【公演レポ】東京バレエ団「くるみ割り人形」マーシャと共にファンタジックな世界へ誘われる舞台!

12月になると世界中の劇場でクラシックバレエの傑作「くるみ割り人形」が上演される。
クリスマスイブの夜、少女マーシャ(クララ)が叔父さんから貰ったくるみ割り人形。夜中にねずみたちに襲われたところをマーシャに助けられた人形は王子となり、雪の国・お菓子の国に招待するというストーリーが展開する。

「くるみ割り人形」が初演されたのは、サンクトペテルブルクのマリインスキー劇場。
チャイコフスキーの三大バレエの一つであり、初演から100年以上の時を経て、数多くの改定版が作られている。

東京バレエ団の「くるみ割り人形」を12月11日、東京文化会館で観賞した。装置・衣裳はすべてクラシックバレエの本場であるロシアのモスクワとサンクトペテルブルクの工房などで製作され、ロシアバレエの真髄を伝えてくれる話題作。衣裳は、約200着にも及び全て本場ロシアの職人たちが丁寧に手作りしたものとなっている。

主役のマーシャ(クララ)は秋山瑛、くるみ割り人形王子は宮川新大が務めた。マーシャ役の秋山のバレエは、可憐で優美。少女のどけなさを演出しつつも、踊ると大人の女性の品位を醸し出す魅力もあった。ドロッセルマイヤーからくるみ割り人形をプレゼントされて喜ぶ姿が愛らしかった。

くるみ割り人形王子役の宮川は、足がきれいで技術が高く、端正な役どころを演出。テクニックだけでなくて、王子としての内面的な表現にも惹きこまれ、リードも自然で安定感があった。東京バレエ団「くるみ割り人形」では、マーシャ自身がプリンセスとなり、王子とグラン・パ・ド・ドゥ、アダージオが披露された。華やかでゴ―シャスなバレエに陶酔した。

兵隊とネズミの戦いは、躍動感があり、迫力があった。次々と形を変える幾何学的フォーメーションはわずかな隙もなかった。

前半終盤の「雪の国」と後半「花のワルツ」は、コール・ド・バレエ(群舞)が一糸乱れぬ統一感があり白眉。ひとつひとつ丁寧に合わさったコール・ド・バレエと、ロシア製の舞台・衣裳がミックスされ、クリスマスらしい楽しく美しい夢の世界へと誘われた。

東京バレエ団の演出で、マーシャたちは、クリスマスツリーのいただきにあるお菓子の国を目指し、頂上まであとわずかなところまでくると、スペイン、アラビア、中国、ロシア、フランスと各国の踊りの歓迎を受けた。国際色豊かな楽しい踊りが次々と繰り広げられた。

シアター オーケストラ トーキョーによるチャイコフスキーの音楽とNHK 東京児童合唱団の生の歌声に癒され、クリスマスのファンタジックな世界へ誘われた。

2022年の東京バレエ団の活動は、ブルメイステル版「白鳥の湖」全4幕からスタートする。こちらも注目していきたい。

Photo: (C)Kiyonori Hasegawa

■東京バレエ団
「くるみ割り人形」全2幕
12月11日(土)キャスト

音楽:ピョートル・チャイコフスキー
台本:マリウス・プティパ(E.T.A.ホフマンの童話に基づく)
改訂演出/振付:斎藤友佳理(レフ・イワーノフ及びワシーリー・ワイノーネンに基づく)
舞台美術:アンドレイ・ボイテンコ
装置・衣裳コンセプト:ニコライ・フョードロフ
照明デザイン:アレクサンドル・ナウーモア
衣裳デザイン画制作:オリガ・コロステリョーワ
衣裳技術:ユリヤ・ベルリャーエワ

マーシャ:秋山瑛
くるみ割り王子:宮川新大
ドロッセルマイヤー:柄本弾
ピエロ:鳥海創
コロンビーヌ:涌田美紀
ウッデンドール:海田一成

- 第1幕 -
マーシャの父:中嶋智哉
マーシャの母:政本絵美
弟のフリッツ:上田実歩
ねずみの王様:岡﨑司

- 第2幕 -
スペイン:三雲友里加、池本祥真
アラビア:政本絵美、ブラウリオ・アルバレス
中国:中沢恵理子、岡崎隼也
ロシア:加藤くるみ、昂師吏功、山下湧吾
フランス:中川美雪、工桃子、大塚卓
花のワルツ(ソリスト):榊優美枝、上田実歩、菊池彩美、長谷川琴音
樋口祐輝、岡﨑司、後藤健太朗、南江祐生

指揮:磯部省吾
演奏:シアター オーケストラ トーキョー
児童合唱:NHK 東京児童合唱団

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