ストラヴィンスキー作曲『夜鳴きうぐいす』とチャイコフスキーの『イオランタ』、ロシアの作曲家によるロマンティックな小品オペラが2本立てで、新国立劇場にて4月4日より上演される。
無垢な主人公と迷える人々の心の交流、そして真の愛がもたらす希望が叙情的に描かれる感動的な作品を、パリ在住の巨匠演出家ヤニス・コッコスのリモート演出で上演。劇場いっぱいに広がるおとぎの世界は、感性豊かな子どもたちや若い方々のオペラデビューにもお薦めの作品です。
ヤニス・コッコスによる『夜鳴きうぐいす』スケッチ
劇場いっぱいに広がる童話の世界…!
ストラヴィンスキーのクリエイティブな『夜鳴きうぐいす』と、チャイコフスキーの感動的な『イオランタ』、2粒の宝石のようなオペラを2本立てで。
アンデルセン童話『ナイチンゲール(夜鳴きうぐいす)』は、美しい鳴き声のナイチンゲールを捕らえた王様が、機械仕掛けの鳥に心を移すと病がみるみる悪化、そこへ逃げ出していたナイチンゲールが戻り、その美しい心と美しい声で王様の病を癒すストーリー。誰しも子供時代に読んだ心染み入るこの名作は、アンデルセン(1805-1875)の代表作として世界中で親しまれています。
ストラヴィンスキー作曲の3幕の叙情童話『夜鳴きうぐいす』(1914年初演)は、このアンデルセン童話『ナイチンゲール』を原作とした幻想的なオペラ。ディアギレフのバレエ・リュス委嘱のバレエ音楽『火の鳥』(1910年)『ペトルーシュカ』(1911年)『春の祭典』(1913年)の三大バレエで時代の寵児となったストラヴィンスキー(1882~1971)が発表した作品で、幻想的な夜の森から中国のお城へ、ストラヴィンスキーならではの圧倒的色彩感の音楽がダイナミックに開花します。ロシア独特の東洋的色調が全編を彩る一方で、人知を超えた響きのうぐいすの可憐なコロラトゥーラ(軽く転がすように歌う唱法)が胸に染みます。
1時間弱の中に創造性があふれるこの作品もまた、バレエ・リュスで上演されました。今回のコッコス演出でも、多数のダンサーが出演し、舞台ならではの仕掛け満載となる趣向。とびきり上質な絵本をめくるようにワクワクする時間となることでしょう。
『イオランタ』(1892年初演)はチャイコフスキー(1840~1893)最後のオペラで、バレエ『くるみ割り人形』と同時上演するために書かれた一幕物。盲目の少女が愛と希望の力で開眼する物語が詩情豊かに歌い上げられる、晩年のチャイコフスキー珠玉の作品です。繊細な管弦楽と美しい旋律の宝庫で、その音楽は「おとぎ話のようにどこまでも美しく、彼の作曲家として、また人間としての純真さ、優美さ、繊細さが見事に結実した傑作(芸術監督・大野和士)」です。愛と希望を全員で讃えるフィナーレは特に感動的で、劇場を満たす幸福の響きが深い共感を呼びます。日本での上演機会は少ないものの、ご当地ロシアでは、上演のたびに劇場が子供たちでいっぱいになる名作です。
いずれの作品も、無垢な主人公と迷える人々が出会い、結末では純粋で誠実な心と愛とが人々に希望をもたらす物語。崇高な音楽の力で、大人も子どももおとぎの世界へ誘われ、心震わせることでしょう。ウイルス禍により閉塞感と緊張が覆う日常に、この春、新国立劇場から、希望の光に満ちた公演をお送りします。
巨匠コッコスが繰り広げるおとぎの世界に、粒ぞろいの出演者たち。楽しみ倍増のダブルビル
演出は、舞台美術家、演出家として世界一流歌劇場で活躍し数々の賞に輝く巨匠ヤニス・コッコス。この公演に先駆け、19年に新国立劇場オペラ研修所試演会『イオランタ』を演出。来日して研修生たちを指導し、感動的な舞台を創り上げました。美術家出身のコッコス氏はセンスあふれる美しい舞台創りに定評があり、自ら美術、衣裳デザインも手掛けています。今回の『夜鳴きうぐいす』では、西洋から見た想像上の東洋の華やかな世界を展開させ、『イオランタ』では盲目の少女を取り巻く人々の内面世界にクローズアップしていく対照的な演出をコンセプトとしています。
コロラトゥーラの夜鳴きうぐいす役は、煌めく美声とチャーミングな舞台姿で注目を集めるソプラノ三宅理恵。イオランタには、『夏の夜の夢』へレナ、『フィガロの結婚』伯爵夫人と、今シーズン立て続けに主役級に登場し、リリックな声と見事な音楽性で観客の心を揺さぶった大隅智佳子。持ち味の異なる歌手たちが一度に登場するのもダブルビルならではの楽しみです。日本の今のオペラ界を担う旬の実力派歌手たちが、2作品に華やかに揃います。指揮は20世紀作品の名手でもあり、緻密な音楽創りに定評ある高関健が当たります。
