新国立劇場バレエ団、英国の振付家ピーター・ダレルの傑作『ホフマン物語』を2月に上演!

新国立劇場バレエ団は、英国の振付家ピーター・ダレルの傑作『ホフマン物語』を2月23日(金・祝)より上演する。


新国立劇場バレエ団『ホフマン物語』 撮影:鹿摩隆司

2015 年に舞台装置・衣裳を一新して新制作された本作では、主人公ホフマンの恋愛遍歴を通じて濃密な人間ドラマが描かれ、演じるダンサーたちは極めて高度な表現力と芸術性を要求されます。青年期から初老に至るまでの主人公ホフマン、ホフマンが心奪われる魅力的な女性三人、様々な役柄に姿を変えて登場する悪魔、といった個性豊かな登場人物たちが織りなす恋愛模様は、実に多彩で魅力的です。オッフェンバック作曲の流麗で多様な美しい音楽にのせて舞台で繰り広げられる、ロマンティックで豪華でありながらも一抹の寂しさも感じさせる幻想的な物語にご期待ください。

【ピーター・ダレルとは?】

ケネス・マクミラン、ジョン・クランコといった振付家たちと同世代で切磋琢磨した間柄で、英国バレエ史を語る上で欠かすことのできない振付家。第2次世界大戦後の英国では次々と新しい振付家が誕生しましたが、ダレルはその中でも物語性のあるバレエにおいて最も優れた振付家として評価されています。

ダレルは登場人物の深く複雑な内面や心理を、現代的リアリズムを持って描写し、彼がテーマとする題材や音楽は幅広く、時代を反映したものでした。例えば「囚人」(1957 年 音楽:バルトーク)では社会問題を正面から取り上げ、『モッズ・アンド・ロッカーズ』(1963 年 音楽:ビートルズ)では若い観客層の関心を引くなど、振付作品は革新的な作風で知られています。スコティッシュ・バレエ設立後は観客層が増加するに伴い、『ホフマン物語』(1972 年)『シンデレラ』(1979 年)や、『ジゼル』(1971年)『白鳥の湖』(1977 年)といった古典名作バレエの振付も手がけ、幅広い作品を創作。スコティッシュ・バレエのレパートリー拡充とカンパニーのレベル向上に多大なる貢献を果たしました。

『ホフマン物語』をスコティッシュ・バレエで主演したアダム・クーパーは、「ピーター・ダレルが60、70 年代に他の振付家が取り上げないような素材を用い、バレエ言語を新たな手法で用いました。マクミラン、クランコと比べてスコットランドという小さな地域のバレエ団にいたこと、二人のように世界ツアー等をしなかったことが彼の知名度を世界的なものにしなかったのではないか、と思います。

ダレルは、バレエを通じて物語を語ることができました。そして彼のダンスを実際に踊り、彼の振り付け方、表現に強く共感しました」とダレルについて語っています。

【男性が主役のバレエ】


新国立劇場バレエ団『ホフマン物語』 撮影:鹿摩隆司

全幕バレエ作品は女性が主役のものが多いという事実がある中、ピーター・ダレルの『ホフマン物語』は、男性が主役であり、タイトルロールにもなっていることは特筆すべき点です。

『ホフマン物語』は第1幕、第2幕、第3幕、プロローグ&エピローグと4つの物語によって構成されており、ホフマンは 20 代、30 代、40 代、そして初老の男性を演じ分けることが求められる、チャレンジングな役柄です。また、ライトでポップな第1幕、ドラマティックでありながらクラシックバレエの美しさも堪能できる第2幕、人間の欲望や汚い部分をさらけ出す第3幕と、短編小説集を読んでいるかのようにそれぞれ味わいが異なります。ホフマンは年代もカラーも異なる各幕を通して、ホフマンというキャラクターを生き抜き、プロローグとエピローグではその生き様を佇まいで表現しなくてはなりません。

そうしたホフマンと同様に全編を通じて登場するのが、悪の化身(リンドルフ/スパランザーニ/ミラクル医師/ダーパテュート)です。ホフマンは、一貫して“ホフマン”の人生を演じますが、悪の化身は幕が変わるごとに名前も立場も異なる悪を演じなければならず、多様な役柄を演じ分ける力量が必要とされます。ホフマンと悪の化身、この対照的な二役がどのように演じられるか、ぜひご注目ください。

