【公演レポ】偉才ミハイル・プレトニョフ&東京フィルハーモニー交響楽団、平和への祈りを捧げるスメタナ≪わが祖国≫

東京フィルハーモニー交響楽団3月定期演奏会を聴いた。指揮は、特別客演指揮者のミハイル・プレトニョフ。コンサートマスターは、依田真宣。プログラムはスメタナの連作交響詩≪わが祖国≫全曲で、休憩を挟んで全6曲が演奏された。

プレトニョフは、東京フィル特別客演指揮者特別客演指揮者という肩書のほかにロシア・ナショナル管弦楽団(RNO)創設者・芸術監督、1978年にチャイコフスキー国際コンクールでピアニストとして第1位を受賞した天才肌の多才な芸術家として知られる。

偉才プレトニョフは2年前の2020年3月の東京フィル定期で「わが祖国」を指揮する予定だったが、新型コロナ感染症拡大の影響により、3度定期演奏会が延期された。4度目の正直となった今回、「わが祖国」全曲が披露された。

チェコのバイブル、国家と言われる名曲「わが祖国」は、1874年から1879年にかけて作曲された6つの交響詩からなる連作交響詩。第2曲『ヴルタヴァ』(モルダウ)が特に有名。

同曲は、スメタナが尊敬してやまないフランツ・リストが創始した「交響詩」という形式で作曲され、全6曲から構成される。ベートーヴェンと同じく、スメタナは「わが祖国」が完成したころ、完全に聴覚をなくしていた。「わが祖国」は

第1曲:ヴィシェフラド(高い城)
第2曲:ヴルタヴァ(モルダウ)
第3曲:シャールカ
第4曲:ボヘミアの森と草原から
第5曲:ターボル
第6曲:ブラニーク

という構成で、コンサートの前半は第1曲「ヴィシェフラド」から第3曲「シャールカ」まで演奏され、後半は第4曲「ボヘミアの森と草原から」から第6曲「ブラニーク」までが披露された。

前半のハイライトは、「第2曲:ヴルタヴァ(モルダウ)」でヴルタヴァがチェコ名、モルダウがドイツ名となっている。

第2曲は悠大なヴルタヴァ川の流れを描写している曲で、東京フィルハーモニー交響楽団は、雄大な河の流れのようなドラマチックな演奏を披露。音の強弱、各奏者の演奏タイミングなどが的確で、プレトニョフの魔法のようなタクトが冴えわたっていた。

後半はテンポは早めながら燃焼度がさらに増した明快な演奏。輪郭がハッキリとした豊麗なオーケストラ・サウンド、各楽器の音の重なり合いが素晴らしく、最終曲「ブラニーク」の力強いファンファーレに心揺さぶられた。

満席の聴衆の拍手に対し、プレトニョフ&東京フィルは感謝の意を示し、アンコールとして「G線上のアリア」が披露された。祈りをささげるような美しい旋律は、世界の平和と自由を祈念しているようだった。

(C)Takafumi Ueno

■東京フィルハーモニー交響楽団 3月定期演奏会

3月10日[木]19:00開演(18:15開場)
サントリーホール
3月11日[金]19:00開演(18:15開場)
東京オペラシティ コンサートホール
3月13日[日]15:00開演(14:15開場)
Bunkamura オーチャードホール

指揮:ミハイル・プレトニョフ
(東京フィル 特別客演指揮者)

スメタナ/連作交響詩『わが祖国』全曲
※2020年・2021年3月延期公演

▼東京フィルハーモニー交響楽団 ミハイル・プレトニョフ指揮によるスメタナ『わが祖国』に向けて

▼【インタビュー】特別客演指揮者ミハイル・プレトニョフ、スメタナ『わが祖国』を語る
https://www.tpo.or.jp/information/detail-20220302-01.php

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