4月27日(土)、東京バレエ団創立60周年記念シリーズ第5弾 ブルメイステル版『白鳥の湖』全4幕を東京文化会館で鑑賞した。
東京バレエ団が採用する「ウラジーミル・ブルメイステル版」は、ドラマティックな演出で知られる版。近年全幕の主演を立て続けに果たしている新鋭の中島映理子と若きホープ 生方隆之介ペアがどのようなバレエと演技を見せるかに注目が集まった。
Photo: Koujiro Yoshikawa
世界最古のバレエ団 パリ オペラ座バレエ団で活躍した中島映理子の白鳥オデットは、儚さと強さを併せ持った女性像を透明感があるバレエで表現。悪の象徴であるロットバルトの娘である黒鳥オディールでは、高貴かつ妖艶なバレエを披露。黒鳥32回転のグラン・フェッテは、アクロバテックな超絶技巧。神懸かった美技で観客を大いに楽しませた。
Photo: Koujiro Yoshikawa
ジークフリート王子役の生方隆之介は、端正で凛々しいダンスを好演。恵まれた長身と正確無比なテクニックから生み出される描写力で観客の目をうっとりとさせた。
宮殿道化師役の井福俊太郎は、軽快なジャンプと回転、コミカルな演技で大活躍。宮殿道化は君主に対しても何を言っても許される特権的自由を持っており、ブルメイステル版の道化はただのピエロではなく、王子により近い存在・親しい役柄として演じられた。
プリンシパルダンサー柄本弾によるロットバルトは、王子をだまし篭絡しようとするずば抜けた表現力が秀逸。ブルメイステル版の最大の特徴は、王妃、花嫁候補とその母たち、道下と仲間たち以外は、ロッドバルトの手下であるという斬新な設定にあるが、スリリングかつエキサイティングな演出とダンスで客席を大いに沸かせた。
Photo: Koujiro Yoshikawa
夜の湖畔に現れた、白鳥たちのコール・ド・バレエは一糸乱れぬ美しさ!センチ、ミリ単位で揃えられたコール・ドは、感動的な輝きを放っていた。
舞台美術は、気鋭のデザイナー、エレーナ・キンクルスカヤがロシアの工房で完成させたもの。豪華なゴシック様式による美術は、バレエ「白鳥の湖」をさらに聖なる舞台へ昇華させ、格調の高さと神秘的な雰囲気を引き上げていた。
国内芸術団体最多の786回の海外公演を実施し、今年創立60周年を迎えた東京バレエ団 の創立記念シリーズ第六弾「ロミオとジュリエット」公演は、5月24日(金)より開幕する。ドラマティック・バレエの巨匠ジョン・クランコによる秀作。3組のロミオとジュリエットによる華麗なる競演は見逃せない。
■東京バレエ団 創立60周年記念シリーズ5
ブルメイステル版
「白鳥の湖」全4幕
4月27日(土)15:00(14:30開場)
会場:東京文化会館
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
改訂振付:ウラジーミル・ブルメイステル、(第2幕)レフ・イワーノフ/アレクサンドル・ゴールスキー
装置デザイン:エレーナ・キンクルスカヤ
衣裳デザイン:アレクサンドル・シェシュノフ
衣裳製作:ティマート・プロダクション
配役:
オデット/オディール:中島映理子
ジークフリート王子:生方隆之介
ロットバルト:柄本 弾
【第1幕】
道化:井福俊太郎
王妃:奈良春夏
侍従長:芹澤 創
パ・ド・カトル:涌田美紀、中沢恵理子、池本祥真、加古貴也
アダージオ: 金子仁美
【第2幕/第4幕】
四羽の白鳥: 中沢恵理子、工 桃子、長岡佑奈、池戸詩織
三羽の白鳥:伝田陽美、政本絵美、平木菜子
【第3幕】
花嫁候補: 三雲友里加、加藤くるみ、橋谷美香、米澤一葉
四人の道化:加古貴也、山下湧吾、山仁 尚、小泉陽大
スペイン(ソリスト):政本絵美
スペイン:後藤健太朗、中嶋智哉、本岡直也、陶山 湘
ナポリ(ソリスト):金子仁美
チャルダッシュ(ソリスト): 涌田美紀、工 桃子、岡崎隼也、海田一成
マズルカ(ソリスト):伝田陽美、鳥海 創
指揮:アントン・グリシャニン
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
協力:東京バレエ団OB・OG、東京バレエ学校
▽【プロモーション映像】創立60周年記念シリーズ5 ブルメイステル版「白鳥の湖」
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