【ゲネプロ】新国立劇場ヴェルディ歌劇「シモン・ボッカネグラ」<新制作>公演!


11月12日新国立劇場ジュゼッペ・ヴェルディ歌劇「シモン・ボッカネグラ」<新制作>公演のゲネプロ(最終通し稽古)を東京・新国立劇場オペラハウスで観賞した。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

『シモン・ボッカネグラ』(Simon Boccanegra)は、オペラ王ジュゼッペ・ヴェルディが作曲したオペラ。1857年に初演され、24年後の1881年に改訂されたが、現在ではもっぱら改訂版が上演される。

通好み・いぶし銀のオペラで、ヴェルディ43歳の中期の作品に該当するが、オペラ全編を通じて3人のバリトン及びバス歌手が活躍し、低音の魅力を聴かせる作品となっている。

本作は、フィンランド国立歌劇場及びテアトル・レアル(マドリードの王立歌劇場)との共同制作での日本初演となる。高い水準の歌手を集めての新国立劇場 初上演となった。

14世紀に実在した初代ジェノヴァ総督シモン・ボッカネグラを主人公とし、平民派と貴族派が争い、父娘や恋人の愛が入り混じる複雑なドラマが展開される。低音主体でストーリーが複雑なため、初演の評価は好ましいとは言えなかったが改訂版ではオーケストレーションが改善された。

タイトルロール、シモン・ボッカネグラを歌唱したのはバリトンのロベルト・フロンターリ。前作主演したリゴレッドに引き続き、卓越した声を披露した。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

シモンは総督になることを受け入れ権力を手にするが行方不明となった娘を見つけた父親の心情を巧みに描写。全編を通して歌われる黄金のようは歌唱が白眉。ヴェルティ自身は「父と娘」という設定に拘ったのは有名だが、『シモン・ボッカネグラ』でひとつの頂点に達したと言えるだろう。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

アメーリア(マリア・ボッカネグラ)はソプラノのイリーナ・ルングが歌唱。幼い時に孤児となり、名家グルメルディ家に引き取られ、アメーリア・グリマルディとして育てされた役柄である。この役はヴェルディが曇りがあるに歌うよう指導した難役であるが、歌のラインが美しく、心と背景を調和させた薫り高い歌唱を披露した。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

目が覚めるような素晴らしいテナーを披露したのは、ガブリエーレ・アドルノ役のルチアーノ・ガンチ。高声を出す際の声区の転換がスムーズで声量も十分。イタリアの晴れやかな空のようなシャープで洗礼されたテノールが新国立劇場の上段まで響きわたった。ガンチは、ゲネプロにも関わらずブラヴォーの喝采を浴びた。新国立劇場名テナーの系譜に組み込まれるべき逸材が大活躍した。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

総督の腹心パオロ・アルビアーニを歌ったシモーネ・アルベルギーニ、アメーリアの祖父ヤコポ・フィエスコを歌唱したリッカルド・ザネッラート、パオロ・アルビアーニの同志ピエトロを歌唱した須藤慎吾ら男性歌手はいずれも粒ぞろいで適材適所だった。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

新国立劇場合唱団はいつもに増して誇り高く洗練された合唱を披露した。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

全体的に冬のジェノバの海を彷彿とさせるような重く抑圧されたオペラだが、イタリア歌劇の巨匠ヴェルディの精妙な仕事ぶりをじっくりと体感できるような通好みの音楽が同オペラを支配した。大野和士 指揮 東京フィルハーモニー交響楽団の演奏は、複雑なキャラクターを引き立てつつも格調高いこと、この上ない。

世代の違いもあり、平民と貴族という身分の違いもあり、ストーリーもキャラクターも複雑なオペラであるが、歌い演じ演奏することで平和と愛を伝えたい想いが伝わる名歌劇だった。


撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

■2023/2024シーズン 新国立劇場
ジュゼッペ・ヴェルディ
シモン・ボッカネグラ<新制作>
Simon Boccanegra / Giuseppe Verdi
プロローグ付き全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

日時:2023年11月12日[日]
会場:新国立劇場オペラパレス

Staff:

【指 揮】大野和士
【演 出】ピエール・オーディ
【美 術】アニッシュ・カプーア
【衣 裳】ヴォイチェフ・ジエジッツ
【照 明】ジャン・カルマン
【舞台監督】髙橋尚史

Cast:

【シモン・ボッカネグラ】ロベルト・フロンターリ
【アメーリア(マリア・ボッカネグラ)】イリーナ・ルング
【ヤコポ・フィエスコ】リッカルド・ザネッラート
【ガブリエーレ・アドルノ】ルチアーノ・ガンチ
【パオロ・アルビアーニ】シモーネ・アルベルギーニ
【ピエトロ】須藤慎吾
【隊長】村上敏明
【侍女】鈴木涼子

【合唱指揮】冨平恭平
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

共同制作:フィンランド国立歌劇場、テアトロ・レアル
Co-production with Finnish National Opera and Ballet, Teatro Real Madrid

シモン・ボッカネグラ
新国立劇場のオペラ公演「シモン・ボッカネグラ」のご紹介。 新国立劇場では名作から世界初演の新作まで、世界水準の多彩なオペラを上演しています。
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