【公演レポ】新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」公演!渡邊峻郁が1人3役に挑戦し、コールド・バレエが美の極致に誘う!

12月24日、新国立劇場バレエ団「くるみ割り人形」公演を観賞した。2017年に初演された本作は、ウエイン・イーグリングによる華麗でスピーディな振付と上品で華やかな美術や衣裳が見どころの舞台。

ウエイン・イーグリング版は、新国立劇場バレエ団にとってワイノーネン版、牧阿佐美版に続く三番目の版となっており、ドラマチックな夢の世界へと誘われた。

同版で最もハードでチャレンジングな役柄を演じたのが、プリンシパルダンサーの渡邊峻郁。「ドロッセルマイヤーの甥」「くるみ割り人形」「王子」と通常2人のダンサーで演じ分けていた役を1人3役で見事に演じた。渡邊は、プロローグと第二幕のディヴェルティスマン以外の場面でほどんど出ずっぱりとなったが、端正な踊りで観客の期待に応えていた。

とりわけ、「くるみ割り人形」を演じる時は、マスクにより呼吸や視界がさえぎられ大変な思いをする難役だが、凛々しく安定感があるダンスで観客の目を楽しませた。

もう1人の主役である「クララ」と「こんぺい糖の精」役を担ったのは木村優里。バレエ「くるみ割り人形」は、少女の成長物語がストーリーの主軸となっているが、木村の可憐で気品があるバレエは観客をうっとりさせた。

第一幕のパ・ド・ドゥ、第二幕のグラン・パ・ド・ドゥは、試練の中にあっても二人が寄り添い支え合う愛のダンス。しっかりとしたバレエの技量、存在感、演技力よりもたらされた究極の美の境地は、観客を感動の渦と芸術の世界へと誘っていった。

「ねずみの王様」役を担ったのは、渡邊拓朗。ねずみの王様役をダンシングロールとして活躍させているのがこの版の特徴。着ぐるみをつけているとは思えないしなやかで迫力あるダンスは目を見張るものがあった。

「くるみ割り人形」前半の「魅せ場」である雪の結晶のコールド・バレエは、息を飲むほどの美しさ。純白の「雪の世界」を見事に再現したダンサー達に、会場から割れんばかりの拍手喝采が贈られた。

「くるみ割り人形」後半の「魅せ場」である花のワルツは、女性ダンサーのオレンジ色の衣裳と大輪の花の舞台が眩しかった。前幕「雪の結晶のコールド・バレエ」と同様、ピタッと揃った群舞(コールド・バレエ)は、日頃の厳しい鍛錬の賜物で、新国立劇場バレエ団の水準の高さと芸術性が最大限に発揮された舞台となった。

東京フィルハーモニー交響楽団により奏でられたチャイコフスキーの美しい音楽は、ダンサー達の舞踏意欲を刺激する心地よいものとなり、名作バレエに華を添える役割を十分に果たしてくれた。

撮影:長谷川清徳

■新国立劇場バレエ団
2021/2022シーズン公演『くるみ割り人形』
12月24日(金) 19:00

スタッフ・キャスト:

【振付】ウエイン・イーグリング
【音楽】ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー
【美術】川口直次
【衣裳】前田文子
【照明】沢田祐

主役キャスト:

クララ/こんぺい糖の精 木村優里
ドロッセルマイヤーの甥/くるみ割り人形/王子 渡邊峻郁
ドロッセルマイヤー 中島駿野
ねずみの王様 渡邊拓朗
ルイーズ 奥田花純
雪の結晶 柴山紗帆、渡辺与布
花のワルツ 飯野萌子、廣川みくり、井澤 諒、原 健太

指揮 冨田実里
管弦楽 東京フィルハーモニー交響楽団
合唱 東京少年少女合唱隊

くるみ割り人形
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