【公演レポ】伊ヴェローナ生まれバッティストーニ 指揮 東京フィルによる『ロメオとジュリエット』

11月10日(金)東京フィルハーモニー交響楽団第992回サントリー定期演奏会をサントリーホールで聴いた。首席指揮者アンドレア・バッティストーニ指揮によるオール・チャイコフスキー・プログラム。コンサートマスターは三浦章宏。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

チャイコフスキーは1893年11月6日に亡くなった。2023年はチャイコフスキー没後130年に当たり、11月6日(月)はピョートル・イリイチ・チャイコフスキーの130年目の命日にあたる。チェロ独奏が活躍する「ロココの主題による変奏曲」のほか、「シェイクスピアとチャイコフスキー」をテーマに『テンペスト』『ハムレット』『ロメオとジュリエット』が演奏された。

「ロココの主題による変奏曲」は、1876年末から1877年初頭、交響曲第4番と並行し
て作曲された作品。チェロ独奏は2019年ミュンヘン国際音楽コンクール日本人初の優勝者である佐藤晴真。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

チャイコフスキーによる原典版が演奏されたが、佐藤は流麗なカテンツァを聴かせ、聴衆を魅了した。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

チャイコフスキーは文学にも造詣が深く、文学作品に題材した楽曲を残している。特にシェイクスピアはチャイコフスキーが最も敬愛した作家の一人で『テンペスト』『ハムレット』『ロメオとジュリエット』の3曲はいずれもシェイクスピアの戯曲を題材としてものとなっている。そのうち、『テンペスト』『ハムレット』は普段演奏会で取り上げられることが非常に少ない楽曲で、今年ラストの定期演奏会を飾るにふさわしいオール・チャイコフスキー・プログラムとなった。

幻想序曲『テンペスト』はロシア語ではБуря(嵐)という意味で、オーケストラを燃焼させることについては他の追随を許さないほど評価が高いバッティストーニの指揮が冴えわたり、炎のような撃音と河の流れのような美音を東京フィルハーモニー交響楽団から導出した。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

幻想序曲『ハムレット』は、名曲チャイコフスキー交響曲第5番と同じ年の1888年に作曲された。『ハムレット』は、1888年11月24日にサンクトペテルブルクで、作曲者自身の指揮によって初演されたが、チャイコフスキー後期交響曲で聴くことができるチャイコ節健在な曲調で、波のように迫り来るロシアの慕情と眺望が魅惑的に奏でられた。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

最後は、「チャイコフスキーの最初の名作」とも呼ばれているほど人気が高い幻想序曲『ロメオとジュリエット』。ロメオとジュリエットの街であるヴェローナは古代ローマから中世、近世に至るまで歴史ある建築が重なり合っている美しい街で世界遺産に登録されている。ヴェローナは、ミラノやヴェネツィア、ローマへの通じる交通の要衝の地として古くから栄えてきた。

イタリア・ヴェネト州西部にあるヴェローナ生まれのバッティストーニが、ヴェローナを舞台とした《ロメオとジュリエット》を熱烈に指揮した。日本ではなかなか聴くことができない凄まじい本場の表出力に舌を巻いた。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

ジュリエットを想うロメオの熱い血潮がバッティストーニに乗り移ったかのような熱狂的な名演。弦セクションの弦がはち切れんばかりのシャープさと透明感が白眉。東京フィルの演奏技量は極めて高水準だった。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

ラストは、木管楽器が天に召される2人の様子を美しく描写。ハープの清らかな音色も印象的だった。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

その光景は、愛し合いながらも、引き裂かれてしまったふたりの不運を嘆いているようだったが、かすかな希望の光があるようにも感じられた。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

■東京フィルハーモニー交響楽団
第992回サントリー定期シリーズ

日時:2023年11月10日(金)19:00
会場:サントリーホール大ホール

指揮:アンドレア・バッティストーニ(首席指揮者)
チェロ:佐藤晴真
(2019年ARDミュンヘン国際音楽コンクール優勝)

プログラム

チャイコフスキー/幻想曲『テンペスト』
チャイコフスキー/ロココの主題による変奏曲*
チャイコフスキー/幻想序曲『ハムレット』
チャイコフスキー/幻想序曲『ロメオとジュリエット』
(チャイコフスキー没後130年)
https://www.tpo.or.jp/information/detail-20231110.php

CULTURE

コメント