【公演レポ】イタリアの俊英バッティストーニと創り上げた東京二期会 プッチーニ『エドガール』公演!

4月24日、東京二期会 プッチーニ『エドガール』(セミ・ステージ形式)公演をBunkamuraオーチャードホールで観賞した。

「エドガール」は、「妖精ヴィッリ」に続くプッチーニ2作目のオペラ。プッチーニの歌劇は、3作目に出世作の「マノン・レスコー」、4~6作目はヒット作の「ラ・ボエーム」「トスカ」「蝶々夫人」といった蒼々たる顔ぶれのオペラが並ぶが、成功への前哨戦として重要な位置付けにあるオペラです。

プッチーニは、3~6作目(「マノン・レスコー」「ラ・ボエーム」「トスカ」「蝶々夫人」)がヒットしたのちに、再び改訂版(現在の内容の「エドガール」)を1905年にアルゼンチン・ブエノスアイレスのコロン劇場(世界三大劇場のひとつ)で上演しているので、2作目「エドガール」も重視していたことが伺い知れる。

海外でもめったに聴けない上演回数が非常に少ないオペラだが、プッチーニの2作目らしい若々しく甘く切ない旋律と、ドラマティックな情熱や気概に満ちた素晴らしい作品だった。物語はビゼーの傑作オペラ「カルメン」に似ており、恋愛と殺人が絡み合うストーリーが展開された。

エドガール役の樋口達哉(テノール)は、力強さと甘さを持ったドラマティックな歌唱と演技で聴衆を魅了。樋口は欲望や苦しみ、愛、憎しみなどの感情をストレートに表現。

樋口のBunkamuraオーチャードホールの舞台を縦横に使いこなす情熱的な演技は見ごたえがあり、タイトルロールに相応しい役割を果たした。

フィデーリア役の大山亜紀子(ソプラノ)は、品格とテクニックを兼ね備えており、ステージ上での存在感は目を見張るものがあった。

同オペラにおいて、卓越した歌声で聴衆を惹きつけたのはフランク役の杉浦隆大(バリトン)。バリトン歌手として声量・迫力・ステージング共に申し分ないものだった。特に第1幕のエトガール(樋口達哉)との熱のこもった決闘シーンは手に汗にぎる迫力があり、目が釘付けとなった。

グァルティエーロ役の清水宏樹(バス・バリトン)とティグラーナ役の成田伊美(メゾソプラノ)は安定した歌唱で舞台に華を添えた。

今回最大の立役者が指揮を務めた東京フィルハーモニー交響楽団首席指揮者のアンドレア・バッティストーニ。

イタリア・オペラ界の俊英 バッティストーニの指揮は、情熱かつアグレッシブでオーケストラをフルにカラフルに鳴らす卓越したものだった。オーケストラをたっぷりと豪快に鳴らしたかと思うと、スコアの細部に宿る弱音や微音にも気を配る徹底ぶりも見事だった。ヴェリズモ・オペラのレパートリーを多く手中に収めている若きマエストロは、歌手の息づかいも深く理解しており、両者の呼吸感が完璧だった。第一幕終結部の登場人物全員の重唱を含むドラマティックな音楽は、大変な聞きどころだった。

イタリア・ヴェローナ生まれのバッティストーニが、東京二期会で25歳で鮮烈な日本デビューを飾った「ナブッコ」以来、共演に共演を重ね今年ついに日本デビュー10周年を迎えた。東京二期会 プッチーニ『エドガール』(セミ・ステージ形式)公演は、指揮者・オーケストラ・歌手が一体となって音楽を作る素晴らしさを感じさせてくれる名演だった。

写真提供:公益財団法人東京二期会
撮影:堀衛

■二期会創立70周年記念公演
東京二期会コンチェルタンテ・シリーズ《エドガール》
(新制作/セミ・ステージ形式上演)
(全3幕、日本語字幕付き原語(イタリア語)上演)

日時:4月24日(日)14:00
会場:Bunkamuraオーチャードホール

オペラ全3幕
日本語字幕付き原語(イタリア語)上演
原作:アルフレッド・ド・ミュッセ『杯と唇』
台本:フェルディナンド・フォンターナ
作曲:ジャコモ・プッチーニ

スタッフ:

指揮: アンドレア・バッティストーニ

舞台構成: 飯塚励生
映像: 栗山聡之
照明: 八木麻紀
合唱指揮: 粂原裕介

舞台監督: 幸泉浩司
公演監督: 大野徹也
公演監督補: 佐々木典子

キャスト:

エドガール: 樋口達哉
グァルティエーロ:清水宏樹
フランク:杉浦隆大
フィデーリア:大山亜紀子
ティグラーナ: 成田伊美

合唱: 二期会合唱団
児童合唱: TOKYO FM 少年合唱団
管弦楽:東京フィルハーモニー交響楽団

オペラ公演ラインアップ「エドガール」 - 東京二期会
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