【公演レポ】海外勢のワーグナー歌唱に圧倒された新国立劇場オペラ『タンホイザー』

リヒャルト・ワーグナーが作曲した、全3幕で構成されるオペラ『タンホイザーとヴァルトブルクの歌合戦』(Tannhäuser und der Sängerkrieg auf Wartburg)を1月31日、新国立劇場で観賞した。

同オペラは、一般的には『タンホイザー』(Tannhäuser)の題名で知られ、中世のタンホイザー伝説とヴァルトブルクの歌合戦伝説に題材を取った、ワーグナー5作目に当たる人気作となっている。

騎士で吟遊詩人のタンホイザーは、官能な愛と純愛の狭間で苦悩し、ヴェーヌスとエリーザベトという二人の女性を愛する。官能の愛に溺れそうになるタンホイザー。しかし、聖母マリアのような威光を放つエリーザベトは自らの命を犠牲に彼の罪を償い、救済されるというストーリー。

タイトルロールのタンホイザー役を務めたステファン・グールド(テノール)は、官能の愛と純愛の狭間で悩み、自暴自棄に陥ったタンホイザー役を見事に演じた。ヘルデン・テノール(英雄テノール)としての力量を存分に示した歌唱が圧巻だった。

最後の「ローマ語り」に至るまでパワーが落ちず、最後まで圧倒的な歌唱を披露した。


撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

禁断の地ヴェーヌスベルクに住む愛欲の女神ヴェーヌス役を務めたのは、エグレ・シドラウスカイテ(メゾソプラノ)。エグレ・シドラウスカイテのグールドに歌い負けしない鮮烈な歌唱に驚かされた。情熱的で声量も十分。妖艶な立ち振舞いは愛欲の女神ヴェーヌスにぴったりだった。


撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

領主ヘルマン1世の姪、エリーザベト役のサビーナ・ツヴィラク(ソプラノ)は、ヴェーヌスとは対照的。清純で透明感がある美しい歌声に魅了された。第2幕「歌の殿堂のアリア」では艶やかで輝きがある声がホールいっぱいに響き渡った。”歌心”が随所に表れた歌唱は喝采を浴びた。


撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

ヴァルトブルク城の騎士でタンホイザーの親友、密かにエリーザベトに想いを寄せるヴォルフラム役を担ったのはデイヴィッド・スタウト(バリトン)。「ああ わがやさしの夕星よ」と染みわたる低音で第3幕「夕星の歌」をしっとりと歌い上げた。


撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

海外勢のワーグナー歌唱が圧倒的な存在感を示し、新国立劇場ワーグナー・オペラの感動に浴した。

日本人歌手によるワーグナー歌唱も充実しており、領主ヘルマン役の妻屋秀和(バス)やビーテロルフ役の青山貴(バリトン)らが張りがある声で大活躍した。


撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

三澤洋史指揮 新国立劇場合唱団は、見事に統制されており、比類ない合唱を披露してくれた。
アレホ・ペレス&東京交響楽団によるハーモニーの美しさが強調された音作りも印象的だった。


撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

■新国立劇場2022/2023シーズンオペラ
リヒャルト・ワーグナー
『タンホイザー』
Tannhäuser / Richard Wagner
全3幕〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉

【公演日】1月31日(火)14:00
【会場】新国立劇場 オペラパレス

スタッフ:

【指 揮】アレホ・ペレス
【演 出】ハンス=ペーター・レーマン
【美術・衣裳】オラフ・ツォンベック
【照 明】立田雄士
【振 付】メメット・バルカン
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト:

【領主ヘルマン】妻屋秀和
【タンホイザー】ステファン・グールド
【ヴォルフラム】デイヴィッド・スタウト
【ヴァルター】鈴木 准
【ビーテロルフ】青山 貴
【ハインリヒ】今尾 滋
【ラインマル】後藤春馬
【エリーザベト】サビーナ・ツヴィラク
【ヴェーヌス】エグレ・シドラウスカイテ
【牧童】前川依子
【4人の小姓】和田しほり/込山由貴子/花房英里子/長澤美希

【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【バレエ】東京シティ・バレエ団
【管弦楽】東京交響楽団

【協 力】日本ワーグナー協会

タンホイザー
新国立劇場のオペラ公演「タンホイザー」のご紹介。 新国立劇場では名作から世界初演の新作まで、世界水準の多彩なオペラを上演しています。

▽新国立劇場オペラ『タンホイザー』ダイジェスト映像 Tannhäuser-NNTT

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