【公演レポ】新国立劇場 モーツァルト歌劇『ドン・ジョヴァンニ』はアリアの宝庫!

2000人以上の女性をモノにした17世紀スペインの伝説のプレイボーイで貴族のドン・ファンの滅亡を描いたモーツァルトの歌劇『ドン・ジョヴァンニ』を12月8日、新国立劇場で観賞した。

同作は19世紀ロマン派の扉を開いたモーツァルトの傑作で、ドン・ファン(スペイン語: Don Juan)は、イタリア語では「ドン・ジョヴァンニ」(伊: Don Giovanni)、フランス語では「ドン・ジュアン」(仏: don Juan)とも呼ばれる。

ドン・ジョヴァンニが貴族の娘ドン・アンナを誘惑し,その父親である騎士長と決闘になり、誤って殺害してしまう。ドン・ジョヴァンニは、村娘などへの誘惑は続けるが、騎士長の石像に連れられて地獄に堕ちるというストーリー。

モーツァルトの台本を任された台本作家は、ヴェネチア生まれのユダヤ人のロレンツォ・ダ・ポンテ。ダ・ポンテは、18世紀の希代の色男ジャコモ・カサノヴァの友人であったとされる。本作『ドン・ジョヴァンニ』では、演出家グリシャ・アサガロフの計らいより、オペラの舞台をスペインのセリビヤからイタリアのヴェネチアへ移された設定で演出されている。

タイトルロールであるドン・ジョヴァンニ役を務めたシモーネ・アルベルギーニ(バス・バリトン)は、20以上のプロダクションで100回以上ドン・ジョヴァンニを歌っているイタリアの名バス・バリトン。まろやかな豊かな歌声と豊富な経験から導き出された洒落た演技に魅了された。

ジョヴァンニの従者レポレッロ役のレナート・ドルチーニ(バリトン)は、第4曲「カタログの歌」(Madamina il catalogo è questo)で主人の女性遍歴を愉快なアリアで暴露し、聴衆を楽しませた。

騎士長の娘ドンナ・アンナ役のミルト・パパタナシュ(ソプラノ)は豊かな声で輝かしい存在感を放っていた。

アンナの婚約者であるドン・オッターヴィオ役のレオナルド・コルテッラッツィ(テノール)は、光り輝くよく響く歌声の持ち主。第21曲「私の大切な人を」(Il mio tesoro intanto)は苦しみの中にあるアンナにドン・オッターヴィオが優しく語りかける大変美しいアリア。心が温かくなる伸びやかなテナーが見事だった。

農夫の娘で結婚したばかりの身であるツェルリーナ役の石橋栄実(ソプラノ)は、ヨーロッパ勢に囲まれながらも可憐な非の打ちどころがない美声を披露。第18曲「薬屋の歌」(Vedrai carino)で、情感溢れる天使のようなソプラノで観客の心を癒していった。

ラストのドン・ジョヴァンニが地獄に落ちていき、残った6人が歌った「これが悪事の果て」では、胸がすくような気持のよいハーモニーが披露された。

パオロ・オルミ指揮 東京フィルハーモニー交響楽団は、歌手に寄り添ったバランスが良いアンサンブルを響かせた。ルイジ・ペーレゴによる舞台美術と衣裳が美しく、見栄えが良い舞台を創り上げ、アリアの宝庫である歌劇『ドン・ジョヴァンニ』に華を添えた。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

■新国立劇場 2022/2023 シーズンオペラ
ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト
ドン・ジョヴァンニ

日時:2022年12月8日(木)14:00
会場:新国立劇場 オペラパレス

スタッフ:

【指 揮】パオロ・オルミ
【演 出】グリシャ・アサガロフ
【美術・衣裳】ルイジ・ペーレゴ
【照 明】マーティン・ゲプハルト
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】斉藤美穂

キャスト:

【ドン・ジョヴァンニ】シモーネ・アルベルギーニ
【騎士長】河野鉄平
【レポレッロ】レナート・ドルチーニ
【ドンナ・アンナ】ミルト・パパタナシュ
【ドン・オッターヴィオ】レオナルド・コルテッラッツィ
【ドンナ・エルヴィーラ】セレーナ・マルフィ
【マゼット】近藤 圭
【ツェルリーナ】石橋栄実

【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

ドン・ジョヴァンニ
新国立劇場のオペラ公演「ドン・ジョヴァンニ」のご紹介。 新国立劇場では名作から世界初演の新作まで、世界水準の多彩なオペラを上演しています。

▽新国立劇場オペラ『ドン・ジョヴァンニ』ダイジェスト映像 Don Giovanni-NNTT

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