【公演レポ】巨匠マレク・ヤノフスキ&NHK交響楽団による「東京春祭」ワーグナー歌劇「ローエングリン」公演!

3月30日「東京・春・音楽祭」ワーグナー歌劇「ローエングリン」(演奏会形式)を鑑賞した。新型コロナウィルス感染症の影響により2年連続の東京春祭・ワーグナー・シリーズは中止となったが、2019年の「さまよえるオランダ人」公演以来、3年ぶりの開催となった。

同歌劇は、弟殺しの嫌疑を受けたエリザが、白鳥の騎士ローエングリンにより救われ、結婚するストーリー。

ローエングリン(テノール)役のヴォルフシュタイナーは、非常に伸びやかで温かみがある歌声が特徴的。第3幕の力ある輝かしいテナーに魅せられた。

エルザ(ソプラノ)役のヨハンニ・フォン・オオストラムはしなやかで柔らかな美声で観客を魅了。澄んだ綺麗な声はずっと聴きたい衝動に駆られた。

テルラムント(バス・バリトン)役のエギルス・シリンスは端正な発声と抜群の表現力が際立ち、オルトルート(メゾ・ソプラノ)役のアンナ・マリア・キウリはドラマティックなメゾソプラノを披露。アンナ・マリア・キウリの心情に迫りくるような歌唱は舞台そのものを価値を高める役割を果たした。

ハインリヒ王(バス)役のタレク・ナズミは声に力があり、王の威厳を感じさせてくれ、王の伝令(バリトン)役のリヴュー・ホレンダーは、メリハリの効いた深みと伸びのある歌声を披露。

主要キャスト6人、ヴォルフシュタイナー、オオストラム、キウリ、シリンス、ナズミ、ホレンダーはみな実力が拮抗しており、総じて安定したすばらしい歌唱。東京オペラシンガースの合唱も聞き応えがあり、同オペラを側面からサポートした。

巨匠マレク・ヤノフスキは、一糸乱さぬ引き締まった指揮でNHK交響楽団を牽引。やや早いテンポながら、良好な関係を築いているNHK交響楽団からワーグナーオペラならではの迫力ある豊潤な響きをひき出した。2幕のオルトルートとエルザのやり取りから幕切れまでは、息をのむ曲展開が白眉。金管楽器の高らかな鳴り響きと燃焼度の高さ、音感・音圧の凄まじさはNHK交響楽団の底力を存分に感じさせてくれた。

ワーグナー歌劇《ローエングリン》のオーケストレーションは独自の魅力を持っているが、巨匠マレク・ヤノフスキのワーグナーらしい重厚な響きを構築する手腕はさすがでこの日、一番の功労者だった。

終演後は、拍手が鳴り止まず何度も巨匠と歌手、奏者へのカーテンコールが行われた。

(C)Spring Festival in Tokyo, Fumiaki Fujimoto.

■東京春祭ワーグナー・シリーズ vol.13
《ローエングリン》(演奏会形式/字幕付)

日時・会場
2022年3月30日 [水] 17:00開演(16:00開場)
東京文化会館 大ホール

出演

指揮:マレク・ヤノフスキ
ローエングリン(テノール):ヴィンセント・ヴォルフシュタイナー
エルザ(ソプラノ):ヨハンニ・フォン・オオストラム
テルラムント(バス・バリトン):エギルス・シリンス
オルトルート(メゾ・ソプラノ):アンナ・マリア・キウリ
ハインリヒ王(バス):タレク・ナズミ
王の伝令(バリトン):リヴュー・ホレンダー
ブラバントの貴族:大槻孝志、髙梨英次郎、後藤春馬、狩野賢一
小姓:斉藤園子、藤井玲南、郷家暁子、小林紗季子
管弦楽:NHK交響楽団
合唱:東京オペラシンガーズ
合唱指揮:エベルハルト・フリードリヒ、西口彰浩
音楽コーチ:トーマス・ラウスマン

曲目

ワーグナー:歌劇《ローエングリン》(全3幕)
上演時間:約4時間20分(休憩2回含む)
https://www.tokyo-harusai.com/program_info/2022_lohengrin/

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