【公演レポ】世界的名手フリーデマン・フォーゲル(シュツットガルト・バレエ団)、日独交流160周年を祝う『ボレロ』!


〈シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち〉Aプログラム公演を3月19日に観覧した。1760年に創設されたドイツの名門「シュツットガルト・バレエ団」はカンパニーでの来日を予定していたが新型コロナウィルス感染症の影響で中止となった。

しかし、本年は日独交流160周年にあたり、幾多の困難を乗り越えてシュツットガルト・バレエ団の魅力のエッセンスが詰まったガラ公演が行われることとなった。

フリーデマン・フォーゲル、エリサ・バデネス、マッケンジー・ブラウン、ガブリエル・フィゲレドら若手を含む精鋭メンバー12人が来日した。

「シュツットガルト・バレエ団」を代表するダンサーであるフリーデマン・フォーゲル(FRIEDEMANN VOGEL)にひときわ大きな注目が集まっていた。

・「うたかたの恋」第2幕のパドドゥ 振付:ケネス・マクミラン

マクミランの奇抜な傑作「マイヤリンク/うたかたの恋」は、「マノン」(1974年)や「ロミオとジュリエット」(1965年)などに並ぶマクミランの代表作としての評価を受けている作品。この作品は、19世紀末のオーストリアを舞台に、皇太子ルドルフの人生最期の8年間にわたる苦悩の日々と悲劇の結末を描いている。

世界的人気を誇るフリーデマン・フォーゲルが当日の舞台で初めて登場した瞬間、待ち焦がれていたように盛大な拍手が巻き起こった。

皇太子ルドルフ役を躍ったフリーデマン・フォーゲルのダンスは、病いと中毒に侵され、戦略結婚させられ苦悩する心情を投射したものだった。救済を求めて渇望するさまを卓越したダンスで描出。アクロバティックなリフトと繊細な表現力も素晴らしかった。

ルドルフ公の心の痛みに寄り添ったマリー役を躍ったエリサ・バデネスのバレエが艶やかで魅力的。男女が一緒に踊るパ・ド・ドゥは誘惑的な美と色気に溢れ、観客の目を虜にした。人生と愛の狭間に置かれた両者の劇的な描写力に息を呑んだ。

・「ボレロ」 振付:モーリス・ベジャール

モーリス・ベジャール振付の「ボレロ」は初演以降振付は変わっていないが踊り手によって違う作品に見える不思議な魅力を持っている。フリーデマン・フォーゲル主演「ボレロ」の上演は、現地シュツットガルトでしか許可されていないが、ベジャール財団の粋な計らいにより今回のみ特別に許可され上演された。

「ボレロ」は踊り手にとって否が応でも”自分”というものが滲み出てしまう鏡のような作品だが、フリーデマン・フォーゲルは、冒頭はしなやかで柔らかく、ひとつひとつの丁寧な表現で「メロディ」を演じた。

真紅の円卓の上、シメントリーな動きが反復され、音楽が高揚するにつれ、ダンサーの熱が帯び、東洋的な哀愁と官能といった情念が高まってくる。

途中から、東京バレエ団男性ダンサーによる「リズム」が、フリーデマン・フォーゲル扮する「メロディ」を中心に囲み、エネルギーを爆発される過程が圧巻。燃え尽きたかと思うと、「メロディ」を飲み込んで再び燃焼し尽くしてしまう。観客は度重なる興奮の渦に巻き込まれ、恍惚させられた。

「ボレロ」は、観客全体を恍惚状態に持っていく稀有な魅力に溢れた作品だという気づきを与えてくれた。踊り終えたフリーデマン・フォーゲルと東京バレエ団男性ダンサーは清々しい満面の笑みで、観客の拍手に応えていた。

終焉後、観客全員でのスタンディングオベーションでダンサーの健闘を讃えた。昨年行われた「世界バレエフェスティバル」に勝るとも劣らない熱量が会場全体を包み込んだ。

(C)Kiyonori Hasegawa

■シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたち
プログラム:Aプログラム
日時:2022年3月19日(土)
会場:東京文化会館 大ホール

─ 第1部 ─

「春の水」

振付:アサフ・メッセレル
音楽:セルゲイ・ラフマニノフ
エリサ・バデネス、マルティ・フェルナンデス・パイシャ

「ソロ」

振付:ハンス・ファン・マーネン
音楽:ヨハン・セバスティアン・バッハ
ヘンリック・エリクソン、アレッサンドロ・ジャクイント、マッテオ・ミッチーニ

「コンチェルト」

振付:ケネス・マクミラン
音楽:ドミートリイ・ショスタコーヴィッチ
アグネス・スー、クリーメンス・フルーリッヒ

「眠れる森の美女」より グラン・パ・ド・ドゥ

振付:マリシア・ハイデ(マリウス・プティパに基づく)
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
マッケンジー・ブラウン、デヴィッド・ムーア

─ 第2部 ─

「椿姫」より 第2幕のパ・ド・ドゥ

振付:ジョン・ノイマイヤー
音楽:フレデリック・ショパン
エリサ・バデネス、デヴィッド・ムーア

「やすらぎの地」 (新作世界初演)

振付:アレッサンドロ・ジャクイント
音楽:ヤイール・エラザール・グロットマン、ライ
ヘンリック・エリクソン、アレッサンドロ・ジャクイント

「オネーギン」より 第1幕のパ・ド・ドゥ

振付:ジョン・クランコ
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
ロシオ・アレマン、マルティ・フェルナンデス・パイシャ

「ブレイク・ワークス1」 より ”プット・ザット・アウェイ・アンド・トーク・トゥ・ミー”

振付:ウィリアム・フォーサイス
音楽:ジェイムズ・ブレイク

アグネス・スー、マッケンジー・ブラウン、マッテオ・ミッチーニ

「うたかたの恋」より 第2幕のパ・ド・ドゥ

振付:ケネス・マクミラン
音楽:フランツ・リスト

エリサ・バデネス、フリーデマン・フォーゲル

─ 第3部 ─

「ボレロ」

振付:モーリス・ベジャール
音楽:モーリス・ラヴェル

フリーデマン・フォーゲル

樋口祐輝、玉川貴博、大塚卓、岡﨑司
東京バレエ団

◆上演時間◆

第1部  18:00~18:40
休憩 20分
第2部  19:00~19:50
休憩 20分
第3部  20:10~20:30

概要/シュツットガルト・バレエ団 ガラ公演/2022/NBS公演一覧/NBS日本舞台芸術振興会

▼シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたちー出演者紹介vol.1 / フリーデマン・フォーゲル

▼シュツットガルト・バレエ団の輝けるスターたちー出演者紹介vol.4 / フリーデマン・フォーゲル

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