【公演レポ】菅井円加、ハンブルク・バレエ団日本公演『シルヴィア』で比類なき存在感を放つ!


バレエ最高峰の振付家のひとりであり、「最後の巨匠」とも称えられるジョン・ノイマイヤー率いるハンブルク・バレエ団が来日。5年ぶり9度目の日本公演となり、ノイマイヤー版『シルヴィア』公演を3月11日(土)東京文化会館で観賞した。


ハンブルク・バレエ団: Photo by Kiyonori Hasegawa

ジョン・ノイマイヤーは2024年で芸術監督から退任する意向を示しており、ノイマイヤー下での日本公演は今回が恐らくラストとなる。

1997年にパリ・オペラ座バレエ団で初演されたジョン・ノイマイヤー版の『シルヴィア』は、神話をテーマにした3つの舞踊詩により構成される。

ギリシャ神話のニンフである男勝りなシルヴィアと羊飼いアミンタの恋を描いたバレエ『シルヴィア』の音楽は、「フランス・バレエ音楽の父」と呼ばれるレオ・ドリーブによる作品。

バレエ「泉」(1866年)、「コッペリア」(1867年)、「シルヴィア」(1876年)の3作品は、「ドリーブの三大バレエ」と呼ばれており、特に「コッペリア」と「シルヴィア」は世界中の様々なバレエ団で上演されている人気作です。


ハンブルク・バレエ団: Photo by Kiyonori Hasegawa

同作は、バレエでは珍しい「女戦士」が登場。第1部「ディアナの聖なる森」では、勇ましい戦士の姿で登場するディアナとシルヴィアたちに目が奪われた。強さを強調するように、第1幕ではジャンプや速いステップが多く取り入れられていた。

狩りの女神ディアナに仕え、狩りを得意とする男勝りなニンフであるシルヴィア役は、菅井円加(プリンシパル)が担った。菅井のダンスは、テクニックが力強く絶品。絶妙な間の取り方と表現力が白眉で、絶賛された凱旋公演となった。


ハンブルク・バレエ団: Photo by Kiyonori Hasegawa

第二部で男性ダンサーたちと披露された現代的でスタイリッシュなダンスも見応えがあった。菅井のさっそうとした鯔背(いなせ)な立ち姿と存在感は時空・人種・性別を超えた魅力があった。


ハンブルク・バレエ団: Photo by Kiyonori Hasegawa

シルヴィアに好意を寄せる若い羊飼いのアミンタ役を踊ったアレクサンドル・トルーシュは、キレのよいダンスを披露。シルヴィアとのパ・ド・ドゥでは成就することがない恋の兆しを詩的に描き、観客の心を大いに揺さぶった。


ハンブルク・バレエ団: Photo by Kiyonori Hasegawa

狩り・貞節を司る月の女神であるディアナ役のアンナ・ラウデールは、女狩人たちと共にしなやかな弓のような迫力があるダンスを演じた。


ハンブルク・バレエ団: Photo by Kiyonori Hasegawa

レオ・ドリーブが作曲したバレエ音楽『シルヴィア』は、音楽的にも大変価値ある作品でロシア・バレエの代表的作曲家であるチャイコフスキーは知人タネーエフに「もし私がもっと早くこの作品を知っていたら、私は『白鳥の湖』を作曲しなかっただろう」と絶賛ほど。

「最後の巨匠」と称えられるジョン・ノイマイヤーの類まれなる繊細かつ複雑な振付表現と音楽の力は、ノイマイヤー版『シルヴィア』を時代を超越した芸術作品に昇華させた。


ハンブルク・バレエ団: Photo by Kiyonori Hasegawa

■ハンブルク・バレエ団 2023年日本公演『シルヴィア』

日時:3月11日(土)18:00
会場:東京文化会館(上野)

音楽:レオ・ドリーブ
振付・ステージング:ジョン・ノイマイヤー
装置・衣裳:ヤニス・ココス

シルヴィア:菅井円加
アミンタ:アレクサンドル・トルーシュ
ディアナ:アンナ・ラウデール
アムール/ティルシス/オリオン:クリストファー・エヴァンズ
エンディミオン:ヤコポ・ベルーシ

指揮:マルクス・レティネン
演奏:東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団

▽【作品紹介】ハンブルク・バレエ団「シルヴィア」

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