新国立劇場バレエ団『シェイクスピア・ダブルビル』と5月4日に東京・新国立劇場 オペラパレスで観賞した。本公演では、ウィリアム・シェイクスピアの同名戯曲をもとにした作品「マクベス」「夏の夜の夢」がダブルビルにて上演。シェイクスピアの悲劇と喜劇、全く異なる2作品が同時上演された。
・「マクベス」新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演
「マクベス」は、新国立劇場バレエ団委嘱作品で世界初演となるオリジナル作品となっている。スコットランドの作曲家ジェラルディン・ミュシャの音楽からインスピレーションを得て作られた作品。ヨーロッパ、アメリカ、日本などで活動し、オリヴィエ賞など数々の賞を受賞している国際的な演出家・振付家のウィル・タケットが振付を担当した。オペラや映画などで頻繁に取り上げられてきた物語が、タケットの手で新たに生まれ変わった。
マクベス役 福岡雄大は、的確で安定したテクニックの持ち主。感情の高ぶりや起伏といった演劇的要素や迫真の演技で濃厚なドラマを演出した。
新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」『マクベス』 福岡雄大、米沢 唯
撮影:鹿摩隆司
マクベス夫人役 米沢唯のバレエは、繊細さから衝動までを多彩に表現。視線の動かし方から手先の表情まで心揺り動かすような表情が長けていた。マクベス夫妻のパ・ド・ドゥは、ドラマティックかつ難易度が高いトリッキーなテクニックが随所に織り込まれており、2人のエネルギーのぶつかり合いと描写力が見事だった。
新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」『マクベス』福岡雄大、米沢 唯
撮影:鹿摩隆司
バンクォー役 井澤駿のダンスは、自在に踊りこなすテクニックや回転技が秀逸。オーラある演技は観客の注目の的となっていた。
・「夏の夜の夢」新制作
新制作となる「夏の夜の夢」では、英国バレエの巨匠フレデリック・アシュトンによる傑作バレエ。絵本の世界から飛び出したような森と妖精たちの物語が優美に描かれるファンタジックな作品。同作品は、2022年1月に上演予定だったが、新型コロナウイルス感染症の影響により今回、上演される運びとなった。
ティターニア役を担った柴山紗帆は、強気で自由奔放なキャラクターを安定したバレエテクニックで際立たせた。妖精の非現実的な世界観と綺麗なバレエに魅了された。
オーベロン役 渡邊峻郁は、高難度なテクニックを求められる難役を担った。渡邊は端正で無駄のないダンス、流れるような回転技と連続技、超絶なテクニック等が盤石で、新国立劇場バレエ団を代表するダンサーとして輝きを放っていた。
新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」『夏の夜の夢』
柴山紗帆、渡邊峻郁 撮影:鹿摩隆司
パック役 山田悠貴は若々しくエネルギー溢れているダンスと跳躍を披露。オーベロンと息があったダンスで観客を楽しませた。
新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」『夏の夜の夢』山田悠貴
撮影:鹿摩隆司
「夏の夜の夢」は、森と妖精たちのファンタジックな物語のため、優美なイメージが強いが、ダンスが非常にハードな作品。新国立劇場バレエ団のダンサー達は登場人物に命を吹き込み、素早く複雑なフットワーク、シャープでありながらソフトさも求められるアシュトン・スタイルの真骨頂を表現。カーテンコールでは、観客から熱いスタンディングオベーションがダンサーや指揮者・オーケストラに贈られていた。
■新国立劇場バレエ団『シェイクスピア・ダブルビル』
日時:2023年5月4日
会場:新国立劇場 オペラパレス
・「マクベス」新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演
振付:ウィル・タケット
音楽:ジェラルディン・ミュシャ
編曲:マーティン・イェーツ
キャスト
マクベス:福岡雄大
マクベス夫人:米沢唯
バンクォー:井澤駿
3人の魔女:奥田花純、五月女遥、廣川みくり
・「夏の夜の夢」新制作
振付:フレデリック・アシュトン
音楽:フェリックス・メンデルスゾーン
キャスト
ティターニア:柴山紗帆
オーベロン:渡邊峻郁
パック:山田悠貴
ボトム:木下嘉人
指揮: マーティン・イェーツ
管弦楽: 東京フィルハーモニー交響楽団
合唱: 東京少年少女合唱隊
▽新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」スチール撮影のメイキング映像
▽新国立劇場バレエ団『マクベス』<新国立劇場バレエ団委嘱作品・世界初演>公開リハーサル映像
▽新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」開幕直前!『夏の夜の夢』ティターニア役 柴山紗帆&オーベロン役 渡邊峻郁インタビュー
▽新国立劇場バレエ団「シェイクスピア・ダブルビル」開幕直前!『夏の夜の夢』ティターニア役 池田理沙子&オーベロン役 速水渉悟インタビュー
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