2021年はストラヴィンスキー没後50年の記念イヤー
2021 年は、イーゴリ・ストラヴィンスキー(1882~1971))没後50 年。50 回目の命日は、公演中の4 月6 日となります。ストラヴィンスキー三大バレエ『火の鳥』『ペトルーシュカ』『春の祭典』と同時期に書かれた『夜鳴きうぐいす』は、ストラヴィンスキーならではの圧倒的色彩感、エキゾティシズム、エネルギー、そして対照的に静謐な世界とが凝縮された作品です。「今年はストラヴィンスキーを聴いておくか」という機運の高まる中、ストラヴィンスキーの舞台上演『夜鳴きうぐいす/イオランタ』は必見必聴の機会です。
『夜鳴きうぐいす』ストーリー
病の床にある中国の皇帝は、夜鳴きうぐいす(ナイチンゲール)を捕えさせる。宮中でうぐいすが美しい声で歌うと、皇帝の病はみるみる快復。感涙にむせび褒美を与えようとする皇帝に、うぐいすは「その涙で充分です」と答える。そこへ異国の使者が来て機械仕掛けのうぐいすを献上すると、皇帝はそちらに夢中になってしまう。聴き比べしようと振り返ると、本物のうぐいすはもういない。皇帝はみるみる病が悪化し、死神が訪れる。本物のうぐいすが舞い戻り、美しい声で歌うと、死神は消え、皇帝は死の淵から脱する。感謝して褒美を与えようとする皇帝に、うぐいすは毎晩歌いに来ることを約束するのだった。
『イオランタ』ストーリー
中世のとある山中の城。ルネ王は娘イオランタの目が見えないことを本人に知られないよう、外界との接触を避けて育ててきた。ある日城に迷い込んだ青年ヴォデモンは、美しく純粋なイオランタにたちまち魅了される。会話するうちに、ヴォデモンはイオランタが盲目であることに気付き、光の世界の素晴らしさを話して聞かせる。事態を悟った王は、娘の目が治癒すれば、城への侵入の罪をゆるすと宣言。イオランタは治療に耐える決心をし、医師と共に別宮へ。王はヴォデモンの求婚を受け入れる。治療を終えたイオランタが登場すると、王が二人を祝福し、一同喜びに包まれて、光と希望を讃える。
公演およびチケットの詳細については、新国立劇場ホームページをご覧ください。
公演情報WEBサイト https://www.nntt.jac.go.jp/opera/iolanta/
【新国立劇場2020/2021シーズンオペラ 『夜鳴きうぐいす/イオランタ』開催概要】
【公演日程】2021年4月4日(日)14:00/6日(火)14:00/8日(木)19:00/11日(日)14:00
【会場】新国立劇場 オペラパレス
【スタッフ・出演】指揮:高関 健/演出:ヤニス・コッコス/夜鳴きうぐいす:三宅理恵、中国の皇帝:吉川健一ほか(夜鳴きうぐいす)/ルネ:妻屋秀和、ヴォデモン伯爵:内山信吾、イオランタ:大隅智佳子ほか(イオランタ)
合唱:新国立劇場合唱団 管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団
【チケット料金】 S:27,500円 ・ A:8,800円 ・ B:22,000円 ・ C:5,500円 ・ D:5,500円・ Z(当日のみ):1,650円
※ジュニア(小中学生)割引20%、学生割引(5%)ほか各種割引あり
【チケットのお求め】新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999 WEBボックスオフィスhttp://nntt.pia.jp/
※Webボックスオフィスでは、ご自身で座席を選びながらご予約いただけます。
【アクセス】京王新線(都営新宿線乗入)初台駅中央口直結
【主催】新国立劇場
新国立劇場について
国立劇場について新国立劇場は、日本唯一の現代舞台芸術のための国立劇場として、オペラ、バレエ、ダンス、演劇の公演の制作・上演や、芸術家の研修等の事業を行っています。オペラ部門は2018年9月より世界的指揮者の大野和士が芸術監督に就任し、世界の主要歌劇場と比肩する水準のオペラ公演を年間およそ10本上演、高校生のためのオペラ鑑賞教室の実施等を行っています。
https://www.nntt.jac.go.jp
【お客様からのお問い合わせ先】
新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999(10:00~18:00)
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