【公演レポ】「シャンパンの歌」で大団円を迎えた新国立劇場 J・シュトラウス 喜歌劇『こうもり』

新国立劇場にてワルツ王ヨハン・シュトラウスⅡ世が作曲した傑作オペレッタ「こうもり」最終公演を12月12日に観賞した。


撮影:鹿摩隆司 提供:新国立劇場

同作は、数あるオペレッタの中でも最高峰とされる作品で、「オペレッタの王」ともよばれる。ヨハン・シュトラウス2世ならではの優雅で軽快なウィンナ・ワルツの旋律が全編を彩り、軽快で親しみやすいメロディーは全世界で愛されている。

年末、日本は第九公演たけなわの時期だが、ウィンナワルツの本場ウィーンをはじめとするドイツ語圏の国々の歌劇場では年末年始恒例の風物詩となっている。

新国立劇場版「こうもり」の演出はウィーン宮廷歌手の名テノール、ハインツ・ツェドニクによるもの。アール・デコ調の煌めく舞台美術が同作品の華やかさとユーモアのセンスを引き立てていた。


撮影:鹿摩隆司 提供:新国立劇場

19世紀末から20世紀後半にかけて活躍したウィーン最大の画家グスタフ・クリムトの世界観が妖艶な美しさをまとい、官能的なラインの衣裳など魅惑的に投影された。ウィーンの出色たっぷりな名舞台で金色の幾何学模様や、日本の美感を採り入れてた優雅なラインの衣裳などオペラ・ファンのみならず、美術ファンの心も捉えた作品だった。

アイゼンシュタイン役のジョナサン・マクガヴァンは、深みと張りのあるバリトンで堂々とした声を披露。演技も巧みだった。


撮影:鹿摩隆司 提供:新国立劇場

ロザリンデ役のエレオノーレ・マルグエッレ(ソプラノ)は、艶と伸びのある美声を披露した。ファルケ博士役のトーマス・タツルは、伸びのあるバリトンは心に染みるものだった。


撮影:鹿摩隆司 提供:新国立劇場

日本勢では、アルフレード役の伊藤達人が健闘。明るく伸びの良い声で観客の心を楽しませた。歌手陣は全員、喜歌劇として観客を存分に楽しませる歌を披露してくれた。


撮影:鹿摩隆司 提供:新国立劇場

第2幕は、ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートでもおなじみの人気のポルカ「雷鳴と電光」で大きな盛り上がりを魅せ、東京シティ・バレエ団男女5組による華やかなダンス(バレエ)に魅了された。


撮影:鹿摩隆司 提供:新国立劇場

ウィンナワルツは、スウェイコントロールが必要なダンスで、バレエと重心の掛け方が異なるが、バレエダンサーらしい流麗なターンとジャンプ、軽々と女性ダンサーを持ち上げる鮮やかなリフトで年末年始らしい華やかさを演出。観客の目を楽しませるのに大活躍した。


撮影:鹿摩隆司 提供:新国立劇場

東京フィルハーモニー交響楽団のワルツ、ポルカ演奏も見事なものだった。二拍子の軽快なダンス曲であるポルカ「雷鳴と電光」では、大太鼓は雷鳴を。シンバルは稲妻が演じ、雷鳴と稲妻が巧みに模写された。ワルツに続き、「兄弟姉妹になろう」と皆が唱和し、宴は最高潮の盛り上がりとなった。

同曲は華麗なる天才指揮者カルロス・クライバー(Carlos Kleiber 1930-2004
妻はバレエダンサーのStanislava Brezovar) とウィーン・フィルの18番であるが、新国立劇場初登場の指揮者パトリック・ハーンは鮮やかなタクトで東京フィルと幸福感を高めてくれるような音楽を創り上げた。


撮影:鹿摩隆司 提供:新国立劇場

開場中と30分の休憩の間には、こうもり限定のシャンパーニュ「ローラン・ペリエ グラン シエクル」の提供もあった。ワインやシャンパーニュを求め、休憩中はこれまで見たことなないほどの長蛇の列が出来ていた。

オペラはしばしば「総合芸術」または「総合舞台芸術」と呼ばれ、音楽(独唱、重唱、合唱、オーケストラによる演奏)に加え、演劇(演出や演技)、文学(歌詞)、美術(舞台装置、舞台美術、照明、衣装)といったさまざまな要素が合わさって作られているが、オペラのたしなみ・楽しむ要素としてワインやシャンパーニュも欠かせない。


撮影:鹿摩隆司 提供:新国立劇場

最後は、「酒の王様 シャンパンに栄光あれ!」とロザリンデが歌う「シャンパンの歌」が明るく陽気に披露された。「乾杯!乾杯!乾杯!」の掛け声とジャンパンの泡のような至福感の中、大団円に幕は閉じられた。


撮影:鹿摩隆司 提供:新国立劇場

■新国立劇場 2023/2024 シーズン オペラ
ヨハン・シュトラウスⅡ世『こうもり』全3幕
〈ドイツ語上演/日本語及び英語字幕付〉
Die Fledermaus / Johann StraussⅡ

日時:2023年12月12日(火)14:00
会場:新国立劇場オペラパレス

スタッフ:

【指揮】パトリック・ハーン
【演出】ハインツ・ツェドニク
【美術・衣裳】オラフ・ツォンベック
【振付】マリア・ルイーズ・ヤスカ
【照明】立田雄士
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト:

【ガブリエル・フォン・アイゼンシュタイン】ジョナサン・マクガヴァン
【ロザリンデ】エレオノーレ・マルグエッレ
【フランク】畠山 茂
【オルロフスキー公爵】タマラ・グーラ
【アルフレード】伊藤達人
【ファルケ博士】トーマス・タツル
【アデーレ】シェシュティン・アヴェモ
【ブリント博士】青地英幸
【フロッシュ】ホルスト・ラムネク
【イーダ】伊藤 晴

【合唱指揮】三澤洋史
【合唱】新国立劇場合唱団
【バレエ】東京シティ・バレエ団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

こうもり
新国立劇場のオペラ公演「こうもり」のご紹介。 新国立劇場では名作から世界初演の新作まで、世界水準の多彩なオペラを上演しています。
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