【ゲネプロ】日生劇場開場60周年記念! ヴェルディ歌劇『マクベス』公演

日生劇場開場60周年記念公演 NISSAY OPERA 2023 『マクベス』2日目11月12日(日)組のゲネプロ(最終通し稽古)を観賞した。

1963年、ベルリンドイツオペラ「フィデリオ」で会場を迎えた日生劇場。日生劇場では53年ぶりに巨匠ヴェルディの名作オペラ『マクベス』が新制作された。

『マクベス』(Macbeth)は、イタリアオペラの巨匠ジュゼッペ・ヴェルディが作曲した全4幕からなるオペラ。ウィリアム・シェイクスピアの同名戯曲『マクベス』に基づいて作曲されており、1847年にイタリア・フィレンツェで初演された。『マクベス』はヴェルディ初期の傑作オペラでウィリアム・シェイクスピアの4大悲劇の一つを題材とし、権力に溺れ、我が身を滅ぼす愚かな人間の姿を鋭敏に描いている。

タイトルロールのマクベスは大沼 徹(バリトン)。マクベスはスコットランド王ダンカンに仕える将軍で、王を弑逆してその座につくが苦悩する気弱な姿を演技と歌で的確に描写した。聴きやすく劇場の空気が動くような明るめのバリトンでマクベス役に成り切った。

マクベス夫人は岡田 昌子(ソプラノ)が歌唱。マクベス夫人は、夫に王位を鬼気迫った姿で迫る一筋縄ではいかない難役だが、低音から高音まで破綻ない安定したアリアを終始披露した。岡田は5月《メデア》に続いて難役に挑戦したが見事な歌唱と凄みある演技で同オペラを重厚な芸術作品へと昇華させた。

バクフォー役はバリトンの妻屋秀和が担当。100を超える役を演じた日本を代表するベテランバリトンだが、いつもながら存在感があり、非常に安定した低音に魅了された。

マクダフ役の大槻孝志が大活躍。第4幕アリア「ああ、父の手は」で胸が熱くなるようなテナーが披露された。

7名のダンサーとC.ヴィレッジシンガーズの合唱が高水準。女性合唱団は魔女の役にも挑戦した。

沼尻 竜典指揮・読売日本交響楽団(コンマスは長原幸太)の演奏も色彩感に富み、ヴェルディ歌劇『マクベス』の持つ悲劇性と特殊性を的確に描写していた。開場60周年を迎え重厚な外観と幻想的な内装を持つ日生劇場(1334席)で卓越した響きを聴かせてくれた。

日本を代表するプロオーケストラの一つである読響の演奏力の高さと日生劇場の音響効果の素晴らしさが体感できた公演だった。日生劇場は、客席天井・壁は音響効果上、うねるような曲面で構成されているという利点があり、60年ものの赤ワインのような渋味がある豊潤な響きを堪能した。

シェークスピアの世界を視覚化した粟國 淳(日生劇場芸術参与)の演出とアレッサンドロ・チャンマルーギによる美術は原作の良さと空気感を生かしたもの。すべては夜の出来事で森はマクベスの悪夢の象徴として描かれた。

総じてレベルの高い公演で日生劇場開場60周年記念公演にふさわしいスペクタクルな演出と舞台美術に魅了された。

日生劇場は、NISSAY OPERAとしての2公演に加え、「日生劇場オペラ教室」として中高生のための芸術鑑賞教室公演を3公演上演した。

■日生劇場開場60周年記念公演 NISSAY OPERA 2023 
ジュゼッペ・ヴェルディ『マクベス』
全4幕(イタリア語上演・日本語字幕付)新制作

日時:2023 11.12〈日〉14:00
会場:日生劇場

作曲:ジュゼッペ・ヴェルディ
台本:フランチェスコ・ピアーヴェ
(原作:ウィリアム・シェイクスピア『マクベス』)

指揮:沼尻 竜典
演出:粟國 淳(日生劇場芸術参与)

STAFF:

美術・衣裳:アレッサンドロ・チャンマルーギ
照明:大島 祐夫(A.S.G)
振付・ステージング:広崎 うらん
合唱指揮:須藤 桂司
演出助手:上原 真希
舞台監督:幸泉 浩司(アートクリエイション)
副指揮:喜古 恵理香・ 松村 優吾
コレペティトゥア:平塚 洋子・経種 美和子

CAST:

マクベス:大沼 徹
マクベス夫人:岡田 昌子
バンクォー:妻屋 秀和
マクダフ:大槻 孝志
マルコム:髙畠 伸吾
侍女:藤井 麻美

マクベスの従者(両日):後藤 春馬/金子 慧一
ダンサー(両日):西田 健二/吉﨑 裕哉/中村 駿/鈴木 遼太/永森 祐人/高橋 佑紀/小川 莉伯

管弦楽:読売日本交響楽団
合唱:C.ヴィレッジシンガーズ

主催・企画・制作:公益財団法人ニッセイ文化振興財団[日生劇場]
協賛:日本生命保険相互会社
https://opera.nissaytheatre.or.jp/info/macbeth2023/

▽日生劇場舞台フォーラム 2023『マクベス』舞台芸術の世界

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