【ゲネプロ】大野和士芸術監督自らタクトを握った新国立劇場オペラ『ペレアスとメリザンド』


新国立劇場オペラ部門が、ドビュッシーのオペラ『ペレアスとメリザンド』を新たに制作し、7月2日から上演した。シーズン最後の演目としての上演にさきがけ、最終総稽古(ゲネプロ)を開催した。

『ペレアスとメリザンド』(Pelléas et Mélisande )は、ベルギーの劇作家モーリス・メーテルリンクが書いた戯曲。フランスを代表する作曲家クロード・ドビュッシーが完成させた唯一のオペラであり、森に囲まれた国を舞台に王太子ゴローの弟ペレアスと王太子妃メリザンドによる禁断の恋の物語。

「印象主義音楽のオペラ」との呼び名が高いが、R.ワーグナーの美学と訣別したドビュッシーが約10年の歳月をかけて完成した。

演出家のケイティ・ミッチェルは「ペレアスとメリザンド」をフェミニズムのレンズを通して演出し、オペラ全体を「メリザンドの夢」として描いた。オペラに登場する男性キャラクターたちはすべてメリザンドに惹かれ、彼女へのファンタジーを投影している。

憧がれの女性(メリザンド)へ愛や嫉妬、現実と空想が交互に描写され、ドビュッシーの印象派絵画を見ているような柔らかで神秘的な音楽が聴くものの心を夢と幻想に溢れた不思議な世界へと誘っていく。

舞台は地下に続いている螺旋階段や泉や海の場面として、水がない古びた室内プールが使われた。舞台の場面進行が、物語のストーリーに従って次々と現れたり消えたりし、ドビュッシーが手掛けたオペラらしい仕上がりに興奮を覚えた。

海外から来た歌手が素晴らしくペレアス役のベルナール・リヒター、メリザンド役のカレン・ヴルシュ、ゴロー役のロラン・ナウリはいずれも素晴らしい歌唱と演技を披露。

ベルギーのモネ劇場や、フランスのリヨン歌劇場などで長く指揮しフランス・オペラの経験豊富な大野和士芸術監督が自らタクトを握り、入魂の指揮で聴衆を魅了。マエストロの的確で引き締まった指揮は、ドビュッシーの神秘性と幻想感、色彩感と陰影といった日常では味わうことができない夢幻の世界を濃密に味わわせてくれた。

■クロード・アシル・ドビュッシー
ペレアスとメリザンド<新制作>
Pelléas et Mélisande/Claude Achille Debussy
全5幕〈フランス語上演/日本語及び英語字幕付〉

会場:新国立劇場 オペラパレス

スタッフ:

【指 揮】大野和士
【演 出】ケイティ・ミッチェル
【美 術】リジー・クラッチャン
【衣 裳】クロエ・ランフォード
【照 明】ジェイムズ・ファーンコム
【振 付】ジョセフ・アルフォード
【演出補】ジル・リコ
【舞台監督】髙橋尚史

キャスト:

【ペレアス】ベルナール・リヒター
【メリザンド】カレン・ヴルシュ
【ゴロー】ロラン・ナウリ
【アルケル】妻屋秀和
【ジュヌヴィエーヴ】浜田理恵
【イニョルド】九嶋香奈枝
【医師】河野鉄平
【合唱指揮】冨平恭平
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京フィルハーモニー交響楽団

ペレアスとメリザンド
新国立劇場のオペラ公演「ペレアスとメリザンド」のご紹介。 新国立劇場では名作から世界初演の新作まで、世界水準の多彩なオペラを上演しています。

▽特別配信版 オペラ『ペレアスとメリザンド』オペラトーク

▽オペラ『ペレアスとメリザンド』オーケストラ歌合わせより

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