【公演レポ】新国立劇場オペラ G.ヴェルディ『椿姫』、ヴィオレッタ役中村恵理の渾身の歌唱が観客の涙を誘う!

3月16日、新国立劇場オペラ ジュゼッペ・ヴェルディ作曲「椿姫」公演を新国立劇場オペラハウスで観賞した。「椿姫」は、ジュゼッペ・ヴェルディが1853年に発表したオペラで原題は「道を踏み外した女」を意味するLa traviata(ラ・トラヴィアータ)。

ヴェルディのオペラは非常に人気があり、30代後半にさしかかり作曲された中期オペラ3大傑作「リゴレット」「イル・トロヴァトーレ」「椿姫(ラ・トラヴィアータ)」等の充実ぶりは、ベートーヴェンの10年間に及ぶ「傑作の森」(1804年~1814年)に匹敵するのではないだろうか。

第一級の名作オペラがキラ星のように並ぶヴェルディ・オペラの中でも、傑作オペラ「椿姫」の人気は高く、煌びやかなパリ社交界を舞台に高級娼婦ヴィオレッタの愛と哀しい運命を描いた作品です。

アルフレード役を務めたのは、イタリアで躍進中の新進テノール、マッテオ・デソーレ。
デソーレは、ヴィオレッタを街で観かけた時からずっと恋焦がれた役を好演した。神々しく伸びのよいパワフルなテノールで、ヴィオレッタへの愛を告白した。

第2幕のアリア「燃える心を」は、好青年そのものな若々しいテノール。声量十分で安定感がある歌唱は、アルフレードにぴったりで観客に心地よい感動を与えていた。

アルフレードに父親であるジェルモン役は、イタリアの主要劇場で活躍するバリトンのゲジム・ミシュケタ。この役は、息子アルフレードがヴィオレッタにたぶらかされたと信じ、別れを忠告する役だが、ミシュケタは優しく威厳ある声で父親役を好演。包容力がある渋いバリトンに惹きこまれた。

ヒロイン、ヴィオレッタに出演したのは、英国ロイヤルオペラ、バイエルン州立歌劇場などの著名劇場で世界のプリマドンナとして活躍する中村恵理。《椿姫》はヴィオレッタ役の出来がすべてを決めると言っても過言でない「プリマドンナ・オペラ」だが、中村は渾身の歌唱と演技で、観客を感動の渦へと巻き込んでいった。

中村恵理のヴィオレッタがとてつもないほど秀逸していた。コロラトゥーラ・ソプラノとして完璧な歌唱。第3幕は、舞台の中央に古いピアノが置かれ、その上に死に瀕したヴィオレッタが横たわっていたが、その切ない心情の吐露が、絶望にひしがれた哀しい運命の終着を予想させ、観客の涙を誘った。

新国立劇場合唱団は、「乾杯の歌」で豪華な社交界を表現。伸びがあるコーラスを華やかに歌い上げた。

指揮は元ポーランド国立歌劇場音楽監督で、精緻な音楽創りが高評価を得ているアンドリー・ユルケヴィチ。ユルケヴィチは的確な指揮で東京交響楽団から安定感がある美音をひき出していた。

撮影:堀田力丸 提供:新国立劇場

■新国立劇場オペラ
ジュゼッペ・ヴェルディ
椿姫
La Traviata/Giuseppe Verdi
全3幕〈イタリア語上演/日本語及び英語字幕付〉

公演期間:
2022年3月10日[木]~3月21日[月・祝]
予定上演時間:
約2時間45分(第Ⅰ幕・第Ⅱ幕1場75分 休憩30分 第Ⅱ幕2場・第Ⅲ幕60分)

スタッフ

【指 揮】アンドリー・ユルケヴィチ
【演出・衣裳】ヴァンサン・ブサール
【美 術】ヴァンサン・ルメール
【照 明】グイド・レヴィ
【ムーブメント・ディレクター】ヘルゲ・レトーニャ
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】斉藤美穂

キャスト

【ヴィオレッタ】中村恵理
【アルフレード】マッテオ・デソーレ
【ジェルモン】ゲジム・ミシュケタ
【フローラ】加賀ひとみ
【ガストン子爵】金山京介
【ドゥフォール男爵】成田博之
【ドビニー侯爵】与那城 敬
【医師グランヴィル】久保田真澄
【アンニーナ】森山京子
【ジュゼッペ】中川誠宏
【使者】千葉裕一
【フローラの召使い】上野裕之
【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団

椿姫
新国立劇場のオペラ公演「椿姫」のご紹介。 新国立劇場では名作から世界初演の新作まで、世界水準の多彩なオペラを上演しています。

CULTURE

コメント