【公演レポ】勇気と希望を与えてくれた藤沢市民オペラ G.ヴェルディ歌劇「ナブッコ」公演!

3月5日藤沢市民オペラ ヴェルディ歌劇「ナブッコ」を観賞した。
藤沢市民オペラは、1973年に発足。日本の市民オペラの先駆けとして、約半世紀の歴史を持つ。

園田隆一郎芸術監督の第二シーズンの集大成となるヴェルディ歌劇「ナブッコ」は、新型コロナウィルスの影響により1年延期されたが、2022年初春にめでたく開催の日を迎えた。園田隆一郎芸術監督のもとに集うプロ・ソリスト陣と、市民によるオーケストラと合唱団の共演となった。

「ナブッコ」(Nabucco)は、オペラ王と称されるイタリアオペラの大家ジュゼッペ・ヴェルディが作曲した全4幕からなる歌劇でヴェルディの記念すべき出世作と言われる。26曲のオペラを作曲したヴェルディの3作目のオペラとなる。聖書の史実を題材にとったこの作品によって、ヴェルディは作曲家として初めて大成功を収めた。

「ナブッコ」は、旧約聖書の「エレミヤ書」と「ダニエル書」から構成され、新バビロニアの王ネブカドネザ2世により、ユダ王国のユダヤ人たちがバビロンを初めとしたバビロニア地方へ捕虜として連行され、移住させられた「バビロン捕囚」(前597年,前586年)の頃のストーリーがベースとなっている。

「ナブッコ」は、ネブカドネザル2世として知られるバビロニア王のイタリア語読みである。「ナブッコ」はイタリアで大変人気の作品で、ヘブライ人(ユダヤ人)たちが祖国への望郷の念を持って歌い上げる合唱曲「行け、我が想いよ、金色の翼に乗って」は、今日でも「第2のイタリア国歌」と呼ばれ、親しまれている。

ナブッコ役の今井俊輔(バリトン)は、表情豊かで堂々とした歌声を披露。終盤さらに演技と歌に磨きがかかり、家族を想う複雑な心境を見事に表現した。

アビガイッレ役の小林厚子(ソプラノ)は、声量・声の張り・透明感が申し分なく、登場した瞬間、観客の耳目を瞬時に集めるカリスマ性を発揮。主役に必要な声量と天に届くようなスケール感がある高音域に驚かされた。ナブッコはベルカント時代の名残あり、コロラトゥーラもあり、繊細で複雑な歌唱をしなくてはならないがこの役に小林厚子はぴったりだった。

ナブッコ役の今井俊輔とアビガイッレ役の小林厚子が同オペラを終始牽引した。堂々たる歌唱と威厳がある演技で、観客を感動の渦へと巻き込んでいった。

ザッカリーア役の伊藤貴之(バス)は、威厳がある名唱と安定した演技力が印象的だった。威風堂々とした姿と迫力ある低音で、ヴェルディの出世作をワンランク上のステージへと引き上げていった。

フェネーナ役の山下裕賀(メゾソプラノ)は、男性が憧れる女性役を好演。次女フェネーナは、敵国のエルサレム王の甥イズマエーレと恋仲になっていた役柄だが張りがある美声、艶美さ、凛とした演技で舞台に華を添えた。

1981年創設の藤沢市合唱連盟は、第三幕の合唱曲「行け、我が想いよ、金色の翼に乗って」で、心のこもったコーラスを披露。エルサレムの運命に似た残酷な哀歌は、観客の心情を揺り動かした。

園田隆一郎は丁寧・きめ細かい指揮で、藤沢市民交響楽団を好リード。園田は、プロアマを同時に指導しなくてはならない難役を見事に務め上げ、2ndシーズンのフィナーレを飾った。演出・舞台装置・衣裳は時代背景・歴史・文化・作品の魅力といったものを十二分に伝え、観客に勇気と希望を与える助け手となった。

撮影:寺司正彦

■第24回藤沢市民オペラ 
G.ヴェルディ「ナブッコ」

日時:3月5日(土)
会場:藤沢市民会館 大ホール

指揮:園田隆一郎
演出:岩田達宗
装置:二村周作
照明:大島祐夫
音響:山中洋一
衣裳:半田悦子

ナブッコ 今井 俊輔
イズマエーレ 工藤 和真
ザッカリーア 伊藤 貴之
アビガイッレ 小林 厚子
フェネーナ 山下 裕賀
ベルの祭司長 杉尾 真吾
アブダッロ 新海 康仁
アンナ イ・スンジェ

合唱指揮:浅野深雪
管弦楽:藤沢市民交響楽団
合唱:藤沢市合唱連盟
コンサートマスター:平澤 仁
ナブッコ役カバーキャスト:川田直輝

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