2月24日(土)新国立劇場バレエ団「ホフマン物語」マチネ公演を観賞した。英国が誇る振付家ピーター・ダレルの傑作「ホフマン物語」は、舞台装置・衣裳を一新して2015年に新制作。2018年の再演以来、6年ぶりに上演となった。
撮影:鹿摩隆司
「ホフマン物語」は詩人ホフマンの回想録で、彼と3人の女性との恋愛遍歴が通じて濃密な人間ドラマが描かれいる。「ホフマン物語」は、第1幕、第2幕、第3幕、プロローグ&エピローグと4つの物語によって構成されており、ホフマンは20代、30代、40代、初老とそれぞれの年代の男性を演じ分けることが求められる難役。
ホフマン役の井澤駿は、軸がしっかりとした高度で安定したダンスを披露。しなやかな美しいラインと確かなテクニックで舞台を活気づけ、理想的なダンスール・ノーブルであることを印象づけた。
撮影:鹿摩隆司
ホフマンを魅了するヒロインは1幕のオリンピア、2幕のアントニア、3幕のジュリエッタ。幕事にそれぞれが魅力的なキャラクターを演じた。
1幕のオリンピアを演じたのは奥田花純。人形ぶりを長時間維持なくてはならない大変な役柄だが、確かなテクニックと可憐さで芸術性が高い舞台を作り上げることに貢献した。
撮影:鹿摩隆司
青年時代のホフマンの恋人アントニアを演じたのは米沢唯。
撮影:鹿摩隆司
ホフマンの人生でたった一人、愛が通じ合う役柄を綺麗なダンスと緩急がある動きで巧みに表現。柔らかな叙情性と米沢ならではの色香で観客を大いに沸かせた。
撮影:鹿摩隆司
ダーパテュート(悪魔)の手下としてホフマンを誘惑するジュリエッタ役を演じたのは、木村優里。可憐なヒロイン役を演じることが多い木村だが、快楽の世界へ引きずり込もうとする艶やかな役柄で観客を恍惚とさせた。木村のバレエは、努力や工夫だけでは獲得することができない「華」がある。
撮影:鹿摩隆司
プロローグとエピローグに登場するもう一人の女性、ホフマンの恋人でオペラ歌手のラ・ステラ役は、渡辺与布が演じた。踊りが華やかで色気がある役柄。才知ある表現力に魅了された。
撮影:鹿摩隆司
オッフェンバックの美しい音楽にのせられた舞台で繰り広げられたロマンティックで切なく幻想的な恋物語を満喫。
新国立劇場バレエ団は、2025年7月24日(木)から27日(日)の日程で、英国ロンドンのロイヤルオペラハウスで『ジゼル』公演を行う。自ら海外公演に挑戦するのは初の試み。同バレエ団の更なる飛躍が大いに期待される。
■2023/2024シーズン 新国立劇場バレエ団
ホフマン物語 Tales of Hoffmann
日時:2024年2月24日(土) 13:00
会場:新国立劇場オペラパレス
STAFF
【振付・台本】ピーター・ダレル
【音楽】ジャック・オッフェンバック
【編曲】ジョン・ランチベリー
【美術】川口直次
【衣裳】前田文子
【照明】沢田祐二
CAST
【ホフマン】井澤 駿
【オリンピア】奥田花純
【アントニア】米沢 唯
【ジュリエッタ】木村 優里
【ラ・ステラ】渡辺 与布
【リンドルフ ほか】中家正博
【指揮】ポール・マーフィー
【管弦楽】東京交響楽団
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