【会見レポ】吉田都芸術監督が初演出!新国立劇場バレエ団『ジゼル』〈新制作〉制作発表レポート

新国立劇場バレエ団『ジゼル』<新制作>制作発表が、10月3日に新国立劇場で開催された。

英国ロイヤルバレエで世界的なバレリーナとして活躍した吉田都 芸術監督が初めて演出を担当する話題作。吉田と同じく英国ロイヤルバレエで活躍した振付家アラスター・マリオットが改訂振付を担当した同制作発表に登場。4名の『ジゼル』主演ダンサー達(木村優里、福岡雄大、池田理沙子、速水渉悟)と登壇した。

冒頭、吉田芸術監督は自身とジゼルとの関わりについて語った。

「私はサー・ピーター・ライト(ピーター・ライト卿。1977年から1995年まで、バーミンガム・ロイヤル・バレエ団の芸術監督を務めた)の『ジゼル』で育ちました。若いころから主役をいただきましたし、ほかにもあらゆる役を踊ってきたとても大切な作品です。

実はサー・ピーターは最初は『ジゼル』にはあまり興味を抱けませんでしたが、ガリーナ・ウラノワ(ボリショイ・バレエで16年間、最高位のプリマ・バレリーナの座にあった名手)の『ジゼル』を見て、あまりの素晴らしさに作品自体にのめり込むようになったと仰っていました。」

続けて吉田は「『ジゼル』のように、原形をとどめたままこれだけ長く踊り継がれてきている作品はなかなかありません。裏を返せば、本作には現代でも共感できる部分がたくさんあるということです。前出のウラノワの言葉を借りれば「詩情、純潔、知性、信頼、勇気、そういった要素のある作品だからこそ力強いメッセージを伝えられる」とジゼルは類まれな不朽の名作であることを強調した。

初めて演出を担当する吉田版『ジゼル』についてどのような点を重視するかとの問いに対して、吉田は「クラシックバレエのスタイルはしっかりと守り、それに加えてお客様によりストーリーが伝わるような演技のしかた、自然な表現を突き詰めたいと思っています。そのように仕上がると嬉しいです。」とクラシック・バレエのスタイルと演劇性はもちろんのこと、自然な表現も突き詰めていきたいと語った。

続いて、改定振付を担当した振付家アラスター・マリオットが登場。

新国立劇場バレエ団の印象についてアラスター・マリオットは「私たちの言葉にみなさん熱心に耳を傾け、受け止めてくれるので、こちらもさらに!と意欲的になります。とくにこのような有名な作品の場合、すでに多くの知識を持っているにも関らず、新しいアイデアを受け入れ、吸収してくれるは嬉しいことです。チームワークも良く、バレエ団内での情報の共有もスムーズです。その意味でも、家族の中にいるような気持ちになります。

振付師の仕事は、みんなが同じゴールに向かって一生懸命に働けばとても楽になります。この劇場は、ダンサーはもちろん、全てのスタッフのみなさんがこの作品の完成を目指して一生懸命、とても嬉しく思います。」と協力的かつ快適な環境の中で仕事ができることに感謝していた。

新国立劇場バレエ団の『ジゼル』についてマリオットは「今回の『ジゼル』は、英国スタイルを正統に受け継ぐ作品となるでしょう。それは踊りや演技のみならず装置、衣裳に至るすべての面において。ステージ上に立っている人物それぞれへの理解も深く、全体としてしっかりとしているものが出来上がってきております。つまりそれは新国立劇場バレエ団のためのバレエであり、このバレエ団だからできる作品ということです。」と成功へ自信を深めていた。

4名の『ジゼル』主演ダンサー達(木村優里、福岡雄大、池田理沙子、速水渉悟)が登壇。

「これまでにも『ジゼル』の主役を踊った経験がありますが、今回のリハーサルの様子はいかがでしょうか。」とジゼル役の木村優里とアルブレヒト役の福岡雄大に質問があった。

