【公演レポ】圧倒的な存在感に打ちのめされたティーレマン&シュターツカペレ・ベルリン来日公演

ベルリン国立歌劇場の付属オーケストラとして創立450年を誇る世界最古級にして最高クラスのオーケストラとして知られるシュターツカペレ・ベルリン日本公演が6年ぶりに開催。

1570年に設立されたシュターツカペレ・ベルリンは、これまでO.ニコライ、R.シュトラウス、E.クライバー、カラヤン、コンヴィチュニー、スウィトナーそしてバレンボイム等錚々たる巨匠が総監督を歴任。

1992年から同オーケストラと歌劇場を育ててきた巨匠ダニエル・バレンボイムが健康上の理由より降板。代わりにドイツを代表する巨匠クリスティアン・ティーレマンが同オーケストラを率い来日することとなった。

当初はバレンボイムの指揮により、シューベルトの未完成交響曲とチャイコフスキー交響曲第5番が演奏される予定だったが、ティーレマンの指揮となり曲目は、ワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》前奏曲と愛の死とブルックナー交響曲第7番というオール・ドイツ・プログラムへと変更になった。

前半はワーグナーの《トリスタンとイゾルデ》前奏曲と愛の死。心に染み入るような圧倒的な説得力がある指揮と演奏。シュターツカペレ・ベルリンの古き良きドイツの伝統を感じさせるビロードの様な柔らかな音色に酔いしれた。あまりにも見事な演奏のため、時間が経つのを忘れ、愛と陶酔に満ちた至福の時を味わった。

後半のブルックナー交響曲第7番は、世界最高のオーケストラとしての輝きに満ちた超名演。第七番の特徴として、劇的なクライマックスが最終章ではなく長大でゆるやかな第二楽章アダージョに置かれている点が挙げられる。低弦のまろやかで重厚な響きと高弦の透明感溢れる光り輝くような音色のコントラストが白眉。

ブルックナーならではの美しい咆哮が金管楽器から放たれ、クリスティアン・ティーレマンは指揮を通して圧倒的な存在感を示した。ティーレマンがシュターツカペレ・ベルリンと創り上げたこれまで聴いたことがない程の密度の濃い伝統的な響きと壮大なスケール感に打ちのめされた。

巨匠クリスティアン・ティーレマンは2回に及ぶソロ・カーテンコールで盛大に迎られ、忘れられない一夜の幕は閉じられた。

撮影:堀衛

■クリスティアン・ティーレマン 指揮
ベルリン国立歌劇場管弦楽団≪シュターツカペレ・ベルリン≫

日時:2022年12月6日(火) 19:00
会場:東京オペラシティコンサートホール

ワーグナー:《トリスタンとイゾルデ》前奏曲と愛の死
ブルックナー:交響曲第7番ホ長調

ベルリン国立歌劇場管弦楽団≪シュターツカペレ・ベルリン≫
Presentsクリスティアン・ティーレマン 指揮ベルリン国立歌劇場管弦楽団≪シュターツカペレ・ベルリン≫世界最古級にして最高のオーケストラ、6年ぶりの来日。ブルックナー7番&ブラームス・チクルス ドイツ音楽の美質を凝縮! ベルリン国立歌劇...
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