【公演レポ】巨匠チョン・ミョンフン&東京フィル、ヴェルディ最後の歌劇『ファルスタッフ』で記憶に残る名演出!

東京フィルハーモニー交響楽団 第150回東京オペラシティ定期シリーズを10月21日聴いた。

名誉音楽監督チョン・ミョンフンの指揮・演出による、ジュゼッペ・ヴェルディ歌劇『ファルスタッフ』(演奏会形式)。コンサートマスターは近藤 薫。

同作は、”オペラ王”と称されるジュゼッペ・ヴェルディが80代目前に制作した最晩年の傑作喜劇で、26作に及ぶオペラ作品の中でわずか2作しかない喜劇のうちのひとつとなっている。(もう1作は初期作品『一日だけの王様』)

シェイクスピアの劇を題材としたヴェルディのオペラは『マクベス』、『オテロ』に次いで3作目となる。

強欲で女好きな騎士ジョン・ファルスタッフが子悪党の従者を従え、女たちに恋文を送り、金を巻き上げようと画策するが逆に女たちに騙され散々な目に遭うというストーリー。

マエストロ チョン・ミョンフンは初めてオペラ演出に挑戦。「喜劇としてお客様に笑っていただける要素を随所に盛り込んで舞台を作りたい」との言葉以上の初とは思えない類まれな才能を発揮。粋なユーモアたっぷりの演出で愉しさ倍増のオペラを創り上げた。

マエストロはガーター亭のマスターとして登場。居酒屋亭主を思わせる前掛けをつけ、箒で床を掃除してから振りはじめる”想定外”の演出で観客を笑わせた。

歌手陣は、ルーマニア出身のセバスチャン・カターナがタイトルロール。そのほか、日本オペラ界を担う実力者がズラリと並んだ。

間抜けでデブッちょで呑んだくれのファルスタッフ(バリトン)役をユーモラスに演じたセバスティアン・カターナ。カターナは、声量があり、明るくよく響く歌声を披露し、感動を呼び起こした。

ファルスタッフにぴったりなパワフルな歌唱で終始、白熱の舞台を牽引した。

ヴェルディはこの役をこよなく愛し、ファルスタッフのマネをして妻を笑わせていたと言われる。

フォード(バリトン)役の須藤慎吾は、堂々とした勢いがある歌声で大活躍。
情熱的な歌と演技で、観客の心を熱くした。

フェントン(テノール)役の小堀勇介は、キレのよいシャープな歌声が印象的。
澄んだ歌声でさらなる活躍が期待される。

アリーチェ(ソプラノ)役の砂川涼子は、品がある清らかな美声で観客の耳に至福の時と癒しを与えた。

ナンネッタ(ソプラノ)役の三宅理恵は明るく伸びやかな歌声を聴かせてくれた。

ナンネッタ三宅は、第3幕ウィンザー公園の場面で、妖精に扮し歌う場面を好演した。

チョン・ミョンフン&東京フィルハーモニー交響楽団の音楽はダイナミックかつ開放的。
明るくノビノビとした演奏で壮大な音楽空間を構築し、観客を大いに愉しませた。

第3幕最後の10人のフーガ「世の中はすべて冗談」がアンコールされ、感涙。

巨匠チョン・ミョンフンはカーテンコールで盛大に迎えられ、記憶に残る一夜の幕は閉じられた。

撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

■東京フィルハーモニー交響楽団
第150回東京オペラシティ定期シリーズ
ヴェルディ/歌劇『ファルスタッフ』(演奏会形式)

日時:2022年10月21日(金)
会場:東京オペラシティ
コンサートホール

原作: ウィリアム・シェイクスピア 『ウィンザーの陽気な女房たち』
台本: アッリーゴ・ボーイト

指揮・演出:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)
ファルスタッフ(バリトン):セバスティアン・カターナ
フォード(バリトン):須藤慎吾
フェントン(テノール):小堀勇介
カイウス(テノール):清水徹太郎
バルドルフォ(テノール):大槻孝志
ピストーラ(バス・バリトン):加藤宏隆
アリーチェ(ソプラノ):砂川涼子
ナンネッタ(ソプラノ):三宅理恵
クイックリー(メゾ・ソプラノ):中島郁子
メグ(メゾ・ソプラノ):向野由美子
合唱:新国立劇場合唱団

10月定期演奏会 特設ページ
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