【公演レポ】プレトニョフ&東京フィル、ラフマニノフ生誕150年を祝うオール・ラフマニノフ・プログラム

5月14日生誕150年を迎える作曲家セルゲイ・ラフマニノフの生涯をたどる東京フィルハーモニー交響楽団第985回オーチャード定期演奏会を聴いた。コンサートマスターは依田真宣。同演奏会は3曲の管弦楽曲で構成された、オール・ラフマニノフ・プログラム。


写真提供=東京フィルハーモニー交響楽団

最初期に書かれた幻想曲『岩(断崖)』、円熟期の交響詩『死の島』、最晩年の『交響的舞曲』がラフマニノフと同様、指揮者・ピアニスト・作曲家でもあるミハイル・プレトニョフの指揮、東京フィルハーモニー交響楽団の演奏により披露された。


写真提供=東京フィルハーモニー交響楽団

プログラムの前半は、滅多に聴くことができないラフマニノフの幻想曲『岩』と交響詩『死の島』が演奏された。選曲に渋さがある印象の『岩』と『死の鳥』だが、詩的な美しさと色彩感はさすがプレトニョフ&東京フィル。心地よいアンサンブルを雄弁に会場いっぱいに響かせた。


写真提供=東京フィルハーモニー交響楽団

後半のラフマニノフ『交響的舞曲』はラフマニノフ生誕150年にふさわしい素晴らしいものだった。同曲は1940年にニューヨークのロングアイランドで作曲された。アメリカに移住しピアニストとして活躍した晩年のラフマニノフの集大成と言える作品で、緊密な管弦技法が聴きどころ。

第一楽章は郷里の念が込められている「白鳥の歌」と交響曲第一番の主題がモチーフされており、プレトニョフ&東京フィルは、作曲者特有の濃密で抒情的な旋律を非常に巧く表現していた。プレトニョフは、内なる魂を解き放つような指揮ぶりで東京フィルからドラマティックなオーケストレーションを存分に引き出していた。


写真提供=東京フィルハーモニー交響楽団

第2楽章は、チャイコフスキーが好んだワルツ楽章となっているが、華やかさより哀愁の念が強く描写された。第3楽章は、スケルツォ的な形式の章で調性やリズムも絶え間なく変化し、聴くものに至福の時を与えた。プレトニョフの見事な手腕により「怒りの日」の主題が幾度も押し寄せる鮮烈な演奏を聴かせてくれた。ラストの激烈なクライマックスは見事なもので観客を感動の渦に巻き込んだ。


写真提供=東京フィルハーモニー交響楽団

東京フィルハーモニー交響楽団 6月の定期演奏会はラフマニノフ・アニヴァーサリー・イヤーの“バトン”をプレトニョフから受け継ぎ、青年期のラフマニノフが苦悶した『交響曲第1番』と、ロシアのロマン派音楽を代表する曲の一つに数えられている名曲『ピアノ協奏曲第2番』が披露される。


写真提供=東京フィルハーモニー交響楽団

■東京フィルハーモニー交響楽団
第985回オーチャード定期演奏会

日時;2023年5月14日(日)15:00
会場:Bunkamuraオーチャードホール

指揮:ミハイル・プレトニョフ(特別客演指揮者)

プログラム;

ラフマニノフ/幻想曲『岩』
ラフマニノフ/交響詩『死の島』
ラフマニノフ/交響的舞曲
(ラフマニノフ生誕150年)

5月定期演奏会 特設ページ
指揮:ミハイル・プレトニョフ(特別客演指揮者)

■2023年6月定期演奏会 特設ページ
https://www.tpo.or.jp/information/detail-20230623.php

▽桂冠指揮者・尾高忠明が語るラフマニノフ(2023シーズン 6月定期演奏会)

▽亀井聖矢 (ピアニスト):東京フィル2023シーズン6月定期演奏会に向けて

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