【公演レポ】2023年年末ベートーヴェン第九公演:東京都交響楽団・日本フィル・新日本フィル

年末の風物詩、ベートーヴェンの「第九」シーズンが到来。ベートーヴェンの「第九」(交響曲第9番「合唱付き」)は、1824年に音楽の都ウィーンで初演されて以来、”人類共通の芸術”と称される至高の芸術。

「年末に第九を」というアイデアより演奏されたのは1918年に遡る。第一次世界大戦後、ドイツのライプツィヒでムーブメントが始まり、世界最古のオーケストラで知られるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団が、毎年大晦日に「第九」を演奏し続けた。

日本では第二次世界大戦後の1947年、日本交響楽団(現・NHK交響楽団)が、12月に3日連続の「第九コンサート」を行って賞賛され、年末に「第九」を演奏することに。現在は、日本オーケストラ連盟正会員として所属するプロ・オーケストラ25団体ほとんど全ての楽団が年末にベートーヴェン第九コンサートを開催。

ウィンナ・ワルツの本場ウィーンをはじめとするドイツ語圏の国々の年末年始の風物詩と言えばオペレッタ「こうもり」だが、日本の年末の風物詩は「第九公演」となっている。

2023年年末は、東京都交響楽団、日本フィルハーモニー交響楽団、新日本フィルハーモニー交響楽団の「第九」演奏を聴いた。

・ 東京都交響楽団
都響スペシャル「第九」
日時:2023年12月24日(日) 14:00
会場:すみだトリフォニーホール

東京都交響楽団は12月24日~26日の日程で第九公演を3公演開催。都響と非常に良好な関係を築いている首席客演指揮者アラン・ギルバートの指揮は、真摯で推進力あるものだった。都響の演奏は、全曲にわたり緩みがない非常に明確なリズム感と豊かなテンポで進められた。アラン・ギルバートは都響と「人類最高の芸術作品」と称されるに相応しい豊麗な音楽を創り出した。


Ⓒ堀田力丸

ソロ歌唱陣4人全員が欧米から来日するゴージャスな布陣はプロオケの中でも随一。バスのモリス・ロビンソンの強靭かつ重厚な独唱やソプラノのクリスティーナ・ニルソンの歌唱が声量豊かで見事なものだった。


Ⓒ堀田力丸

東京都交響楽団は、現代最高峰の作曲家ジョン・アダムズ本人指揮による定期演奏会を2024年1月18日・19日の日程で開催。当代随一のキャスティングで、歴史的な機会をクラシックファンに提供した。ジョン・アダムズワールドを実現する都響キャスティングの卓越さと存在感には目を見張るものがある。

・日本フィルハーモニー交響楽団
第九特別演奏会2023 大栄不動産・クラシック・スペシャル
日時:2023年12月27日 (水) 19:00
会場:東京芸術劇場

日本フィルハーモニー交響楽団は、12月2日=12月27日の期間、第九公演を開催。最終公演である12月27日、小林研一郎指揮の第九公演を東京芸術劇場で観賞した。

同楽団の第九演奏会の特色として、プログラムの充実という点があげられる。プログラムの前半に、石丸由佳 オルガン独奏によるJ.S.バッハ「高き天よりわれは来たれり BWV73」「主よ、人の望みの喜びよ」「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」の3曲が演奏された。


Ⓒ山口敦

「トッカータとフーガ ニ短調 BWV565」は、数多いバッハのオルガン曲のなかでも特に知名度の高い作品のひとつでなっており、普段聴くことが少ない東京芸術劇場の世界最大級9000本のパイプオルガン(ガルニエ社)をじっくりと聴く機会に浴した。この曲ならではの劇的な響きは、バッハの他のオルガン曲にはないものがある。

ベートーヴェンの指揮で定評がある小林研一郎の円熟味があるタクトは、高水準な響きを日本フィルから引き出した。躊躇せずどんな時にも突き進むことをやめない魂のようなものが感じられた演奏。


