【公演レポ】東京バレエ団が世界へ向けて発信する日本発のグランドバレエ『かぐや姫』第1幕が開幕!

11月6日、斎藤友佳理芸術監督率いる東京バレエ団が、金森穣演出振付による『かぐや姫』第1幕世界初演を迎え、同作品を鑑賞した。

日本発のグランドバレエ『かぐや姫』は、日本人になじみ深い『竹取物語』を題材としている。「竹取物語」は、平安時代前期に成立した日本の物語。竹取の翁(たけとりのおきな)によって光り輝く竹の中から見出され、翁夫婦に育てられた少女かぐや姫を巡る奇譚。

金森は10代で渡欧し、モーリス・ベジャールが創設したバレエ学校に学び、イリ・キリアンが芸術監督を務めていた時代のネザーランド・ダンス・シアターⅡをはじめとする欧州の名門舞踊団でダンサー、振付家として活躍した俊英。

日本に帰国後は、Noism Company Niigata(Noism)芸術監督を務め、際立った芸術活動が注目されている。今年は、第1幕のみ上演し、年をまたいで第2幕、第3幕と創作を続けて全幕のグランド・バレエとして完成させていく、数年がかり壮大なプロジェクトとなっている。

金森穣振付『かぐや姫』のドビュッシーを使用した選曲が素晴らしい。ドビュッシーのフランス音楽が、日本古来の物語にぴったりと合う奇跡に立ち会った。ドビュッシーのあまたあるレパートリーの中から適切な曲を選ぶ金森の選曲センスに脱帽した。

東京バレエ団団長である飯田宗孝が演じる翁が竹取に出かけることから物語は始った。翁は竹やぶに向かったが、竹やぶは夜明けの海から上がってきた緑の精である。24人の女性がポワントで竹やぶを表す群舞(コール・ド・バレエ)の美しさに惹きこまれた。

かぐや姫を踊ったのは新進気鋭のダンサーである秋山 瑛。好奇心旺盛で愛らしい少女の雰囲気がよく出ていた。チャーミングな仕草、弾けるようなジャンプと躍動感溢れるダンスは、この役にピッタリだった。

彼女と出会い惹かれた道児(どうじ)は、村の童の兄貴役という設定で、プリンシパルダンサーの柄本 弾が務めた。

月を見て物思いに耽るかぐや姫と道児のパ・ド・ドゥが素敵で、時が止まってるような錯角を覚えた。まだあどけない表情を持つかぐや姫に優しく寄り添う道児。ドビュッシーの音楽に乗って演じられた二人の愛の交差(パ・ド・ドゥ)は、息を呑むもので観客の感情を大いに揺さぶった。道児役の柄本 弾の包み込むような演技力にも惹きこまれた。

第1幕最後に、かぐや姫が都に行くシーンでは、豪華な衣裳に身を包んだ「姫」が披露された。この場面でかぐや姫が着用したのは十二単をイメージした衣裳で日本の伝統美が表現されていた。第2幕へ向けて期待感が大きく膨らんだ。

豊かに練り上げられた第1幕は、観る者を第2幕、第3幕を今すぐにでも観たい想いへと駆り立てていった。もっと観ていたい、観客の気持ちの高まりが大きな拍手となり繰り返されたカーテンコール。日本バレエ界の新たな歴史は、スタンディングオベーションという喜ばしい光景となってあらわれた。

海外公演の多さと経験では群を抜く東京バレエ団が、世界に向けて発信する日本発の日本作品。2023年4月は第2幕単独公演、2023年10月は第3幕を加えた全幕上演を予定しており、貴重な公演になることが期待される。

(C)Shoko Matsuhashi


◆東京バレエ団『かぐや姫』第1幕 世界初演
日時:11月6日(土)14:00
会場:東京文化会館(上野)

演出振付:金森穣
音楽:クロード・ドビュッシー
衣裳デザイン:廣川玉枝(SOMA DESIGN)
美術:近藤正樹
映像:遠藤龍
照明:伊藤雅一(RYU)、金森穣
演出助手:井関佐和子
衣裳制作:武田園子(Veronique)
テクニカル・コーディネーター:夏目雅也

主な出演者:

かぐや姫:秋山 瑛
道児:柄本 弾
翁:飯田宗孝
緑の精:伝田陽美、二瓶加奈子、三雲友里加、政本絵美、金子仁美、中川美雪、加藤くるみ、髙浦由美子、榊優美枝、中沢恵理子、上田実歩、中島理子、最上奈々、鈴木理央、菊池彩美、瓜生遥花、長谷川琴音、大坪優花、花形悠月、松永千里、平木菜子、長岡佑奈、中島映理子、相澤 圭
童たち:工 桃子、安西くるみ 岡崎隼也、井福俊太郎
村人たち:加藤くるみ、榊優美枝、上田実歩、長谷川琴音、平木菜子、中島映理子、樋口祐輝、生方隆之介、大塚 卓、和田康佑、玉川貴博、鳥海 創、山田眞央、海田一成
秋見:伝田陽美
従者:生方隆之介、大塚 卓、和田康佑、玉川貴博
黒衣:岡崎隼也、海田一成

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