プリンシパルダンサーに昇格したばかりの木村優里は「マリオットさんのご指導によって、舞台全体、キャラクター一人ひとりの人物像がより明確に、細部まではっきりしたように感じています。一幕の村人たちの境遇や生活感、私たち(ジゼルと相手役のアルブレヒト)の掛け合いも、よりナチュラルに、古典的なものは残しながらも日常に近いものになっています。また、雄大さん(福岡雄大)と組ませていただくのはこれで二回目になりますが、いつも明確なビジョンを示していただき、本当に感謝しています。」とキャラクター像が明確になってきていることに感謝した。

木村の相手役でアルブレヒト役を務めるプリンシパルダンサーの福岡雄大は「目線の配り方など小さなことながら非常に効果的なところなどを丁寧にご指導いただいています。これまでとの違いは、『ロメオとジュリエット』や『マノン』のような英国的な、演劇的な要素の多い作品になっているところでしょうか。ドラマティックなバレエというのは以前から目指しているものであり、ドラマ性を最高の状態に高められるように僕ら二人はもちろん、ほかのみんなもそれを目指して日々リハーサルに励んでいます。」と日々の練習の中で確かな手ごたえを感じているようだった。

木村優里に「プリンシパルになったことの受け止めと、バレエ研修所出身のプリンシパルとして思うことは」との質問があった。

木村は「この数年間、吉田監督のもとで学べていることを嬉しく思っています。都さんとお話すると、自分の未熟さや課題が浮き彫りになります。中でもお客様への奉仕の精神、プロフェッショナルとしての姿勢についてもっともっと精進して参ります。

また、私は予科生から研修所で教えていただき、入団しここまできました。研修所所長の今は亡き牧阿佐美先生が仰っていたのが、『舞台というのはダンサーのすべてがさらけ出される。だからこそ技術だけでなく内面も磨いていかなくてはならない』。その信念は今までもこれからも変わりません。引き続きそれを胸に頑張っていきたいと思います。」を決意を新たにしていた。

吉田芸術監督へ「今回はどのような深さ、観客へのアプローチを考えていますか。」との質問が記者からあった。

吉田は「新たに作られた舞台装置や衣裳ですが、しっかりと古典を踏襲したものです。その上で、『技術を習得していなければ。人間性を表現することはできない。だからと言って、形だけの表面的な技術や表現ではそこに何もない空々しいものになる』というウラノワの言葉があります。ダンサーの内面から出る芸術性、それなしには何も伝わりません。」とダンサーの内面での充実を強調。

続けて「ダンサーにそれを習得してもらうために、踊りの技術はもちろん、それぞれの登場人物がなぜそこにいるのか、どんな気持ちでいるのかをアリスターさんから細かくご指導いただいています。ダンサーたちがそこをしっかりと理解して臨んだなら、とても説得力のある『ジゼル』としてお客様に受け止めていただけると信じています。」と新制作を迎える『ジゼル』を心待ちにしている様子だった。

新国立劇場バレエ団『ジゼル』<新制作>はいよいよ10月21日より開幕します。

■新国立劇場 開場25周年記念公演
新国立劇場バレエ団『ジゼル』<新制作>

会場:新国立劇場 オペラパレス

ジゼル:小野絢子 柴山紗帆 木村優里 米沢 唯 池田理沙子
アルブレヒト:奥村康祐 井澤 駿 福岡雄大 渡邊峻郁 速水渉悟

公演日程:

2022年10月21日(金) 19:00
2022年10月22日(土) 13:00
2022年10月22日(土) 18:00
2022年10月23日(日) 14:00
2022年10月27日(木) 14:00
2022年10月28日(金) 19:00
2022年10月29日(土) 13:00
2022年10月29日(土) 18:00
2022年10月30日(日) 14:00

ジゼル
新国立劇場のバレエ公演「ジゼル」のご紹介。バレエを観るなら日本で唯一の国立の劇場に所属する新国立劇場バレエ団で。

▽新国立劇場開場25周年記念公演『ジゼル』スチール撮影のメイキング | 新国立劇場バレエ団

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