【幕ごとに変わる3人の女性主役たち】


新国立劇場バレエ団『ホフマン物語』 撮影:鹿摩隆司

『ホフマン物語』では、ホフマンを魅了するヒロインが1幕のオリンピア、2幕のアントニア、3幕のジュリエッタ、と幕ごとに変わるため、その変化に応じて3種類の踊りと設定をお楽しみいただけます。各幕の女性主役はプリンシパル級の女性が配役されており、どの幕も見応えがあり、かつバラエティに富んでいます。裏を返せば、舞台を成立させるには素晴らしい女性ダンサー3名の存在が不可欠な作品なのです。

ものがたり:

【プロローグ】

初老の詩人ホフマンは、劇場前のカフェで恋人のオペラ歌手ラ・ステラを待っている。彼女が現れ彼への手紙を言付けるが、議員リンドルフ(実は悪魔)がその手紙を取り上げてしまう。ホフマンは友人たちに求められて、過去の恋愛遍歴を話し始める。

【第1幕 オリンピアの幕】

人形師スパランザーニ(実は悪魔)がホフマンに魔法の眼鏡をかけさせると、機械じかけの人形オリンピアが可憐な少女に見える。彼は恋に落ち、結婚を申し込む。ホフマンは彼女と踊るが、最後には人形は彼の手の中でバラバラに崩れ落ちる。

【第2幕 アントニアの幕】

10年後。ピアノ教師の娘アントニアは心臓が弱いにもかかわらず恋人ホフマンのピアノに合わせて踊るので、心配した父はホフマンを去らせ、医師を呼ぶ。ミラクル医師(実は悪魔)は、アントニアに催眠術で自分はバレリーナだと思い込ませ、ミラクル医師はホフマンにピアノを弾き続けるように強制し、彼女は踊り続ける。ついに、アントニアはホフマンの腕の中で息絶える。

【第3幕 ジュリエッタの幕】


新国立劇場バレエ団『ホフマン物語』 撮影:鹿摩隆司

年齢を重ね、今では宗教に帰依したホフマンがダーパテュート(実は悪魔)のサロンを訪れる。そこで、高級娼婦ジュリエッタがホフマンを誘惑する。十字架を奪われ一時的に影を失ったホフマンが、神に赦しを乞うと影を取り戻し、ダーパテュートとジュリエッタは消え失せる。

【エピローグ】

語り終えたホフマンは、酔いのため眠ってしまう。恋人ラ・ステラが現れるが、酔いつぶれた彼の姿と丸めて捨てられた手紙を見つける。ホフマンに失望した彼女はリンドルフと一緒に去ってしまう。目覚めたホフマンは事情を悟り、1人立ち尽くすのだった。

公演概要:

2023/2024 シーズン 新国立劇場バレエ団『ホフマン物語』
Tales of Hoffmann

日程:2024年2月23日(金・祝)~2月25日(日)
会場:新国立劇場 オペラパレス

STAFF:

【振付・台本】ピーター・ダレル
【音楽】ジャック・オッフェンバック
【編曲】ジョン・ランチベリー
【美術】川口直次
【衣裳】前田文子
【照明】沢田祐二

CAST:

・2月23日(金・祝) 13:00
【ホフマン】福岡雄大
【オリンピア】池田理沙子
【アントニア】小野絢子
【ジュリエッタ】柴山紗帆
【リンドルフ ほか】渡邊峻郁

・2月24日(土) 13:00
【ホフマン】井澤 駿
【オリンピア】奥田花純
【アントニア】米沢 唯
【ジュリエッタ】木村優里
【リンドルフ ほか】中家正博

・2月24日(土) 18:00
【ホフマン】福岡雄大
【オリンピア】池田理沙子
【アントニア】小野絢子
【ジュリエッタ】柴山紗帆
【リンドルフ ほか】渡邊峻郁

・2月25日(日) 13:00
【ホフマン】奥村康祐
【オリンピア】奥田花純
【アントニア】小野絢子
【ジュリエッタ】米沢 唯
【リンドルフ ほか】中家正博

【指揮】ポール・マーフィー
【管弦楽】東京交響楽団

【ウェブサイト】https://www.nntt.jac.go.jp/ballet/hoffmann/
お電話でのお求め:新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999

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