11月17日(金)東京バレエ団「眠れる森の美女」≪新制作≫初演を東京文化会館で観賞した。2015年8月に斎藤友佳理芸術監督が芸術監督に就任して以降、「白鳥の湖」「くるみ割り人形」とチャイコフスキー作曲の二大バレエの新制作を実現してきた東京バレエ団。この秋、満を持して三大バレエのラストを飾る「眠れる森の美女」≪新制作≫が上演された。
(C)Shoko Matsuhashi
東京バレエ団は、創立60周年シリーズの第1弾として10月20日に全幕「かぐや姫」世界初演したばかり。そのわずか19日後にシリーズ第2弾となる「眠れる森の美女」新制作が初演されたのは驚きを禁じ得ない。
パリ・オペラ座、ミラノ・スカラ座、ウィーン国立歌劇場、プラハ歌劇場、マリインスキー劇場、 ロイヤル・オペラ・ハウスなど世界33カ国156都市で786回も公演を実施してきた東京バレエ団の積み上げてきた実力の高さを垣間見る思いがした。
バレエ作品「眠れる森の美女」は、1890年にロシアのサンクトペテルブルクで初演された。振り付けはマリウス・プティパ、音楽はピョートル・チャイコフスキー。本作は、シャルル・ペローによる昔話「眠れる森の美女」を原作としており、チャイコフスキーは「眠れる森の美女」の台本に感動して仕事を引き受けたというエピソードが残っている。
東京バレエ団にとってチャイコフスキー三大バレエのラストを飾る「眠れる森の美女」を新制作することはバレエ団の転機となる事件であろう。プティパ作品の中でも最も絢爛豪華な作品に東京バレエ団ならではの新しい解釈を加えたMaster Piece。
オーロラ姫の沖 香菜子は、伸びやかなラインと気品があるアラベスクが美しい。細やかに変化する心模様から優しさに溢れる繊細な表現までが優美に描写された。デジレ王子の秋元康臣は、出てきた瞬間から、スターのオーラを纏っていた。テクニックの確かさとパの美しさが際立つ。軸がぶれない回転とジャンプも小気味よい。
(C)Shoko Matsuhashi
普段王子役を踊ることが多い柄本弾は、悪の精カラボスとして新境地に挑戦。悪の精カラボス役は女性が踊っても、男性が踊ってもよい役だが、柄本は底光りするような悪役を演じ、鮮やかに芸域を広げてみせた。
(C)Shoko Matsuhashi
リラの精は、 善の妖精でカラボスの呪いを弱める役柄だが、リラの精役の中島映理子は、優雅な雰囲気を纏った綺麗なバレエを披露し、観客から注目された。定評ある東京バレエ団のコール・ド・バレエは総じて高水準。列や動きがぴったりと揃った時の舞台上での一体感が感動的だった。
(C)Shoko Matsuhashi
第3幕の祝宴のシーンでは青い鳥や長靴をはいた猫、赤ずきんなどのほか、東京バレエ団版では親指小僧も登場し、観客を楽しませた。豪華絢爛なロシア・バレエの伝承を受け継いだ東京バレエ団版「眠りの森の美女」は、大きな拍手と感動の波に包まれながら終演した。
■東京バレエ団 創立60周年記念シリーズ第二弾
新制作 初演
「眠れる森の美女」全3幕 プロローグ付
日時:2023年11月17日(金)
会場:東京文化会館
音楽:ピョートル・チャイコフスキー
台本:イワン・フセヴォロシスキー、マリウス・プティパ(シャルル・ペローの童話に基づく)
原振付:マリウス・プティパ
新演出・振付:斎藤友佳理
ステージング・アンド・プロダクション・コンセプト:ニコライ・フョードロフ
舞台美術:エレーナ・キンクルスカヤ
衣裳デザイン:ユーリア・ベルリャーエワ
照明デザイン:喜多村貴
国王フロレスタン14世 中嶋智哉
王妃 奈良春夏
オーロラ姫 沖 香菜子
デジレ王子 秋元康臣
カタラビュット、式典長 岡崎隼也
悪の精カラボス 柄本 弾
リラの精 中島映理子
- プロローグ -
妖精たち:
カンディード(優しさ) 榊優美枝
フルール・ド・ファリーヌ(やんちゃ) 長岡佑奈
パンくずを落とす精(寛大) 髙浦由美子
歌うカナリヤ(遊び心) 前川琴音
ヴィオラント(勇気) 平木菜子
- 第1幕 -
4人の王子:
フォルチュネ王子 ブラウリオ・アルバレス
シャルマン王子 鳥海 創
シェリ王子 安村圭太
フルール・ド・ポワ王子 後藤健太朗
- 第2幕 -
公爵令嬢 三雲友里加
ガリフロン、デジレ王子の家庭教師 安村圭太
- 第3幕 -
宝石の精:
ダイヤモンドの精 涌田美紀
サファイヤの精 三雲友里加
金の精 髙浦由美子
銀の精 長岡佑奈
プラチナの精 井福俊太郎、生方隆之介、後藤健太朗、山下湧吾
長靴をはいた猫と白い猫 海田一成、工 桃子
青い鳥とフロリナ王女 大塚 卓、長谷川琴音
赤ずきんと狼 本村明日香、芹澤 創
親指小僧とその兄弟と人食い鬼 岡﨑 司
大野麻州、小野陵介、小仲 花、野本紗世、長谷川結子、花田純之介、矢崎佳奈海
指揮 トム・セリグマン
演奏 東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団
協力 東京バレエ団OB・OG、東京バレエ学校
コメント