテッシモまで細部まではっきりくっきりと聴こえて、特に弱音の出し方が素晴らしかった。メリハリある演奏だったため、演奏会形式だったが歌劇《マクベス》の情景を容易に想像することができた。

イタリアオペラを知り尽くしたマエストロ・ムーティから2週間指導を直接受けた東京春祭オーケストラのイキイキとした切れ味抜群の名演奏に圧倒された。

オーケストラの奏者が素晴らしくヴァイオリンだけ見ても、読売日本交響楽団の長原幸太、東京フィルハーモニー交響楽団の依田真宣、大阪交響楽団の林七奈と日本を代表するプロオケのコンサートマスター3名が参加したほか著名コンクール入賞者がズラリと並んだ。弦だけでなく木管、金管も若手を中心とし豪華絢爛。精鋭揃いで日本クラシック界の将来を担う布陣だった。

素晴らしい布陣を加味しても2年続きのコロナ渦で、これほどまでに高水準のオペラ公演がオペラの本場イタリアから遠く離れた日本で行われたことは奇跡に等しく、日本オペラ界の歴史に残る偉業と言えるだろう。

終演後、巨匠リッカルド・ムーティに対するソロ・カーテンコールが複数回あり、最後はほぼ全員によるスタンディングオベーションがあった。クラシックコンサートでほぼ全観客によるスタンディングオベーションは珍しい。会場はロックコンサートを彷彿とさせるような熱狂の渦に巻き込まれた。

このような素晴らしいコンサートが開かれるのは、鈴木幸一委員長をはじめとする実行委員会とスタッフの手腕によるところが大きい。ただ唯一残念なのは、このような歴史的名演のテレビ放映や映像化の予定の話がまだ聞こえてこないことだが、こうした声が大きくなることを願っている。

写真提供:東京・春・音楽祭実行委員会/撮影:青柳 聡 or 増田雄介

イタリア・オペラ・アカデミー in 東京 vol.2
リッカルド・ムーティ指揮《マクベス》(演奏会形式/字幕付)

プログラム詳細:

日時・会場

2021/4/19 [月] 18:30開演(17:30開場)
2021/4/21 [水] 18:30開演(17:30開場)
東京文化会館 大ホール

出演

指揮:リッカルド・ムーティ

マクベス(バリトン):ルカ・ミケレッティ
バンコ(バス):リッカルド・ザネッラート
マクベス夫人(ソプラノ):アナスタシア・バルトリ
マクダフ(テノール):芹澤佳通
マルコム(テノール):城 宏憲
侍女(ソプラノ):北原瑠美
医者:畠山 茂
召使い:氷見健一郎
刺客:氷見健一郎
伝令:片山将司
第一の亡霊:片山将司

第二の亡霊:金杉瞳子
第三の亡霊:吉田愼知子
管弦楽:東京春祭オーケストラ
合唱:イタリア・オペラ・アカデミー合唱団
合唱指揮:キハラ良尚

曲目

ヴェルディ:歌劇《マクベス》(全4幕)
[上演時間:約3時間(休憩1回含む)]

リッカルド・ムーティ指揮《マクベス》(演奏会形式/字幕付)
桜咲く上野を舞台に東京の春の訪れを音楽で祝う、国内最大級のクラシック音楽の祭典。
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