Ⓒ山口敦

独唱では、バリトンの青山貴とテノールの笛田博昭が極上な歌唱を披露。青山のバリトンは大変立派なもので、笛田の日本人離れしたドラマティックな歌声にも魅了された。


Ⓒ山口敦

・新日本フィルハーモニー交響楽団
「第九」特別演奏会2023 ユニオンツールクリスマスコンサート
日時:2023年12月16日(土) 14:00
会場:東京オペラシティ コンサートホール

新⽇本フィルハーモニー交響楽団は、2023年12⽉15⽇、16⽇、17⽇、18⽇、19⽇の日程にて、年末恒例の「第九」特別演奏会を開催。今年の「第九」特別演奏会のタクトを執るのは、新⽇本フィル第5代⾳楽監督の佐渡裕。12月16日、東京オペラシティ コンサートホールで同楽団第九演奏会を聴いた。開演前の佐渡裕音楽監督の小気味よいトークが好評で、観客の反応が上々。リラックスした和やか雰囲気の中、音楽を聴くことができた。


Ⓒ大窪道治

オーストリアのトーンキュンストラー管弦楽団音楽監督を務め、ウィーンを拠点とし活躍してきた佐渡の情熱的な指揮は、新日本フィルハーモニー交響楽団と色彩豊かな音楽空間を創り上げた。


Ⓒ大窪道治

独唱陣はソプラノの高野百合絵、メゾソプラノの清水華澄、テノールの笛田博昭、バリトンの平野和など勢いのある布陣。ソリストは、”愛と平和と喜び”をテーマとした歌で栗友会合唱団ととも感動的なクライマックスの瞬間を構築した。栗友会合唱団は「人類愛」と「神への信仰」を豊かに歌い、こころの響き合いを共有。終演後、ブラヴォーの歓声が会場いっぱいに鳴り響いた。


Ⓒ大窪道治

新日本フィルハーモニー交響楽団は、2024年1月19日・20日に開催された第653回定期演奏会で能登半島地震災害義援金募金活動を行った。佐渡監督自ら率先して募金を集め、総額1,230,814円の義援金が集まった。心温かいファンから集められた支援金は全額日本赤十字社へ寄付され、被災者への支援と被災地の復興のために使用される。

■東京都交響楽団
都響スペシャル「第九」

2023年12月24日(日) 14:00開演
すみだトリフォニーホール

指揮/アラン・ギルバート
ソプラノ/クリスティーナ・ニルソン
メゾソプラノ/リナート・シャハム
テノール/ミカエル・ヴェイニウス
バス/モリス・ロビンソン
合唱/新国立劇場合唱団

■日本フィルハーモニー交響楽団
第九特別演奏会2023
大栄不動産・クラシック・スペシャル(東京芸術劇場)
2023年12月27日 (水) 19:00
東京芸術劇場

指揮:小林研一郎[桂冠名誉指揮者]
オルガン:石丸由佳
ソプラノ:市原愛 アルト:山下牧子
テノール:笛田博昭
バリトン:青山貴
合唱:日本フィルハーモニー協会合唱団

J.S.バッハ:高き天よりわれは来たれり BWV738
主よ、人の望みの喜びよ
トッカータとフーガ ニ短調 BWV565(以上3曲オルガン独奏)

ベートーヴェン:交響曲第9番《合唱》 二短調 op.125

■新⽇本フィルハーモニー交響楽団
「第九」特別演奏会2023
アドバンスクリエイトクリスマスコンサート

2023年12月16日(土) 14:00
東京オペラシティ コンサートホール

指揮︓佐渡 裕

ソプラノ︓⾼野百合絵
メゾ・ソプラノ︓清⽔華澄
テノール︓笛⽥博昭
バリトン︓平野 和

合唱︓栗友会合唱団

【プログラム】 ベートーヴェン︓交響曲第9番 ニ短調『合唱付き』 op.125

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