【公演レポ】新国立劇場オペラ『ドン・カルロ』、再び鑑賞したい衝動に駆られる低音の魅力!

5月20日、東京・新国立劇場でヴェルディ作曲の名作オペラ『ドン・カルロ』初日公演を鑑賞した。『ドン・カルロ』は、ヴェルディの23作目のオペラの中では中後期の作品に分類され、フィリップ二世統治下のスペイン宮殿を舞台として重厚長大なグランドオペラ。

ロドリーゴ役の髙田智宏(バリトン)は、広がりがある伸びやかな歌声で聴衆を魅了。今シーズンよりドイツのカールスルーエ・バーデン州立歌劇場に専属歌手として契約し、2017年に「宮殿歌手」としての称号を授与された。高田は、新国立劇場・新作オペラ「紫苑物語」宗頼役での際立った存在感が記憶に新しいがその時よりさらに迫力ある歌声を披露。

世界第一級ロドリーゴ歌手に負けない日本人離れした圧倒的な声量と存在感には驚かされた。髙田は終始にわたり同オペラを牽引。日本人の中からこのような歌手が出てきたことは喜ばしい限りである。

エリザベッタ役の小林厚子(ソプラノ)は、澄んだ強靭な喉を披露。エリザベッタにふさわしい立ち振る舞いと気品さに溢れていた。

音楽的には、第2幕第2場「アトーチャ聖母大聖堂の広場」が聞き応えがあった。王を讃える合唱、異端者の火刑、国王の登場などスペクタクルな場面に溢れ、音楽はドラマチックで変化に富んでおり、オペラならではの醍醐味が味える場面だった。

パオロ・カリニャーニは意気揚々とした指揮ぶりで東京フィル金管陣をよく咆哮させていた。均整のとれた新国立劇場合唱団の合唱も白眉。ヴェルディ自身もこのスペクタクルな場面は気に入っていたようだ。

宗教裁判長役マルコ・スポッティ(バス)の凄みがある低い声に魅せられた。フィリッポ二世は、日本を代表するバスの妻屋秀和。第3幕、宗教裁判長(マルコ・スポッティ)とフィリッポ二世(妻屋秀和)の二重奏は、ゾクッとするような言いようもない快感に襲われた。


フィリッポ二世(妻屋秀和)の名アリア「一人寂しく眠ろう」も低音の魅力に溢れていた。


テノール&ソプラノを「オペラ表の魅力」とすると、バスには「オペラ裏の魅力」がある。
この作品を鑑賞した後、再び鑑賞したい不思議な衝動に駆られた。一度では簡単に理解できない魅力がこのオペラ(スペイン宮廷を舞台にした愛と葛藤の歴史ドラマ)にはあり、ヴェルディが「オペラ王」と称された理由を垣間見る思いがした。

撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

【公演情報】

2020/2021シーズン
ジュゼッペ・ヴェルディ『ドン・カルロ』
Don Carlo/Giuseppe Verdi
全4幕(イタリア語上演/日本語および英語字幕付)
上演時間:約3時間30分(休憩含む)

指揮:パオロ・カリニャーニ
演出・美術:マルコ・アルトゥーロ・マレッリ
衣裳:ダグマー・ニーファイント=マレッリ
照明:八木麻紀

キャスト
フィリッポ二世:妻屋秀和
ドン・カルロ:ジュゼッペ・ジパリ
ロドリーゴ:髙田智宏
エリザベッタ:小林厚子
エボリ公女:アンナ・マリア・キウリ
宗教裁判長:マルコ・スポッティ
修道士:大塚博章
テバルド:松浦 麗
レルマ伯爵/王室の布告者:城 宏憲
天よりの声:光岡暁恵

合 唱:新国立劇場合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

日程: 5/20、5/23,5/26、5/29の全4回
S席24,200円 A席19,800円 B席13,200円 C席7,700円 D席4,400円 Z席(当日のみ)1,650円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
新国立劇場ボックスオフィス 03-5352-9999

公式サイト:
https://www.nntt.jac.go.jp/opera/doncarlo/

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