【公演レポ】ワーグナー・エキスパートが揃った東京二期会 ワーグナー《タンホイザー》


『タンホイザー』(Tannhäuser)の題名で知られ、中世のタンホイザー伝説とヴァルトブルクの歌合戦伝説に題材を取った、ワーグナー5作目に当たる人気作となっている。

騎士で吟遊詩人のタンホイザーは、官能な愛と純愛の狭間で苦悩し、ヴェーヌスとエリーザベトという二人の女性を愛する。タンホイザーは、官能の愛に溺れそうになるが、聖母マリアのような威光を放つエリーザベトは自らの命を犠牲に彼の罪を償い、救済されるという物語である。


写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦

現代屈指のヘルデンテノールと名高いサイモン・オニールが待望の来日を果たした。世界的なワーグナー指揮者アクセル・コーバーが初来日し、タクトを握ることで注目された公演。

タイトルロールのタンホイザーを務めたサイモン・オニール(テノール)は、官能の愛と純愛の狭間で悩み、自暴自棄に陥った役柄を見事に演じた。オニールは、明るめのくっきりした突き抜けてくる歌声で、名舞台を牽引。第3幕の「ローマ語り」に至るまで圧巻の歌唱を披露した。


写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦

日本人歌手陣も充実した布陣での公演となった。エリーザベトの渡邊仁美は、切々とした情感溢れる歌唱が好印象。


写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦

ヴェーヌスの林正子は、スケールの大きな国際派らしい伸びやかな歌唱と緊張感ある演技が素晴らしい。


写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦

ヴォルフラムの大沼 徹は、主役に引きを取らない立派な歌唱と演技に注目が集まった。「ああ わがやさしの夕星よ」と染みわたるような美声で第3幕「夕星の歌」をしっかりと歌い上げた。


写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦

ヘルマンの加藤宏隆は、深みがある渋めのバスで観客を魅了した。二期会合唱団は、祝祭的なものから厳粛なものまでソロ歌手陣に負けない堂々たるワーグナー合唱を披露し、会場を大いに盛り立てた。


写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦

読売日本交響楽団を指揮したのはバイロイト音楽祭常連、ワーグナーマスターのアクセル・コーバー。コーバーは、豊富なワーグナー指揮経験に裏打ちされた匠の技とオードドックスな解釈で、じっくりと丁寧に作品に向き合っていた。読響は、耳が肥えたワグネリアン納得の豊麗なサウンドを響かせた。


写真提供:公益財団法人東京二期会 撮影:寺司正彦

終演後は、指揮者のアクセル・コーパーとタンホイザー役を務めたサイモン・オニールに最も大きな喝采が寄せられた。

■東京二期会オペラ劇場
ワーグナー作曲オペラ『タンホイザー』
フランス国立ラン歌劇場との提携公演

日時:2024年2月28日(水)17:00開演
会場:東京文化会館 大ホール

STAFF

指揮:アクセル・コーバー
演出:キース・ウォーナー
演出補:カタリーナ・カステニング
装置:ボリス・クドルチカ
衣裳:カスパー・グラーナー
照明:ジョン・ビショップ
振付:カール・アルフレッド・シュライナー
映像:ミコワイ・モレンダ
合唱指揮:三澤洋史
音楽アシスタント:石坂 宏
演出助手:彌六
舞台監督:幸泉浩司
公演監督:佐々木典子
公演監督補:大野徹也

CAST

ヘルマン:加藤宏隆
タンホイザー:サイモン・オニール
ヴォルフラム:大沼 徹
ヴァルター:高野二郎
ビーテロルフ:近藤 圭
ハインリヒ:児玉和弘
ラインマル:清水宏樹
エリーザベト:渡邊仁美
ヴェーヌス:林 正子
牧童 :朝倉春菜
4人の小姓:本田ゆりこ、黒田詩織、実川裕紀、本多 都

合唱:二期会合唱団
管弦楽:読売日本交響楽団

主催
公益財団法人東京二期会
公益社団法人日本演奏連盟

タンホイザー|東京二期会オペラ劇場 -東京二期会ホームページ-
オペラと声楽全般にわたる公演及び研究活動を行うとともに、オペラ歌手、合唱団及びスタッフを育成してオペラならびに声楽全般の振興を図ります。
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