【公演レポ】新国立劇場オペラ『さまよえるオランダ人』公演、ゼンダ役 田崎尚美が圧倒的な歌唱を披露!

1月26日新国立劇場オペラ「さまよえるオランダ人」初日公演を新国立劇場オペラパレスで観賞した。出演予定だった指揮者のジェームズ・コンロン、ゼンタ役のマルティーナ・ヴェルシェンバッハ、オランダ人役のエギリス・シリンス、エリック役のラディスラフ・エルグルは新型コロナウィルス対策のため、来日できなくなり全て邦人歌手が代役を務めた。

歌劇「さまよえるオランダ人」はワーグナーが作風を確率した28才の時の作品。難しい作品が多いと言われるワーグナー楽劇において、比較的親しみやすく初心者にもオススメできる作品。

新国立劇場オペラ「さまよえるオランダ人」公演は、シュテークマン演出のプロダクションにより、2007年に初演され、12年、15年再演を経て、今回が4度目の上演となった。

序曲で、弦楽器のトレモロに乗って、ホルンとファゴットにより「呪われたオランダ人の動機」が力強く鳴り響いた。危険な大荒れの海を航海する様子を見事に表現したワーグナーの作風の巧みさに息を飲んだ。危険な航海の様子をこれほど見事に音楽で描写した作曲家は他にはいない。

第二幕に入り、圧巻だったのは、ゼンタ役の田崎尚美(ソプラノ)。日本人離れしたスケールの強靭柔軟な歌唱。圧倒的な声量とワーグナー作品にぴったりなパワフルな美声は、耳が肥えたワグネリアン(ワーグナー愛好家)も満足したに違いない。新国立劇場デビューにも関らず、ワーグナー王道的な歌唱で、最後まで作品を白熱のまま牽引していった。

オランダ人役の河野鉄平(バス)は、海にさまよい続ける様(幽霊船伝説)を内包的に苦悩する演技と深みがある歌で好演。

ダーラント役の妻屋秀和(バス)とマリー役の山下牧子(メゾソプラノ)は安定感ある歌唱を披露し、確固たる存在感を示した。

「アイーダ」「マクベス」「ドン・カルロ」などイタリアオペラで活躍することが多かったエリック役の城 宏憲(テノール)は、同作品でドイツオペラに挑戦し、新境地を切り開いた。凛々しい出で立ちと輝きがあるテノールで観客を酔わせていった。

ゼンタ役の田崎尚美と同様、今回の立役者が、新国立劇場合唱団。
水夫たちの帰港を待つ恋心を歌った女声合唱「糸車の合唱」は、清らかで美しく心温まるものだった。

第三幕、男声合唱曲「水夫の合唱」は、力強く男らしい堂々とした合唱が全開。観客を熱狂の渦に巻き込み、救済を主題とするフィナーレを迎えた。

撮影:寺司正彦 提供:新国立劇場

■リヒャルト・ワーグナー
新国立劇場オペラ「さまよえるオランダ人」

公演日時:2022年 1月26日
予定上演時間:約2時間50分(第Ⅰ幕55分 休憩25分 第Ⅱ・Ⅲ幕90分)
会場:新国立劇場 オペラパレス

<スタッフ>
【指 揮】ガエタノ・デスピノーサ
【演 出】マティアス・フォン・シュテークマン
【美 術】堀尾幸男
【衣 裳】ひびのこづえ
【照 明】磯野 睦
【再演演出】澤田康子
【舞台監督】村田健輔

<キャスト>
【ダーラント】妻屋秀和
【ゼンタ】田崎尚美
【エリック】城 宏憲
【マリー】山下牧子
【舵手】鈴木 准
【オランダ人】河野鉄平

【合唱指揮】三澤洋史
【合 唱】新国立劇場合唱団
【管弦楽】東京交響楽団

【協 力】日本ワーグナー協会

さまよえるオランダ人
新国立劇場のオペラ公演「さまよえるオランダ人」のご紹介。 新国立劇場では名作から世界初演の新作まで、世界水準の多彩なオペラを上演しています。

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