【公演レポ】東京バレエ団「白鳥の湖」公演、沖香菜&秋元康臣の息が合ったパートナーシップとコール・ド・バレエに魅了!

2月19日東京バレエ団「白鳥の湖」全4幕2日目公演をバレエの殿堂、東京文化会館で観賞した。主役のオデット・オディール役は、沖香菜子。ジークフリート王子役は、秋元康臣の配役だった。

ゴルスキー版、セグゲーエフ版、クランコ版、ヌレエフ版など様々な版がある古典バレエを代表する名作「白鳥の湖」だが、東京バレエ団が採用する「ウラジーミル・ブルメイステル版」は、ドラマティックで説得力がある演出が特徴的で、名花マリヤ・プリセツカヤも踊ったヴァリエーションです。

今回の東京バレエ団「白鳥の湖」では、気鋭の舞台美術デザイナー、エレーナ・キンクルスカヤがロシアの工房で新たな舞台装置を完成させ、初お披露目された。豪華なゴシック様式による美術は、バレエ「白鳥の湖」が本来もつ格調の高さと神秘的な雰囲気をさらにワン・ステージ高い境地へと引き上げてくれた。

今回「白鳥の湖」では初めてペアを組むオデット/オディール役の沖香菜子とジークフリート王子役の秋元 康臣は、共にクラシックバレエの本場ロシアのボリショイ・バレエ学校で学んだ経験があり、音の取り方から動き、リフトまで息が合ったパートナーシップを魅せてくれた。

沖香菜子の白鳥オデットは、儚さと強さを併せ持った女性像を透明感があるバレエで表現。
悪の象徴であるロットバルトの娘である黒鳥オディールよる高貴で妖艶なバレエと演技に魅了された。黒鳥32回転のグラン・フェッテ・アン・トゥールナンは、もっとも有名で難易度の高い女性ダンサーの回転技で、神懸かった美しさを堪能した。

ジークフリート王子役の秋元 康臣は、端正で凛々しいダンスを好演。恵まれたプロポーションと正確なテクニックから生み出されるのびの良い表現力で観客の心を虜にした。

宮殿道化師役の井福俊太郎は、軽快なダンスとコミカルな演技で、観客の目を愉しませた。宮殿道化は君主に対しても何を言っても許される特権的自由を持っており、ブルメイステル版の道化はただのピエロではなく、王子により近い存在として演じられた。

ブルメイステル版の最大の特徴は、王妃、花嫁候補とその母たち、道下と仲間たち以外は、ロッドバルトの手下であるという大胆な設定にある。通常の白鳥の湖は、スペインやマズルカなどを踊った後、おじぎをする展開になるがブルメイステル版はおじぎが省略され、展開が非常にスピーディで舞台全体の迫力が増したように感じられた。

夜の湖畔に現れた、白鳥たちのコール・ド・バレエは一糸乱れぬ美しい群舞。センチ、ミリ単位で揃えられたコール・ドは、感動的な輝きに満ちていた。

ロシア帝室バレエがチャイコフスキーにバレエ「白鳥の湖」の音楽創りを依頼したのが1875年。伝え聞くところによると、チャイコフスキーはインスピレーションを求めて、ドイツのバイエルン地方に赴き、「白鳥王」と呼ばれたルートヴィヒ2世(第4代バイエルン国王)が建立したノイシュヴァンシュタイン城を訪れた逸話があるが、時空を超えその美しい情景を思い起こさせてくれるような白鳥たちによるコール・ド・バレエだった。

(C)Kiyonori Hasegawa

■東京バレエ団「白鳥の湖」全4幕
会場:東京文化会館 大ホール
日時:2022年2月19日(土) 14:00開演

音楽:ピョートル・チャイコフスキー
改訂振付:ウラジーミル・ブルメイステル、
(第2幕)レフ・イワーノフ/アレクサンドル・ゴールスキー
装置デザイン:エレーナ・キンクルスカヤ
衣裳デザイン:アレクサンドル・シェシュノフ
衣裳製作:ティマート・プロダクション

◆主な配役◆

オデット/オディール:沖香菜子
ジークフリート王子:秋元康臣
ロットバルト:安村圭太

【第1幕】
道化:井福俊太郎
王妃:奈良春夏
侍従長:芹澤創
パ・ド・カトル:涌田美紀、足立真里亜、池本祥真、大塚卓
アダージオ:榊優美枝

【第2幕/第4幕】
四羽の白鳥:中川美雪、中沢恵理子、工桃子、上田実歩
三羽の白鳥:髙浦由美子、長谷川琴音、中島映理子

【第3幕】
花嫁候補:加藤くるみ、中島理子、長谷川琴音、中島映理子
四人の道化:安井悠馬、小泉陽大、山中翔太郎、山仁尚
スペイン(ソリスト):政本絵美
スペイン:生方隆之介、後藤健太朗、中嶋智哉、芹澤創
ナポリ(ソリスト):秋山瑛
チャルダッシュ(ソリスト):中川美雪、中沢恵理子、岡崎隼也、海田一成
マズルカ(ソリスト):伝田陽美、ブラウリオ・アルバレス

指揮:磯部省吾
演奏:シアター オーケストラ トーキョー
協力:東京バレエ学校

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