【公演レポ】東京バレエ団 ジョン・クランコ版『ロミオとジュリエット』は初演と思えない名舞台!

4月30日東京バレエ団ジョンクランコ版『ロミオとジュリエット』≪初演≫公演を東京文化会館で観賞した。

毎年ゴールデンウィークの時期に開催されてきた「上野の森バレエホリディ」の一環として開催された同公演。日本国内の団体として初めて東京バレエ団がジョン・クランコ版『ロミオとジュリエット』を初演することとなり内外から注目されていた。

ジョン・クランコが、プロコフィエフのドラマティック・バレエの名作『ロミオとジュリエット』をシュツットガルトバレエ団で上演してから今年でちょうど60年となる。

クランコと言えば、物語バレエ。ドラマティック・バレエの代表作である『ロミオとジュリエット』にひときわ強いこだわりがあったことが伝えられているが、日本屈指の国際派バレエ団である東京バレエ団はバレエと演技の両面で、初演とは思えないほど素晴らしい舞台を披露し、観客を感動の渦に巻き込んだ。

秋元康臣は、端正なロミオを好演。バレエ・演技ともに理想的なロミオ役を演じた。音楽の細部に宿る微音までも確かな技術できっちりと表現する意識の高さと集中力は見事だった。

マキューシオ役で、ジョン・クランコ・バレエ学校に留学経験がある宮川新大は、時折ユーモアを絡めながら、ダンスと演技で同役を熱演。第2幕第3場で、キャピュレット家のティボルト(安村圭太)と決闘し、死んでしまうが宮川の演技とダンスに終始、惹き込まれた。ベンヴォーリオ役の玉川貴博のバレエは、ターンが美しく高度なバレエ技術を披露。

ロミオ、マキューシオ、ベンヴォーリオが3人で揃って踊るパ・ド・トロワ(3人の踊り)は大変見ごたえがあるものだった。バレエ技術が秀逸なダンサー3者によるパ・ド・トロワはまさに至芸。近年の東京バレエ団男性ダンサーの水準の高さは、目を見張るものがある。

ジュリエット役の足立真里亜は、気持ちのこもった可憐なバレエをしっとりと表現。第1幕第5場「ジュリエットのバルコニー」でロミオのことを夢想し、永遠の愛を誓い合う演技とバレエの美しさが白眉。同ドラマティックバレエの芸術的水準を大いに引き上げた。

第3幕第1場寝室でジュリエットはパリス(大塚卓)を拒絶し続けた。ロミオへの一途な愛を果敢に貫き通したジュリエットの迫真の演技が、胸に突き刺さった。

そして、最後の場面となる第3幕第4場でジュリエットは息絶えたロミオに気づき深い悲しむをもって自らの命を絶つ名場面は観客の涙を誘った。

ベンジャミン・ポープ&東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団は、プロコフィエフの名作にふさわしい聴き応えがある音楽を構築。華やかな舞台を管弦楽の美でサポートした。

バレエ・群舞・演技・演出技法・衣裳・舞台装置・照明技術・音楽に至るまですべて面で高水準で鬼才ジョン・クランコならではのティストで彩られた『ロミオとジュリエット』。シュツットガルト初演から数えて60年目の節目を飾るに相応しい東京バレエ団ジョンクランコ版『ロミオとジュリエット』≪初演≫は観客から大きな拍手が贈られていた。

Photo: Shoko Matsuhashi

■東京バレエ団〈初演〉
「ロミオとジュリエット」全3幕

日時:4月30日(土)14:00
会場:東京文化会館

振付:ジョン・クランコ
音楽:セルゲイ・プロコフィエフ
装置・衣裳:ユルゲン・ローゼ

キャスト:

◇キャピュレット家

キャピュレット公:木村和夫
キャピュレット夫人:奈良春夏
ジュリエット:足立真里亜
ティボルト:安村圭太
パリス:大塚卓
乳母:坂井直子

◆モンタギュー家

モンタギュー公:中嶋智哉
モンタギュー夫人:菊池彩美
ロミオ:秋元康臣
マキューシオ:宮川新大
ベンヴォーリオ:玉川貴博

ヴェローナの大公: 和田康佑
僧ローレンス:ブラウリオ・アルバレス
ロザリンド:三雲友里加
ジプシー:二瓶加奈子、政本絵美、平木菜子
カーニバルのダンサー:岡﨑司 涌田美紀、安西くるみ 岡崎隼也、井福俊太郎

指揮:ベンジャミン・ポープ
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

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