6月29日、読売日本交響楽団 第609回定期演奏会をサントリーホールで聴いた。
プログラムの前半は、「グルック(ワーグナー編):歌劇「オーリードのイフィジェニー」序曲」と「フランツ・シュミット:歌劇「ノートル・ダム」から間奏曲と謝肉祭の音楽」。
後半は、「フランツ・シュミット:交響曲第4番」で、指揮は同楽団常任指揮者のセバスティアン・ヴァイグレ。コンサートマスターは長原幸太が担当した。
オペラとオーケストラ両面で造詣が深い常任指揮者ヴァイグレは、知る人ぞ知るオーストラリアの作曲家フランツ・シュミットに光を当てるという極めて意欲的なプログラムに挑戦した。
前半の「フランツ・シュミット:歌劇「ノートル・ダム」から間奏曲と謝肉祭の音楽」はシュミット20代後半に作曲したオペラ的な作品(1906年)で、後半のフランツ・シュミット「交響曲第4番」は50代後半になってからの作品(1933年)である。
作曲した年代が異なる作品を対比させるという非常に興味深いプログラム。いづれも日本ではめったに生で聴けない作品の披露ということあり、クラシックに造詣が深いファンや評論家がサントリーホールに集結した。名手揃いの読売日本交響楽団にとっても一発勝負一夜限りのコンサートいうこともあり、独特の緊張感と期待感に包まれていた。
前半の「フランツ・シュミット:歌劇「ノートル・ダム」から間奏曲と謝肉祭の音楽」は読響の濃厚なヴァイオリンの音色と集中力の高さに目を見張るものがあった。ヨーロッパの劇場に精通したヴァイグレの指揮は明快。読響はヴァイグレの指揮を的確に音に反映し、集中力の高さで観客を魅了した。
後半のフランツ・シュミット「交響曲第4番」。近年、欧米では再評価が進み演奏の機会も増えている作品だが日本ではめったに演奏されない。ドイツの名匠ヴァイグレのタクトは、前半以上に明快かつ明晰。内面に語りかけるような深みがある指揮でフランツ・シュミットの魅力を読響から存分に引き出していた。全体を統一する冒頭と最後のトランペットの独奏も美しかった。
終演後、今夜が最終ステージとなった藤井洋子首席クラリネット奏者と望月寿正ヴァイオリン奏者へ感謝の花束が贈呈された。
最後は、フランツ・シュミットの知られざる魅力に迫る一夜を提供したマエストロ・ヴァイグレへのソロカーテンコールがあり、観客の拍手に応えていた。
©読売日本交響楽団
読売日本交響楽団 第609回定期演奏会
2021 6.29〈火〉19:00 サントリーホール
指揮=セバスティアン・ヴァイグレ
プログラム:
グルック(ワーグナー編):歌劇「オーリードのイフィジェニー」序曲
フランツ・シュミット:歌劇「ノートル・ダム」から間奏曲と謝肉祭の音楽
フランツ・シュミット:交響曲第4番
読売日本交響楽団公式ホームページ:
https://yomikyo.or.jp/
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