【ゲネプロ】新国立劇場オペラ、ワーグナーの祝祭的芸術讃歌「ニュルンベルクのマイスタージンガー」が完遂!


新国立劇場と東京文化会館が各地の劇場と連携して展開してきたオペラプロジェクト<オペラ夏の祭典2019-20 Japan ↔ Tokyo ↔ World>がついに完結。

ワーグナーの祝祭的芸術讃歌「ニュルンベルクのマイスタージンガー」ゲネプロが開催された。同作は、上演に6時間を要し、実力派オペラ歌手が多数必要とされる超大作。

2020 年夏に公演される予定だったが、新型コロナウイルスの影響で20年の公演は延期となったが、2021年11月18日に初日を迎えた。

ワーグナー作の「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は、16世紀のドイツ、ニュルンベルクを舞台とするマイスタージンガー(歌名人)の物語。人々の尊敬を集めるザックスは、靴屋の親方。若い騎士ヴァルターの大胆で型破りな歌に魅力を感じる。多くの障害を乗り越え、ザックスは彼をマイスターに推薦するのが物語の大筋となる。同作は、ワーグナーのオペラの中で唯一といってもよい明るい楽劇として知られる。

ハンス・ザックス役のトーマス・ヨハネス・マイヤーは、著名なワーグナー歌い手であり、教養溢れる理性的歌い回しと品位ある美声が魅力的。父性を感じさせる演技は、五時間出ずっぱりの舞台において見ごたえがあった。

ヴァルター・フォン・シュトルツィング役 シュテファン・フィンケの堂々たる体躯から発せられる輝かしいテノールと勢いのある勇ましい演技に魅了された。聞き応え満点のテノールは「ニュルンベルクのマイスタージンガー」の芸術性をさらに輝かしいものにした。

ベックメッサー役のアドリアン・エレートは、第二幕の劇の中でユーモラスな歴史的な衣裳を身につけて、熱唱。精密な作曲技法によって構築された複雑なリズムや難易度高い表現をものともせず、安定した歌唱を披露した。

海外から素晴らしい歌い手が来日する中、日本人歌手も奮闘した。主要キャストの一人であるダーヴィット役 伊藤達人の若々しく凛々しいテノールは特筆もの。海外の歌手と比べても一歩引け劣らない堂々たる歌声は驚きを超え、感動的だった。

エーファ役 林正子の歌唱は安定感があり艶やか。長丁場の舞台の華として存在感が溢れており、もっと長い時間聞いていたい感情を駆り立てられるような美声だった。

新国立劇場合唱団と二期会合唱団による合唱は、歌手とオーケストラがつくりだす音楽を、さらに立体的なものとした。第3幕の祝祭で歌われる「目覚めよ、朝は近づいた」の合唱は、特筆すべきもので、心に潤いと癒しを与えてくれた。

大野和士芸術監督&東京都交響楽団は、ワーグナー特有の重量感と躍動感溢れるサウンドを構築。芸術における伝統と革新性の対立、寛大なる父性、年長の男性が若い娘に向ける純愛など豊かな芸術讃歌を響かせた。

演出家のイェンス=ダニエル・ヘルツォークに巧みな舞台構成と演出力により、休憩時間を福得て6時間もの長丁場である舞台は、あっと言う間に終焉を迎えた。 ワーグナーのオペラは神話や伝説を題材にしたものが多いが「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は、中世の職人たちによる歌と愛をめぐる人間ドラマ。

社会の争いや苦悩は芸術によって解決できるもので、芸術こそが人類の救済につながることを感じさせてくれるヒューマン・オペラ(人間歌劇)だった。

■新国立劇場 2021/2022シーズン
オペラ夏の祭典2019-20 Japan↔Tokyo↔World
リヒャルト・ワーグナー
《ニュルンベルクのマイスタージンガー》<新制作>
全3幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉

会場:新国立劇場 オペラパレス
公演期間:2021年11月18日(木)~12月1日(水)
2021年11月18日(木)16:00
2021年11月21日(日)14:00
2021年11月24日(水)14:00
2021年11月28日(日)14:00
2021年12月 1日(水)14:00

予定上演時間:約5時間55分(休憩含む)

スタッフ:

【指 揮】大野和士
【演 出】イェンス=ダニエル・ヘルツォーク
【美 術】マティス・ナイトハルト
【衣 裳】シビル・ゲデケ
【照 明】ファビオ・アントーチ
【振 付】ラムセス・ジグル
【演出補】ハイコ・ヘンチェル
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト:

【ハンス・ザックス】トーマス・ヨハネス・マイヤー
【ファイト・ポーグナー】ギド・イェンティンス
【クンツ・フォーゲルゲザング】村上公太
【コンラート・ナハティガル】与那城 敬
【ジクストゥス・ベックメッサー】アドリアン・エレート
【フリッツ・コートナー】青山 貴
【バルタザール・ツォルン】秋谷直之
【ウルリヒ・アイスリンガー】鈴木 准
【アウグスティン・モーザー】菅野 敦
【ヘルマン・オルテル】大沼 徹
【ハンス・シュヴァルツ】長谷川 顯
【ハンス・フォルツ】妻屋秀和
【ヴァルター・フォン・シュトルツィング】シュテファン・フィンケ
【ダーヴィット】伊藤達人
【エーファ】林 正子
【マグダレーネ】山下牧子
【夜警】志村文彦
【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団、二期会合唱団
【管弦楽】東京都交響楽団
【協力】日本ワーグナー協会
【制作】新国立劇場、東京文化会館、ザルツブルク・イースター音楽祭、ザクセン州立歌劇場

■公式サイト:https://www.nntt.jac.go.jp/opera/diemeistersingervonnurnber

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