【公演レポ】チョン・ミョンフンが東京フィルと創り上げたヴェルディ歌劇『オテロ』の名舞台!

7月27日東京フィルハーモニー交響楽団156回東京オペラシティ定期シリーズ ヴェルディ歌劇『オテロ』(オペラ演奏会形式)で聴いた。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

ヴェルディのオペラ『オテロ (Otello) 』は、1887年に初演された最晩年の作品です。台本はアッリーゴ・ボーイトによるもので、ボーイトはヴェルディ最後のオペラ『ファルスタッフ』の台本も執筆している。

ヴェルディは人気作「アイーダ」の初演から9年のもの年月を経て、「オテロ」を書き始めている。その間、ヴェルディは素朴な田園生活を送り、6年もの長い期間をかけて「オテロ」を完成させた。

イタリアオペラらしい「ヴェルディ最高の作品」との呼び名も高い「オテロ」。タイトルロールのオテロ役グレゴリー・クンデの歌唱が見事!声の張りと艶が神々しい最高のオテロを演じてくれた。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

第一幕冒頭では、島の人々が戦いの結果を案じているところにオテロ役のクンデが颯爽と登場。「喜べ、敵はすべて海の藻屑となった」と輝かしい第一声をテノールで解き放った。場内の空気を一瞬にして激変させたカリスマ性は、「オテロ歌い」として隙がない完璧なものだった。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

最愛の妻であるデズデーモナは日本を代表するヴェルディ・ソプラノ 小林厚子により歌唱された。スケールが大きいまっすぐな歌声。それでいて、情感と情熱に溢れた歌に惹きつけられた。小林はヒロインに相応しい役柄を見事に演じ、本オペラを牽引した。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

オテロとデスデーモナによる愛の二重唱「すでに厚い夜の闇にすべてのざわめきも消えた」、第4幕から「柳の歌~アヴェ・マリア」はいずれも素晴らしい出来で心に染みわたった。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

デズデーモナをずっと側で支えた中島郁子のエミーリアは、演技と歌両面で耳目を保養する妙技あり。ヴェネツィア紳士のロデリーゴを歌う村上敏明とモンターノ役の青山貴も響きが良い出色ある歌声で名舞台を支えた。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

ダリボール・イェニスのイアーゴ(バリトン)は、演技と歌唱両面で巧みさを発揮。腹黒い悪役としての演技が秀でており、観客の目を大いに楽しませた。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

オテロ、デズデーモナ、イアーゴを中心とした歌手陣は大変充実したものだった。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

オペラを得意とする東京フィルハーモニー交響楽団の演奏も素晴らしく、名誉音楽監督で世界的巨匠のマエストロのチョン・ミョンフンが求めている演奏に100%以上の水準で真摯に応えていた。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

ロマンティックなところは蜜より甘美に。地鳴りが鳴り響くところは聴いていて恐ろしくなるほどの轟音を響かせた。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

40年近く「オテロ」を探求してきたチョン・ミョンフンは、作品のすみずみまで知り尽くした指揮ぶりで、悪と善のはざまを鋭敏に描写。オペラ演奏会形式とは思えない程、存在感に満ちた名舞台は聴衆に忘れることができない大きな感動と余韻をもたらした。


撮影=上野隆文/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

■東京フィルハーモニー交響楽団
第156回東京オペラシティ定期シリーズ

ヴェルディ/歌劇『オテロ』
オペラ演奏会形式
全4幕・日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
原作:ウィリアム・シェイクスピア『オセロー』
台本:アッリーゴ・ボーイト
公演時間:約2時間50分(休憩含む)

日時:2023年7月27日(木)19:00
会場:東京オペラシティコンサートホール

指揮:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)

オテロ(テノール):グレゴリー・クンデ
デズデーモナ(ソプラノ):小林厚子
イアーゴ(バリトン):ダリボール・イェニス
ロドヴィーコ(バス):相沢 創
カッシオ(テノール):フランチェスコ・マルシーリア
エミーリア(メゾ・ソプラノ):中島郁子
ロデリーゴ(テノール):村上敏明
モンターノ(バス):青山 貴
伝令(バス):タン・ジュンボ
合唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:冨平恭平)

第156回東京オペラシティ定期シリーズ | 東京フィルハーモニー交響楽団
2023年7月27日(木) 19:00 東京オペラシティコンサートホール
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