【公演レポ】久石 譲&新日本フィルハーモニー交響楽団、絵画を一枚一枚美術館で観ているような「展覧会の絵」

4月15日、すみだトリフォニーホールで新日本フィルハーモニー交響楽団「すみだクラシックへの扉 #06」を聴いた。

昨年からスタートした「すみだクラシックへの扉」は第6回目を迎え、新日本フィルハーモニー交響楽団 Composer in Residence and Music Partnerの久石譲が指揮者として登場。

作曲家・編曲者・ピアニストとして多彩な顔を持つ久石は、映画音楽に造詣が深い。特に宮崎駿監督作品においては、『風の谷のナウシカ』以降、『風立ちぬ』まで29年間すべての長編アニメーション映画の音楽を手掛けている。

プログラムの前半は、「ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲」と「サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番」というフレンチ・プログラム。

「サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番」で来日した注⽬のチェリスト リーウェイ・キンは、キレのよい演奏を披露。完璧なテクニックと美しい音色で観客の耳を楽しませた。リーウェイ・キンをサポートした久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団は、心地よい快音をすみだトリフォニーホールいっぱいに響かせた。

後半は、ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(M.ラヴェルによる管弦楽編) 。

今年はラヴェル編曲の「展覧会の絵」が初演されて100周年となる記念すべき年で、組曲「展覧会の絵」はラヴェル版のほか、トゥシュマロフ版・ストコフスキー版などがある。

『展覧会の絵』はムソルグスキーが、友人であったヴィクトル・ハルトマンの遺作展を歩きながら、そこで見た10枚の絵の印象を音楽に仕上げたものだが、久石譲 指揮による組曲『展覧会の絵』は、久石の案内でジブリ作品の名場面の絵画を一枚一枚美術館で、実際に観せてもらっているような錯角に陥る色彩感覚あふれた素晴らしいものだった。

ラヴェル版の組曲「展覧会の絵」は、「小人」「古い城」「テュイルリーの庭 – 遊びの後の子供たちの口げんか」「ビドロ(牛車)」「卵の殻をつけた雛の踊り」「リモージュの市場」「カタコンベ ローマ時代の墓」「死せる言葉による死者への呼びかけ」「鶏の足の上に建つ小屋」「キエフの大門」といった場面が次から次へと現れる名作だが、それぞれの場面がまるで生きているかのような、視覚感覚の優れた音楽としてダイレクトに観客の前に提示された。

とりわけラストの輝かしく締め括られた「キエフの大門」は、素晴らしい名演。久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団ならではのイキイキとした音楽構築が白眉で、心揺り動かされた。

今後のさらなる音楽的アプローチが楽しみな久石譲&新日本フィルハーモニー交響楽団によるシリーズ開幕公演となり、終演後、盛大な拍手が贈られた。

(C)堀田力丸

■新日本フィルハーモニー交響楽団
すみだクラシックへの扉 #06
2022.04.15 FRI 14:00 開演
すみだトリフォニーホール

指揮:久石 譲
チェロ:リーウェイ・キン

プログラム

ドビュッシー:牧神の午後への前奏曲
サン=サーンス:チェロ協奏曲第1番 イ短調
ムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(M.ラヴェルによる管弦楽編)

すみだクラシックへの扉 #06(金) | [公式]新日本フィルハーモニー交響楽団—New Japan Philharmonic—

▼作曲家・久石譲が語るムソルグスキー:組曲「展覧会の絵」(M.ラヴェルによる管弦楽編)、そしてドビュッシー(2022/4/15・16 フランス・プログラム)

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