【公演レポ】新国立劇場オペラ『愛の妙薬』、中井亮一と大西宇宙が大活躍したロマンティック・コメディ!

2月9日、新国立劇場でガエターノ・ドニゼッティ作曲のオペラ「愛の妙薬」を観賞した。当初出演予定だったキャストが来日不能となったため、前回に引き続き、オール日本人歌手による公演となった。

新国立劇場オペラ「愛の妙薬」は、20210年4月に初演されたチェーザレ・リエヴィ演出版のプロダクションで、4年ぶり、4度目の上演になった。カラフルな絵本をめくるような楽しさと恋愛をベースとしたプロダクションは、バレンタインの季節にぴったり。恋人・夫婦で観てほしいオペラである。

ベルカント・オペラの代表作として知られるドニゼッティの傑作『愛の妙薬』。恋に落ちる青年ネモリーノが、村一番の美人アディーナに恋し、奮闘する物語。1838年から48年当時、イタリアで最も上演されたオペラだという。

村一番の美女アディーナ役は、砂川涼子(ソプラノ)。序盤はやや硬さがあったが、ベルカント唱法が素晴らしく、美しいソプラノを披露。ヒロインらしい高音の透明感と本に親しむ教養ある高貴な女性を演じる振る舞いには目を見張るものがあった。

アディーナに恋をする村の農夫ネモリーノ役は、中井亮一(テノール)。照れ屋で不器用な純情素朴な青年が、アディーナを見つめ、ため息混じりに切々と歌うこの役に中井亮一はピッタリ。中高音の伸びがよく、声に張りがある素晴らしい逸材。歌だけでなくアディーナの心を一日でも射止めたいとする中井の純粋な演技にも魅了された。

ファゴットとハーブから始まる第二幕の名アリア「人知れぬ涙」は、心を込めて「神様、死んでもいい。僕は愛のために死ねるのだ。」と歌い、観客の涙を誘った。歌唱後、中井へ長い拍手が贈られた。

ネモリーノの恋敵の軍曹ベルコーレ役は大西宇宙(バリトン)。堂々とした勢いがある歌声で大健闘。軍人の勇敢さと女性を口説きなれている様を演技でも表現し、ネモリーノ役の中井亮一と共に同作品を牽引した立役者となった。

新国立劇場初登場の中井亮一と大西宇宙がこのオペラの主役になり、コロナ禍でも日本人歌手のレベルが上がったと感じさせてくれたことは大変喜ばしい。従来の海外歌手を中心とした公演と比べても全く遜色ない出来ばえだった。

いかさま薬売りのドゥルカマーラ役は久保田真澄(バス)。「愛を目覚めさせるすごい妙薬」と有頂天に歌う青年ネモリーノの横で、「こんなバカはみたことない」と口八丁に愉快に歌う役を好演し、観客を楽しませた。

指揮は前回のワーグナー楽劇「さまよえるオランダ人」に引き続き、イタリア人指揮者ガエタノ・デスピノーサが担当。歌劇場経験豊富なイタリア人らしく歌に精通し、歌手との呼吸感が心地よい。要所を締めた指揮で幸せな気持ちになれるロマンティック・オペラにふさわしい快音を東京交響楽団から引き出していた。

撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

■ガエターノ・ドニゼッティ
新国立劇場オペラ「愛の妙薬」
公演期間:2022年 2月7日[月]~2月13日[日]
予定上演時間:約2時間30分(第Ⅰ幕70分 休憩25分 第Ⅱ幕55分)
会場:新国立劇場 オペラパレス

■スタッフ

【指 揮】ガエタノ・デスピノーサ
【演 出】チェーザレ・リエヴィ
【美 術】ルイジ・ペーレゴ
【衣 裳】マリーナ・ルクサルド
【照 明】立田雄士

■キャスト

【アディーナ】砂川涼子
【ネモリーノ】中井亮一
【ベルコーレ】大西宇宙
【ドゥルカマーラ】久保田真澄
【ジャンネッタ】九嶋香奈枝

【合唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団

愛の妙薬
新国立劇場のオペラ公演「愛の妙薬」のご紹介。 新国立劇場では名作から世界初演の新作まで、世界水準の多彩なオペラを上演しています。

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