脚本家で俳優として活躍する宅間孝行が手掛けるエンターテインメントプロジェクト「タクフェス」が今年10周年を迎えた。第11弾となる舞台「晩餐」は、10月から12月にかけて、埼玉、仙台、大阪、札幌、名古屋、東京と上演中。
2013年に初演をした後、一度も再演をしておらず、この度、約10年の時を経て再演となった本作だが、ヒロインの山科舞子をWキャストで演じるのが、高柳明音と入山杏奈だ。
今回、初めてタクフェスへの参加となる高柳と、3作目の出演となる入山にインタビューを実施。
本舞台の見どころや、共演者とのエピソード、山科舞子を演じる上での意気込みを聞いた。
―高柳さんはタクフェスに初めての出演ですが、当初タクフェスの印象はいかがでしたか?
高柳:実は私、タクフェスは一度も見たことが無かったんです…!
なので、「どういう舞台なんだろう?」と思っていたのですが、今回、急遽お話をいただいて、その晩餐が再演ということで、その初演の映像をいただて見ました。
すごい面白くて、こんな面白い作品に声をかけていただけたっていうのが素直に嬉しかったです。
急遽ですが、この作品を自分を通して届けられたら嬉しいなと思って今回受けさせていただいたので、「晩餐、本当に素敵!」というのが最初の印象でした。
―入山さんはタクフェスに3度目の出演とのことで印象はいかがですか?
入山:笑って泣けてハートフルな…と銘打ってる通りの舞台だなという印象です。
今まで舞台は見たことがないよ!という方の第一歩にすごく向いてる舞台だなという気がします。舞台を沢山見ている方ももちろん楽しめますし、初心者の方でもハードル高くなく、気軽に楽しんで見ていただける作品だなと思います。
―今回、役作りで意識されたところはありますか?
入山:私は、”女の子らしい”という意味で、可愛くなりすぎないようにしようというのは気をつけています。
ひょうきんで、いつも”明るく、全力!”みたいな姿であるほどキャラクターが良く見えるのかなと思って。
女の子らしい可愛さは捨てようということは意識して取り組んでいます。
高柳:最初に山科舞子を見たのが初演の映像だったのですが、田畑智子さんという女優さんが本当に素敵で、最初見たとき本当に良すぎて「私にこれができるのだろうか」と、めちゃくちゃ不安になったんです。
でも、作品を作っていく中で、「全然別物だな」という感覚があって、確かに初演とセリフが同じところももちろんあるし、でも今回のために書かれてるセリフもたくさんあるし、山科舞子という役をWキャストで杏奈ちゃんと二人でやっていても結構違うと思いました。
演出の宅間さんに「名古屋出身だから名古屋弁に変えていいよ」と言われて、ほとんどのセリフを名古屋弁に変えたので、本当に新しい感覚でしたね。
Wキャストってやっぱり同じセリフ、同じ動きをするっていうイメージだったんですけど、本当に全然違う2人になりました。
だからこそ、どっちも見てほしいなっていう気持ちもあるし、十年前の田畑さんの舞子が素敵だったなっていうのは私も思うけど、今年の舞子も全然別物として楽しんでもらえたらいいなって。
だからいかに自分らしく舞子をできるか…と言っても、自分が舞子と全く同じ性格かって言ったらかなり違うなと思います。
でも、似ているところもあるし、寄り添えるところは寄り添って、自分にいかに落とし込んでできるかっていうのもやってましたね。
―入山さんもスペイン語とか千葉にまつわる部分とか、そういったところで入山さんらしさを意識されたんですか。
入山:Wキャストって周りのキャストとの連携もあるし、「できるだけ同じようにやろう」って揃えるのが基本だと思うんですけど、逆に「できるだけ違うことをしよう」みたいなっていうのは意識していたりします。
その方が別日で見に来てくださったお客様も楽しめたりするとは思うので。
―お二人は、会わない日でも状況を共有されていたとお聞きしましたが、Wキャストで同じ役を演じるにあたって、お二人の中で共通認識を持とうといった意識はありましたか?
高柳:はい!一緒に走り抜けようって感じで。(笑)
入山:結構急だったので。(笑)
高柳:私たちも一週間ちょっとくらいしか稽古がなかったので、本当にお互いに参加できる日とできない日が結構あったりして、常に「ここ変わったからこうしよう!」とか「こうすることになったよ!」とか結構こまめにやり取りしていました。
稽古の時もだし、今もそれは続いてますね。
この間は大阪で、最初は杏奈ちゃんの回があって、最後に私の回があったんですけど、最後の時に舞子のキッカケが変わって「変わったから!」って送ったりとか。
「次の北海道はよろしく!」みたいな。(笑)
一緒にやってきたけど一緒に立つ日はもちろん無いので、共演はLINEしかないというか、直接伝えることはリアルタイムではできないのでその辺は少し難しいです。
―永井大さんとのコンビネーションはいかがですか?
