【公演レポ】東京バレエ団、ラヴロフスキー版『ジゼル』でこの世のものとは思えない幻想美を創出

東京バレエ団がロマンティック・バレエの名作『ジゼル』を、2023年5月19日(金)から5月21日(日)まで、上野・東京文化会館にて上演。4年ぶりの海外公演を見据えての東京でお披露目公演。初日の5月19日に観賞した。

ジゼルは、中世ドイツの村を舞台に、農民に変装した恋人アルブレヒトに裏切られ、失意・狂乱のうちに亡くなった村娘ジゼルが、死後に精霊ウィリとなってからもアルブレヒトを森の精霊から守る愛の物語。東京バレエ団では、ロシアのレオニード・ラヴロフスキー版(1944年初演)が採用されている。

純粋な農民の娘 ジゼル役は、若手プリンシパルダンサーの秋山 瑛。愛が結晶したピュアで可憐なジゼルを好演。一人の女性として、第一幕は恋と悲劇、第二幕では赦しと純愛を繊細かつ透明感溢れるバレエで演じ、深い感動と余韻をもたらした。秋山の儚く、美しく、可憐バレエはジゼル役にぴったり。宙に浮くようなアルブレヒトとのパ・ド・ドゥは優美で、生きる糧となる魂の喜びを与えてくれた。


©Koujiro Yoshikawa

貴族という身分を隠し、ジゼルとの恋を楽しんでいる青年アルブレヒトを演じたのは秋元 康臣。第二幕、断ち切り難いジゼルへの思いがひしひしと伝わる役柄を快演。ジゼルを慕う気持ちを込めたソロが気高く、最大の見せ場として観客を魅了した。


©Koujiro Yoshikawa

ヒラリオン役 岡崎 隼也のダンスと演技にも熱視線が送られた。第二幕の冒頭、ジゼルを無くし、悲しみに暮れるヒラリオン岡崎とアルブレヒト秋元の表情と演技の対比が見応えがあり、心揺さぶられた。

ペザントの踊り(パ・ド・ユイット)では池本祥真の滞空時間が長いジャンプが秀逸。ミルタ役の伝田陽美は、高い技術のバレエで威厳に満ちた女王役をしっかりと務め上げ、舞台を品格が高いものとして昇華させた。

ウィリによるコール・ド・バレエ(corps de ballet、群舞)は、繊細さと美しさを併せ持つ舞台芸術。一糸乱れる幻想的なウィリの姿が超絶美。宙にふわりと浮く空気感と統一感がこの世のものとは思えない幻想美を創出した。


©Koujiro Yoshikawa

東京バレエ団は今年度7月に初のオーストラリア公演を行う。オーストラリア舞台芸術の殿堂、メルボルン・アート・センターにおいて、ラヴロフスキー版『ジゼル』が7月14日から22日まで全11公演お披露目される。日本人ダンサーならではの美しい幻想的な世界観が繰り広げられ、オーストラリアの観客の心を大いに揺さぶることが期待される。

■東京バレエ団『ジゼル』 全2幕
GISELLE Ballet in two acts

日時:5月19日(金)19:00
会場:東京文化会館

スタッフ:

音楽:アドルフ・アダン
振付:レオニード・ラブロフスキー(ジュール・ペロー、ジャン・コラーリ、マリウス・プティパの原振付による)
改訂振付(パ・ド・ユイット):ウラジーミル・ワシーリエフ
美術:ニコラ・ブノワ

キャスト:

ジゼル:秋山 瑛
アルブレヒト:秋元 康臣
ヒラリオン:岡崎 隼也

- 第1幕 -

バチルド姫:榊優美枝
公爵:ブラウリオ・アルバレス
ウィルフリード:大塚 卓
ジゼルの母:奈良春夏
ペザントの踊り(パ・ド・ユイット):金子仁美-池本祥真、安西くるみ-加古貴也、涌田美紀-山下湧吾、工 桃子-樋口祐輝
ジゼルの友人(パ・ド・シス):二瓶加奈子、三雲友里加、政本絵美、加藤くるみ、平木菜子、富田紗永

- 第2幕 -

ミルタ:伝田陽美
ドゥ・ウィリ:二瓶加奈子、三雲友里加

指揮:ベンジャミン・ポープ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

概要/ジゼル/2023/NBS公演一覧/NBS日本舞台芸術振興会

■東京バレエ団第 35次海外公演 オーストラリア メルボルン

日程:2023年7月14日(金)~7月22日(土)
会場:メルボルン・アーツ・センター 州立劇場
演奏:オーケストラ・ヴィクトリア

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