【公演レポ】チョン・ミョンフン、『春の祭典』にて東京フィルと一糸乱れぬアンサンブルが秀抜!

2月27日、東京フィルハーモニー交響楽団2月定期演奏会を東京オペラシティコンサートホールで聴いた。指揮は、名誉音楽監督のチョン・ミョンフン。前半は、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」。後半は、ストラヴィンスキーバレエ音楽「春の祭典」というプログラム。


撮影=藤本崇/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」は温かくマエストロの人柄を思わせるような演奏。マエストロ チョン・ミョンフンは、巧みな指揮で、作曲家が生きた時代の「自然観」を結晶化させていた。


撮影=藤本崇/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

後半ストラヴィンスキーのバレエ音楽「春の祭典」には驚かされた。和声は不協和音が多く、初めて聴く者には鮮烈な印象を与える楽曲だが、チョン・ミョンフン&東京フィルは、雄弁にして繽紛。生気に富んだ熱演を披露し、アンサンブルは極めて豊麗。楽団員の気合がひしひしと伝わるような熱き血潮を感じさせた。こうした体験は「生」の演奏でないと味わえない。


撮影=藤本崇/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

引き締まった密度の濃いサウンドながらも、春のきざし、生命力、大地のリズムといったものがホール全体に溢れた。「春のきざし」の弦は重厚で迫力あり。強奏な場面ではパーカッションは強烈で、スケールが大きかった。「大地の踊り」のシャープな打撃の連続は、会場でしか味わえない盛り上がりを魅せた。


撮影=藤本崇/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

土俗的な「生贄の踊り」は、金管の容赦ない荒々しさが卓越。チョン・ミョンフンの指揮は、リズム感が秀逸していおり、透明感が高く、不協和音が神秘的に響かせていく見事な手腕を発揮。


撮影=藤本崇/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

さすがマエストロチョンはどんな音楽も上手く纏め上げるものだと舌を巻いた次第である。互いの心からの信頼だけが成し得る一糸乱れぬ音をつむぎだし、チョン・ミョンフンと東京フィルの強い結びつきと信頼関係を感じさせる演奏であったことは間違いがない。演奏後、チョンは楽員全員をもう一度ステージに呼び戻し、観客の喝采に応えていた。


撮影=藤本崇/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

東京フィルハーモニー交響楽団の記念すべき第1000回定期演奏会は、チョン・ミョンフン指揮でメシアンの「トゥランガリーラ交響曲」を6月23日に演奏する。東京フィルとは2007年以来となる実演で、立ち会うファンは究極的なメシアン体験の目撃者になるに違いない。


撮影=藤本崇/提供=東京フィルハーモニー交響楽団

■東京フィルハーモニー交響楽団
第160回東京オペラシティ定期シリーズ

日時:2024年2月27日(火)
会場:東京オペラシティコンサートホール

指揮:チョン・ミョンフン(名誉音楽監督)

ベートーヴェン/交響曲第6番『田園』
ストラヴィンスキー/バレエ音楽『春の祭典』

第160回東京オペラシティ定期シリーズ | 東京フィルハーモニー交響楽団
2024年2月27日(火) 19:00 東京オペラシティコンサートホール
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