入山:本当に稽古時間が短くてやばいと思いましたし、永井さんも、セリフが入るまでにもちろん時間必要じゃないですか。
そこから合わせていく作業に入るので、最初はあせりのような感覚もあったんですけど、私の感覚としては大阪入ってからのゲネプロで合わせた日から急に息が合ったみたいな感じがありました。
漫才やるにしても何するにしてもすごい呼吸がピッタリになったんです!
高柳:永井さんが入るって決まってからの稽古期間が一週間くらいしかなくて、その中でWキャストなので、やっぱどっちかしか入れなくて、私は通し稽古やらずに大阪公演に挑んだんです。
初めて永井さんと通す日が本番だったので、お互いに「頑張ろう!」みたいな感じで。
永井さんから、大阪の初日杏奈ちゃんと一緒に立って、「すごく楽しかったし、一応大きなミスもなくできたから、安心して大阪に来てね」という連絡をしてくださって。
永井さんとの掛け合いも、沢山練習できたわけじゃなかったので、「大丈夫かな・・・」っていう不安もあったんですけど、そうやって連絡をしてくださったので、安心して自分のことに集中出来ました。
本番迎えてすごく楽しくてですね。
私が最初に参加した大阪が関係者限定みたいな公演だったので、タクフェスを知った上で、好きな上で来ているお客さんがめちゃくちゃいてお祭りみたいなテンションだったんですよ。
「あれ私、吉本新喜劇やってる?」ってくらいめちゃくちゃ盛り上がってて、全てを拾ってくれる大阪の血なのか、なんかそれが本当にすごくて支えられたというか、すごい熱い雰囲気でやらせていただいたので、それに乗っかって楽しんでできたかなっていう気持ちでしたね。
―アドリブはありますか。
入山:アドリブにみえる場面は、実は大筋は決まっているんです。台本には無いんですけど、稽古場で粗方の流れを決めているので、本当のアドリブよりはどっしり構えてできている感じがあります。
浜谷さんのギャグだけ毎日変えてアドリブでやってますね。(笑)
高柳:私たちもステージ上で楽しみに、「今日何してくれるのかなー」と思ってやってるぐらいで。(笑)
でも、宅間さんが「思ったことはセリフじゃなくても声に出していいよ!」と言ってくださるので、アドリブとかじゃなくて、普通に生活音の一部として結構声はその日によってちがうこと言ってるかもしれないです。
「ねー!」とかも言うし、「そうだよねー!」とか。多少の違いかもしれないですけど、セリフじゃない掛け合いのような言葉は結構その時に発せられるものがあったりはします。
初演の時見て、「これ絶対アドリブだ」と思って見てたやつが全部決められてて、驚きました。(笑)
―稽古場や共演者との雰囲気はいかがですか。
入山:カンパニーのメンバーがファミリーすぎて・・・。
私は、稽古3週目くらいで遅く合流したのですが、初日の感じが一切なくて、宅間さん、浜谷さん、大藪さん、広田さんと、数年前に一緒にやっているメンバーなので、もう半分ファミリー感がありました。
あと、大藪丘を超える逸材が現れたんです(笑)“中野恵那”ちゃんなんですけど、稽古場でみんながいじって「これ言ってみてよこれやってみてよ」って言ったことを全部スパーンスパーンって返していくんです。(笑)
ただ、答えが全部間違ってるんですよ。(笑)
間違ってることを自信満々に答える姿が面白くて、でも愛おしくて。
でもちょっとずつ頭良くなってきてるんです、問題を出されすぎて。(笑)
この間新しいの出てましたよ。「犬も歩けば、フンも歩く!」って言ってました。
高柳:本番中にも、宅間さんが楽しんで、たまにいじって急に恵那ちゃんに問題出したりするんです!(笑)
入山:「ロンドンはどこの首都?」「パリ!」みたいな。(笑)
―話は変わりますが、お二人はグループ活動の時は面識はあったのですか?
入山:意外にもほぼなかったんです。でも、私が覚えてるのが、甲子園一緒に行きました。
高柳:あ~!MVの!熱闘甲子園のテーマソングを歌わせてもらって選抜に選んでいただいて。
入山:あれMVでしたっけ?
高柳:どうだっけ。(笑)
―密に連絡を取るのは今回が初めてなんですね。
高柳:連絡先を知らなくて、今回入って初めてでした!
多分、杏奈ちゃんはいっぱい言われてると思うけど、私、杏奈ちゃん元々あんまりイェイ!みたいなタイプじゃないと思ってたんですよ、AKB時代は。
なんかこうスッとしてて、クールビューティーってイメージだったんですけど、久々に会ったらなんかもうparty partyみたいな感じで超明るくなってて。(笑)
お酒が好きだから、稽古が終わると「飲みに行こうぜ!」とみんなを誘われていて!
