【公演レポ】チョン・ミョンフン&東京フィルハーモニー交響楽団、フランスの香りと息遣いを感じさせる見事な演奏!

東京フィルハーモニー交響楽団5月定期演奏会をBunkamuraオーチャードホールで聴いた。指揮は、名誉音楽監督のチョン・ミョンフン。コンサートマスターは、近藤 薫。

マエストロ チョン・ミョンフン&東京フィルによるフォーレ、ラヴェル、ドビュッシーの名品揃いのオール・フレンチ・プログラム。マエストロは、パリ・オペラ座バスティーユやフランス国立放送フィル音楽監督の経験があり、フランス音楽のスペシャリストとして期待された待望の公演だった。

前半は、フォーレ組曲『ペレアスとメリザンド』とラヴェル『ダフニスとクロエ』第2組曲。

ガブリエル・フォーレ組曲『ペレアスとメリザンド』はベルギーの詩人・劇作家のメーテルランクによる戯曲が原作。王子の弟ペレアスと、王子の妻メリザンドの禁断の恋の物語。静かに紡がれる美しい調べが魅力的だった。とりわけ第三部「シシリエンヌ」のフルートによる美しく有名なソロに惹かれた。

メーテルリンクの戯曲『ペレアスとメリザンド』に触発され、この題材をオペラにすることを思い立ったのが、クロード・ドビュッシー。ドビュッシーによる唯一の歌劇『ペレアスとメリザンド』は、7月2日より新国立劇場オペラハウスでオペラ上演される(演奏は東京フィル)。

ラヴェルのバレエ組曲『ダフニスとクロエ』第2組曲は、マエストロ チョン・ミョンフンの端正で円熟味がある指揮により、楽員の意識が一つになり、華麗な盛り上がりとなった。

バレエの題材となった古代ギリシアを彷彿させるような多彩な打楽器、フルートとオーボエ、トランペット、ハーブなどの活躍は聴き応えがあった。


同曲は、鍵盤楽器「ジュ・ドゥ・タンブル」と「チェレスタ」が使用された。金属の音板をハンマーで叩いて音を出すという点で似ているが、音色が異なるなど新たな発見があった。

後半のドビュッシーの交響詩『海』は、作曲家が葛飾北斎の浮世絵「冨嶽三十六景 神奈川沖浪裏」にインスパイアされたという、異国情緒の中にもジャポニズムの影響を垣間見ることが出来る傑作。

マエストロ チョン・ミョンフンの的確なリードにより、ドビュッシーらしい音の響きと印象主義音楽の色彩感が際立っていた。

ラストは、モーリス・ラヴェルの管弦楽のための舞踏詩『ラ・ヴァルス』。タイトルの『ラ・ヴァルス』は、フランス語でワルツのことであり、19世紀末のウィンナ・ワルツへの礼賛として着想された。

曲はまず低弦のトレモロによる混沌から始まり、次第にワルツのリズムとメロディが顔を出す。賑やかなワルツとしての形作られた後、ゆったりとした新たな主題が出て、ワルツらしい雰囲気を積み重ねていく素敵な曲想がしなやかに演奏された。

混沌とした渦巻く雲の中から、ワルツを踊る男女が浮かび上がって来るようなフランスの香りと息遣いを感じさせる指揮と演奏が見事。

マエストロ チョン・ミョンフン&東京フィルによる華麗な音色、叙情美、ダイナミズムに満ちた音楽を堪能した演奏会だった。

提供=東京フィルハーモニー交響楽団 撮影=上野隆文

■東京フィルハーモニー交響楽団
第969回オーチャード定期演奏会

日時:5月22日(日)15:00
会場:Bunkamuraオーチャードホール

指揮:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)

フォーレ/組曲『ペレアスとメリザンド』
ラヴェル/『ダフニスとクロエ』第2組曲
ドビュッシー/交響詩『海』(管弦楽のための3つの交響的素描)
ラヴェル/管弦楽のための舞踏詩『ラ・ヴァルス』

主催:公益財団法人 東京フィルハーモニー交響楽団
助成:文化庁文化芸術振興費補助金(舞台芸術創造活動活性化事業)・独立行政法人日本芸術文化振興会
協力:Bunkamura

第969回オーチャード定期演奏会 | 東京フィルハーモニー交響楽団
2022年5月22日(日) 15:00 Bunkamura オーチャードホール

▼Myung-Whun Chung & Tokyo Philharmonic Orchestra/ Saint-Saëns: Symphony No. 3, “Organ”

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