【公演レポ】出口大地&東京フィル、造形豊かなチャイコフスキーと多彩な響きのベルリオーズ!

8月2日、フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023で東京フィルハーモニー交響楽団の演奏を聴いた。コンサートマスターは依田真宣。

指揮は、2021年アルメニアのハチャトゥリアン国際コンクールに日本人として初めて優勝し、その名を一気に広げた出口大地。また、同年開催のクーセヴィツキー国際指揮者コンクールにおいても最高位及びオーケストラ特別賞を受賞し注目を集めた。


©T.Tairadate

ピアノは、高い技巧と豊かな音楽性を兼ね備えた日本ピアノ界の重鎮 清水和音。

冒頭のハチャトゥリアン組曲『仮面舞踏会』からワルツ。作曲にあたってハチャトゥリアンが一番力を入れたのが「ワルツ」の作曲。同曲は、オリンピックのフィギュアスケートなどで使用頻度が高い名曲で、2008年~2009年に、浅田真央、織田信成が「仮面舞踏会」を使用し、一気に人気が火がついた。

出口の指揮は、楽曲のテンポ感と曲の動線に至る間のとり方が素晴らしく、終始引き込まれる演奏が東京フィルハーモニー交響楽団によって披露された。


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続いて、チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番。清水和音のピアノは、引き締まった響きと造形豊かなチャイコフスキーが印象的。


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安定した技量のピアノをじっくりと聴かせ、大きな存在感を示した。アンコールは、ラフマニノフ(ワイルド編曲)の「何という苦しさ」が披露され、聴衆を魅了した。


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休憩を挟み、後半はベルリオーズの幻想交響曲。幻想交響曲は、「ある芸術家の生涯の挿話」という表題がつけられているが、ベルリオーズ自身の恋の体験をもとに作られたと言われいる勝負曲。

第1楽章「夢、情熱」・第2楽章「舞踏会」・第3楽章「野辺の風景」・第4楽章「断頭台への行進」・第5楽章「魔女の夜宴の夢」と変化に富んだ音楽構成となっている。


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第2楽章 「舞踏会」は優雅で気品のある1曲となっており、左手指揮者の出口が東京フィルとうっとりする程、洗練した音楽を作り上げたのに驚いた。前半のハチャトゥリアン組曲「仮面舞踏会」からワルツといい、この「舞踏会」といい、曲のテンポとリズム感が出色。例えようもないほど心地よく、ずっと聴いていたい衝動に駆られた。


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第5楽章「魔女の夜宴の夢」は、繊細さが感じられる多彩な響きが見事。
東京フィルハーモニー交響楽団と言えば、毎月の定期演奏会のほか、新国立劇場のピットに常時入るレギュラーオーケストラとしてのオペラ・バレエ演奏、NHKニューイヤーオペラコンサート、東急ジルベスターコンサート、NHK紅白歌合戦などの放送演奏をはじめとする幅広い分野で活躍するオーケストラ。非常に柔軟性があるクリアで艶やかな音色を活かした幻想的な世界をミューザ川崎シンフォニーホールいっぱいに輝かしく描き出した。


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■フェスタ サマーミューザ KAWASAKI 2023
東京フィルハーモニー交響楽団

日時:2023年8月2日(水) 15:00開演
会場:ミューザ川崎シンフォニーホール

指揮:出口大地
ピアノ:清水和音

プログラム

ハチャトゥリアン:組曲『仮面舞踏会』から ワルツ
チャイコフスキー:ピアノ協奏曲第1番 変ロ短調 Op. 23
ベルリオーズ:幻想交響曲 Op. 14

|フェスタサマーミューザ KAWASAKI 2023
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