【公演レポ】前橋汀子×小林研一郎、円熟味と風格が増す二人の大御所が「名曲全集」で競演!

4月16日、「名曲全集 第176回<前期>」をミューザ川崎シンフォニーホールで聴いた。

指揮は”炎のコバケン”こと小林研一郎。ヴァイオリンは今年、演奏活動60周年を迎えた国際的ヴァイオリニストの前橋汀子。管弦楽はミューザ川崎シンフォニーホールのホストオーケストラである東京交響楽団で、コンサートマスターは同楽団若手コンサートマスターの小林壱成が担当した。

国際的な日本人演奏家のパイオニアとして知られる前橋汀子は、演奏活動60周年目である今年、活発な演奏活動を行っている。著書「私のヴァイオリン 前橋汀子回想録」が早川書房より、最新刊「ヴァイオリニストの第五楽章」が日本経済新聞出版より2020年11月に出版。深い含蓄と爽やかさが残る文体で執筆活動でも好評を博し、多才さで注目されている。

”炎のコバケン”こと小林研一郎は、昨年、ベートーヴェンとチャイコフスキーの全曲演奏会を一人で指揮した。ますます円熟味と風格が増す2人の大御所の競演ということもあり、会場はほぼ満員。熱気を帯びたコンサートとなった。

前半、メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲で前橋は深紅のドレスで味わい深いヴァイオリンを披露。ゆっくり目のテンポながら、展開部の終わりからカデンツァに入ると一気にギアが入り、風格を感じさせてくれる堂々たる響きが特徴的だった。

第二楽章の憂愁と優雅さを併せ持つ演奏は聴き応えがあった。前橋の使用楽器は1736年製作のデル・ジェス・グァルネリウスだが、音域のバランスが良く、落ち着いた芯の太い音色に魅力された。

後半のドヴォルザーク 交響曲 第9番「新世界より」は、素晴らしい響きが随所に表れた圧巻の演奏。若手コンサートマスター小林壱成のヴァイオリンはキレがよく、オーケストラ全体のアンサンブルが美しかった。

終楽章はタメを効かせた小林研一郎ならではの節回しが格別で、会場は大いに盛り上がった。終演後、あちこちから「Bravo!」の横断幕が振られた。

演奏後のスピーチで小林は、「アンコール曲は用意していません。この素晴らしい演奏の余韻そのままでお帰り下さい。でも、最終楽章の2分間をお楽しみください」と最終楽章集結部をアンコールとして再現。観客から熱い拍手が贈られた。

(C)ヒダキトモコ

■ミューザ川崎シンフォニーホール&東京交響楽団
名曲全集 第176回<前期>

日時
2022年04月16日(土)14:00 開演
会場
ミューザ川崎シンフォニーホール

出演

指揮:小林研一郎
ヴァイオリン:前橋汀子
管弦楽:東京交響楽団

プログラム

メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調 op.64
ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調 op.95「新世界より」

名曲全集 第176回<前期>/東京交響楽団
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