【公演レポ】米沢 唯&井澤 駿ペアが昇華させた新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』

12月28日、新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』公演を観賞した。2017年に初演された本作は、ウエイン・イーグリングによる華麗でスピーディな振付と華やかな美術が見どころの作品となっている。

ウエイン・イーグリング版は、新国立劇場バレエ団にとってワイノーネン版、牧阿佐美版に続く三番目の版となっており、年末年始を飾るにふさわしいドラマチックな夢の世界を満員の観客と共に体感した。

同版で最もハードな役柄を演じたのが、プリンシパルダンサーの井澤 駿。「ドロッセルマイヤーの甥」「くるみ割り人形」「王子」と通常2人のダンサーで演じ分けていた役を1人3役で見事に演じた。井澤は、プロローグと第二幕のディヴェルティスマン以外の場面でほどんど出ずっぱりとなった難役を端正で王子らしい気品があるダンスで披露した。

もう1人の主役である「クララ」と「こんぺい糖の精」役を踊ったのは、米沢 唯。
米沢のすべての面で高水準の卓越した技術のバレエを披露。バレエに必要な優雅さと表現力で観客を魅了した。

第二幕お菓子の国で踊られたグラン・パ・ド・ドゥは、試練の中にあっても二人が寄り添い支え合う愛のダンス。しっかりとした技量、存在感、演技力よりもたらされた優美なバレエ、芸術の昇華に感涙。

ねずみの王を踊ったのは、小柴富久修。ねずみの王をダンシングロールとして活躍させているのがこの版の特徴だが着ぐるみをつけているとは思えない程 エネルギッシュなダンスで観客を楽しませた。

「くるみ割り人形」前半の「魅せ場」である雪の結晶のコールド・バレエは、この世のものとは思えないほどの美しさ。難度が高いステップとシャープな動きで純白の「雪の世界」を見事に再現したダンサー達に、会場から大きな拍手が贈られた。

「くるみ割り人形」後半の「魅せ場」である花のワルツは、東京フィルハーモニー交響楽団により奏でられた華麗なワルツの調べに乗って、女性ダンサーのオレンジ色の衣裳と大輪の花を咲かせた舞台が眩しかった。花のワルツは、8組の男女ペアと2組のリードダンサーにより構成された。

新国立バレエ団の卓越したバレエの技量、存在感、演技力よりもたらされた麗しい舞台は、観客を感動と興奮、芸術の世界へと誘ってくれた。

撮影:瀬戸秀美

■新国立劇場バレエ団
2022/2023シーズン公演『くるみ割り人形』

日時:12月28日 19:00
会場:新国立劇場オペラパレス

スタッフ・キャスト:

【振付】ウエイン・イーグリング
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【美術】川口直次
【衣裳】前田文子
【照明】沢田祐

主役キャスト:

クララ/こんぺい糖の精 米沢 唯
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子 井澤 駿
ドロッセルマイヤー 中島駿野
ねずみの王 小柴富久修

【指揮】アレクセイ・バクラン
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団
【合唱】東京少年少女合唱隊

くるみ割り人形
新国立劇場のバレエ公演「くるみ割り人形」のご紹介。バレエを観るなら日本で唯一の国立の劇場に所属する新国立劇場バレエ団で。

▽新国立劇場バレエ団『くるみ割り人形』第1幕よりパ・ド・ドゥ

▽新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」第2幕より 花のワルツ

▽The Nutcracker and the Mouse King – The National Ballet of Japan

 

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