8月1日、ドイツオペラの名匠で読売日本交響楽団の第10代常任指揮者セバスティアン・ヴァイグレがフェスタ サマーミューザ KAWASAKIに初登場した。読売日本交響楽団のコンサートマスターは特別客演コンサートマスターの日下紗矢子。
©N.Ikegami
ドイツ・オペラを得意とするセバスティアン・ヴァイグレは、2008年からフランクフルト歌劇場の音楽総監督を務め、2015年にも同歌劇場が「年間最優秀歌劇場」に輝くなど、手腕が高く評価されている。
コンサート前の18:20よりプレトークが行われた。当日演奏されたドイツが誇る二大巨匠 ベート―ヴェンとワーグナーについて解説があった。ヴァイクレは、「ベートーヴェンの交響曲で最もユーモアあるのが第8番」「ワーグナーは音で自然を描写する」と欧米人らしいウイットに富んだトークを展開した。
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前半のプログラムは、ベートーヴェン交響曲第8番。ベートーヴェン自身は交響曲第7番のほうに人気が集中したことについて「聴衆がこの曲(8番)を理解できないのはこの曲があまりに優れているからだ」と語った逸話が残っている。ヴァイクレ&読売日本交響楽団は、4つの楽章を立体的に構成し、生き生きとし厚みがあるアンサンブルを奏でた。
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後半は、ワーグナー(デ・フリーヘル編曲):楽劇『ニーベルングの指環』 ~オーケストラル・アドヴェンチャー。ハープ4台、ティンパニ2台がセットをされ、16型の豪華なオーケストラ編成で演奏された。
ワーグナーの楽劇《ニーベルングの指環》は通常4日間かけて演奏されるが、60分に凝縮されたコンサート用のハイライト集となっている。通常のハイライト集とは異なり、4作の場面が物語順に登場する。
ヴァイグレ&読売日本交響楽団は、ワーグナーにふさわしいスケールの大きな輝かしい響きを構築。金管楽器が雄々しく力強い。松坂隼のホルンは、長い角笛ソロを堂々と吹き鳴らし、ジークフリートの勇姿を顕しているようだった。バスクラリネットのソロも誇り高く味わい深いものだった。
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16型に増強された弦の厚みが凄まじく、木管のソロが秀逸。2台のティンパニの迫力と、4本のハーブの美しさも特筆すべきものでワーグナーを得意とするヴァイグレ&読売日本交響楽団の強靭なオーケストレーションは、巨大絵巻のような熱のこもったワーグナー・サウンドを作り上げた。
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演奏後の長い静寂の後は、ワグネリアンから熱狂的なブラヴォーが嵐のように寄せられた。
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終演後もブラヴォーが鳴りやまず、ヴァイグレがホルンの松坂隼を連れて再登壇した。ワグネリアン感涙の神々しいワーグナーの世界にどっぷりと浸ることができた一夜だった。
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■フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023
読売日本交響楽団
日時:2023年8月1日(火) 19:00開演
(18:00開場/18:20-18:40プレトーク)
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール
指揮:セバスティアン・ヴァイグレ(読売日本交響楽団 常任指揮者)
プログラム:
ベートーヴェン:交響曲第8番 ヘ長調 Op. 93
ワーグナー(デ・フリーヘル編曲):楽劇『ニーベルングの指環』 ~オーケストラル・アドヴェンチャー
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