4月13日「東京春祭 合唱の芸術シリーズ vol.11ブルックナー《ミサ曲第3番》 生誕200年に寄せて」を東京文化会館で鑑賞した。東京都交響楽団(コンサートマスターは山本友重)の演奏で、東京オペラシンガーズの合唱をたっぷりと堪能した。
前半、ブルックナーが敬愛するリヒャルト・ワーグナーのジークフリート牧歌。同作は、波乱万丈のワーグナーが妻に贈った作品で、一種の交響詩と見なされる。東京都交響楽団は、ワーグナーが最も穏やかな時期の音楽を温かな管弦楽で美しいメロディを紡いだ。
(C)増田雄介/東京・春・音楽祭2024
後半は、今年生誕200年を迎えたアントン・ブルックナーの「ミサ曲第3番」。ブルックナーの「宗教合唱曲」の中でもひときわ優れた作品であると知られるが、日本における実演は極めて少ない。
ソロ歌手がいづれも粒揃いで手堅い。とりわソプラノのハンナ=エリーザベト・ミュラーが清浄かつ強靭な歌声が素晴らしかった。
(C)増田雄介/東京・春・音楽祭2024
ローター・ケーニヒスの指揮は、丁寧かつ実直なリードで、東京都交響楽団から美しい調べを引き出していた。
(C)増田雄介/東京・春・音楽祭2024
東京都交響楽団は、力強さと独唱に絡み合う弦楽器のソロの美しさが卓越。祈りに満ち溢れた最終楽章「アニュス・デイ」では、傾聴に値する神聖な時を提供した。
(C)池上直哉/東京・春・音楽祭2024
世界的水準のコーラスをという小澤征爾氏の要請により、東京を中心に活躍する中堅、若手の声楽家によって組織された東京オペラシンガーズによる宗教合唱が天上至極の出来だった。神聖かつ威厳に満ちた名合唱は、同曲の魅力を余すことなく推進。魂が大いに揺さぶられた。キリスト受難の物語を敬虔な信仰心と祈るような一斉唱和で発露し、感動的な時を観客と共有した。
(C)増田雄介/東京・春・音楽祭2024
東京オペラシンガーズによる名演は、合唱指揮者の功績が大きく、終演後、ステージ上に呼び出され、指揮者と共に、スタンディングオベーションで喝采を浴びていた。合唱の芸術シリーズの中でもひときわ印象深いブルックナーの生誕200年を祝うにふさわしい公演となった。
(C)池上直哉/東京・春・音楽祭2024
■東京春祭 合唱の芸術シリーズ vol.11
ブルックナー《ミサ曲第3番》
生誕200年に寄せて
日時・会場
2024年4月13日 [土] 14:00開演(13:00開場)
東京文化会館 大ホール
出演
指揮:ローター・ケーニヒス
ソプラノ:ハンナ=エリーザベト・ミュラー
メゾ・ソプラノ:オッカ・フォン・デア・ダメラウ
テノール:ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー
バス:アイン・アンガー
管弦楽:東京都交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩
曲目
ワーグナー:ジークフリート牧歌
ブルックナー:ミサ曲 第3番 ヘ短調 WAB28
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