11月20日「日本のヴィルトゥオーゾたち~東芝グランドコンサート歴代ソリストによるガラ・コンサート~」をサントリーホールで聴いた。
40年以上の国内屈指の歴史を誇るコンサートシリーズ「東芝グランドコンサート」において、日本トップレベルの5名のヴィルトゥオーゾたち=清水和音(ピアノ)、神尾真由子(ヴァイオリン) 、萩原麻未(ピアノ) 、三浦文彰(ヴァイオリン)、そしてショパン国際ピアノ・コンクールで2位入賞し、内田光子以来、日本人として51年ぶりの快挙を成し遂げた反田恭平(ピアノ) が集結した。
神尾由美子の「ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調」はエネルギッシュで情熱的な演奏。同曲は、『クロイツェル』の愛称で親しまれているが、ベートーヴェン自身のつけた題は『ほとんど協奏曲のように、相競って演奏されるヴァイオリン助奏つきのピアノソナタ』。ベートーヴェン自身のつけた題名の通リ、萩原麻未のピアノも神尾に負けない程、情熱的でスリリングなものとなり聞き応えがあった。
三浦文彰のヴァイオリンと、清水和音のピアノのより、クライスラー「愛の喜び」と「愛の悲しみ」が演奏された。華やかなウィンナ・ワルツの要素が見受けられる「愛の喜び」で甘美な演奏が披露された。「愛の喜び」と対をなす小品「愛の悲しみ」では、哀愁に満ちたる独特の情感が感じられた。レントラーの緩い三拍子に乗って、三浦のヴァイオリンが憂いを帯びた旋律を奏でた。
ラヴェル「ツィガーヌ」で三浦は圧巻の技巧を披露。抜群のテクニックと情熱的な音色で観客を魅了した。三浦は、今年テレビ朝日系「徹子の部屋」にも出演し、近年はメディアでも注目を浴びている。30年以上にわたって第一線で存在感を示してきた清水和音のピアノは、叩き付けるようなパワーと弱音部における繊細な表現で絶妙な味わいを醸し出した。
今回のコンサートで大変だったのは、3人のピアニストがそれぞれ異なるピアノを使用したことより、限られた時間で調律師が的確に調律しなければならない点があげられる。ピアニストは自分のピアノを持ち歩けないので、調律師が非常に重要な役割を担っている。
本コンサートで最も注目度が高かったのは、内田光子以来、日本人として51年ぶりのショパン国際ピアノコンクール第2位受賞!受賞後初の日本凱旋演奏となる反田恭平のピアノだろう。この日は、反田の勇姿を観に大勢の観客がサントリーホールに詰めかけ、チケットはプラチナ・チケットと化した。
反田はショパン・コンクールで弾いた曲目を披露した。ショパンのラルゴ「聖歌『神よ、ポーランドをお守りください』変ホ長調、ショパンによるハーモニゼーション、遺作)では、しっとりと聴かせ、観客の涙と感動を誘った。教会で賛美歌を聴いているような想いに駆られた。
ラストに披露された『英雄ポロネーズ』では、研ぎ澄まされたリズム感と色鮮やかな音色が圧倒的。1音1音ハッキリとし、流れる様なメロディが構築された。パワフルで艶のある音色は反田の大きな武器であることが実感。王者の風格を備えた見事な英雄ポロネーズに感涙した。演奏終了後、大拍手とスタンディングオベーションが贈られ、観客全員で反田の勝利を祝った。
世界中の音楽家の中でも傑出した反田恭平の才能。日本を代表するヴィルトゥオーゾとして今後の活躍にも期待がかかる。反田はソリストとして来年の3月『東芝グランドコンサート2022』出演が決定している。
撮影:堀田力丸/提供:フジテレビジョン
■日本のヴィルトゥオーゾたち~東芝グランドコンサート歴代ソリストによるガラ・コンサート~
日時:2021年11月20日
会場:サントリーホール 大ホール
出演:
清水 和音(ピアノ)<第9回(1990年)>
神尾 真由子(ヴァイオリン)<第31回(2012年)>
萩原 麻未(ピアノ)<第31回(2012年)>
三浦 文彰(ヴァイオリン)<第39回(2020年)>
反田 恭平(ピアノ)<第41回(2022年)出演予定>
演奏曲目:
ヴァイオリン:神尾真由子、ピアノ:萩原麻未
♪ベートーヴェン:ヴァイオリン・ソナタ第9番イ長調 Op.47「クロイツェル」
ピアノ:反田恭平
♪ショパン:マズルカ風ロンド ヘ長調 Op.5
♪ショパン:ラルゴ 変ホ長調(遺作)
♪ショパン:ポロネーズ第6番 変イ長調 Op.53「英雄」
反田恭平アンコール
♪ショパン : 3つのマズルカ 作品56より第2番 ハ長調
ピアノ:清水和音
♪ラフマニノフ(アール・ワイルド編):ヴォカリーズ
ヴァイオリン:三浦文彰、ピアノ:清水和音
♪クライスラー:愛の喜び
♪クライスラー:愛の悲しみ
♪シューベルト:ヴァイオリンとピアノのためのソナチネ第2番 イ短調 D.385
♪ラヴェル:ツィガーヌ
■村治佳織、反田恭平がソリストで登場!「東芝グランドコンサート2022 ダーヴィト・アフカム指揮スペイン国立管弦楽団」
https://www.lvtimes.net/culture/19643/
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