【公演レポ】東京バレエ団「海賊」公演、総合芸術の名に相応しい名舞台に感動!

9月25日(土)、斎藤友佳理芸術監督率いる東京バレエ団「海賊」公演を東京文化会館で観た。

バレエ「海賊」は、海賊の首領コンラッドとギリシャの娘メドーラのロマンスを主題とし、オスマン帝国が支配する地中海を舞台として繰り広げられる物語で、男性ダンサーの勇壮な踊りや女性ダンサーの華麗な舞いが見どころのグランドバレエの傑作。

2019年、東京バレエ団はロシアのセルゲイエフ版を基にしたアンナ=マリー・ホームズ版を、ホームズ氏自らの直接指導のもと初演し好評を博した。

華があるメドーラ役は、同バレエ団若手プリマとして成長著しい秋山瑛。メドーラと恋に落ちる海賊の首領コンラッド役はプリンシパルダンサーの宮川新大。その奴隷のアリ役は若手ホープの生方隆之介が担ったが、いづれも初役の舞台で注目を浴びた。

メドーラ役の秋山瑛は小気味よい華麗なダンスで観客を魅了。パシャが眠りに落ち、美しい花園の舞うシーンでは、女性ダンサー達と共に、可憐で美しいバレエを披露し、観客をうっとりさせた。

前日アリ役で活躍した宮川新大は、9月25日の本公演では主役のコンラッド役に初挑戦した。堂々し風格溢れるコンラッド役で、全幕にわたり高い技術のダンスを披露し安定感があった。演技力という面でも、メドーラ役の秋山と共に名舞台を創り上げることに貢献した。

アリ役の生方隆之介は、メドーラとのグラン・パ・ド・ドゥが見応えがあった。豹のような柔らかい弾力がある動きで、高い跳躍と複雑な回転技を披露し喝采を浴びた。

秋山、宮川、生方の三者は共にフレッシュな初役だったが、初役とは思えない程、完成度が高いダンスを披露した。

ほかギュルナーラ役の中川美雪、ランケデム役の池本祥真のダンスも高水準。バレエ団のダンサーたちによる群舞も見事に統一されており、見応えがあった。この陣営で第三キャストという事実が同バレエ団の水準の高さを物語っている。

豪華で贅を尽くしたミラノ・スカラ座の衣裳や装置により再演された東京バレエ団「海賊」公演は、まさに「総合芸術」の名に相応しいものだった。

Photo:(C)Kiyonori Hasegawa


◆東京バレエ団 「海賊」- プロローグ付 全3幕 9月25日(土)キャスト

振付:アンナ=マリー・ホームズ(マリウス・プティパ、コンスタンチン・セルゲイエフに基づく)
音楽:アドルフ・アダン、チェーザレ・プーニ、レオ・ドリーブ、リッカルド・ドリゴ、ペーター・フォン・オルデンブルク
編曲:ケヴィン・ガリエ
装置・衣裳:ルイザ・スピナテッリ
装置・衣裳協力:ミラノ・スカラ座

◆主な配役◆

メドーラ:秋山瑛
コンラッド:宮川新大
アリ:生方隆之介
ギュルナーラ:中川美雪
ランケデム:池本祥真
ビルバント:井福俊太郎
アメイ(ビルバントの恋人):安西くるみ
パシャ:岡崎隼也
パシャの従者:南江祐生

第1幕 賑やかな市場

海賊たち:山田眞央、後藤健太朗、中嶋智哉、安井悠馬、星野司佐、芹澤 創、小泉陽大、山中翔太郎
海賊の女性たち:涌田美紀、加藤くるみ、上田実歩、中島理子、花形悠月、本村明日香、長岡佑奈、佐藤瑞来
オダリスク:中沢恵理子 政本絵美 平木菜子

第2幕 海賊が潜む洞窟

海賊たち: 海田一成、後藤健太朗、昂師吏功、山下湧吾
海賊の女性たち 涌田美紀、足立真里亜、工 桃子、上田実歩

第3幕 パシャの宮殿

薔薇:二瓶加奈子、金子仁美、涌田美紀、加藤くるみ、足立真里亜、鈴木理央
花のソリスト: 三雲友里加、髙浦由美子、瓜生遥花、花形悠月、米澤一葉、長岡佑奈

指揮:冨田実里
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
協力:東京バレエ学校

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