私、全く飲まないからあんまり一緒に飲みには行かなかったんですけど、でもなんかその海外に留学されて、新しいドア開いたのかなって。(笑)
舞子って役を一緒にやるってなったときに、どちらかというと私が表でうるさいイメージなので、ステージとかイェイ!みたいなタイプなので、ぴったりだと思われがちですけど、杏奈ちゃんの舞子を見たときに「あ、舞子だ!」って思って。すごいなーって思った思い出です。
―入山さんのメキシコに行かれた経験でそういうところも変わってきたんですかね。
入山:そうですね。2018年に行ったんですけど、その時から、すごく周りから「明るくなった」って言われるようになって。殻を破った感覚に近いですね。なんかこう元々家の中とかでは末っ子なので結構家族を笑わせるのが好きだったりとか、すぐおちゃらけたりとかしていたんですけど、やっぱ14歳からグループに入って、みんなにシュッとしてるイメージを持たれることが多かったので、自分でもそのイメージに勝手に寄っちゃっていたのですが、それが海外行って全部パーンって殻が弾けたみたいな感じは自覚としてもあります。
―最近の高柳さんはパーンと割れたことはないんですか。
高柳:ないですね。(笑)
私は、根がそんなにイェーイ!というタイプではないので、本当にご飯も家で自分で作って食べたいみたいな感じで。(笑)
たまに皆でご飯行くことはあったんですけど、今回の集団が皆若くて、、。
年上は浜谷さんと加藤貴子さんと永井さんと宅間さん。あとは皆年下で若いので、パワーに圧倒されています。(笑)
21時とかまで稽古しているのに、その後にご飯いったりしたら、次の日朝10時から稽古とか行けないじゃないですか・・・。
でも、今度の北海道とかは皆でご飯いったりするのでそういうところではちゃんと参加して皆で仲を深められたらいいなって思ってます。(笑)
入山:皆早く一緒にご飯食べたいなって思ってますよ!(笑)
―今後の公演で楽しみなことは何ですか。
入山:地方によってなのか、劇場によって、一個変えていこうと思っている部分があって、アドリブにほぼ近いシーンなんですけど、一発ギャグやるところを、今後色々変えていきたいなと思っている部分があるので、各地方各地域で楽しんでもらえたらなって思ったりしてます。
高柳:あれはさ本番急にやってるの?
入山:「今日違うことやります!」と宅間さんにお伝えして、「いいよー!」でやっています。(笑)
高柳:私も一応一ネタぐらい考えていて。
でも、意外と地方で私が公演する回が2、3回くらいしかないので、そんなにやる場所もなくて。
私が今やってるネタが現場で皆に気に入られてて、私はめちゃくちゃ真面目にやってるんですけど、皆に「よくあんなできるね」みたいに言われるからそれやったほうがいいのかなーと思いながらやってるんですけど。(笑)
また、地元の名古屋でストレートな舞台をやるのって本当に初めてに近いんです…。殺陣があったり、歌があったりっていう舞台はあったんですけど、ここまでストレートな舞台、愛の物語、家族の物語みたいなやつはあんまり無いので、家族も見に来てほしいって声かけたし、地元のグループ時代とか応援してくださったファンの人とかも見に来てくれると思うから、「大きくなって帰ってきたねー!」って思ってもらえるように少しでも頑張りたいなっていうのと、最後までしっかり駆け抜けられたらいいなって思ってます。
―今年はどんな一年でしたか?
高柳:今年の後半は、この舞台も入ってきて、本当に怒涛でした。(笑)
私は、あまり計画を立てるタイプではないので、本当にその時その時なんですけど、それをいい意味でぶっ壊してくれた一年だったなって。
ずっとエキサイティングで、挑戦続きで楽しかったし、来年も色んなお芝居に挑戦したいなって思ってます。
今年の目標にしてたのが、車の免許を取ることと、新しくインコを迎えるっていうのが目標だったんですけど、それが見事に全部流れたので、来年はそれをちゃんと叶えられるようにしたいです。(笑)
入山:私は、やりたいことを全部やれたな!という感じです。
国内で旅行もしたし、国外の旅行もしたし、メキシコにも半年間行ってて、向こうで仕事もできて。そして、こっち帰ってきて舞台も2本出来ましたし。
やり残したのは、車の免許と、ファンクラブの対面のイベントを本当は誕生日にやる予定だったんですけど、誕生日がタクフェスの名古屋公演なのでできなくなっちゃって、でもそれくらいですかねできなかったこと。
やりたいこと全部できて、本当に充実した一年でした。
―最後に、この舞台を楽しみしている方へのメッセージをお願いします。
高柳:本当に作品が素敵で、私自身もこの作品を見たときに本当に色んなものを大切にしようと思えて、笑えるし泣けるんです。
普段、生活をしていて感情を殺さなくちゃいけない場面ってめちゃくちゃあると思うんですよ。
だからこそ、爆発させたい!何か発散したい!という人でも楽しめると思います。
あと、このタクフェスという企画に私も初めて参加させていただいて、舞台が終わった後にダンスパートがあったり、本編が始まる前に宅間さんが登壇して、雑談会があったり、じゃんけん大会があったり、タクフェスっていうだけあってお祭りっていう感じがあるので。
皆が、この時間を過ごすだけで色んなものを持って帰れる時間になるんじゃないかなと思っています。楽しい気持ちもだし、温かい気持ちとか、切ない気持ちとか。
でも、最後は笑顔で終われるような企画だと思うので、本当に沢山の方に年末最後の舞台として選んでもらえたら嬉しいなって。あと地元名古屋も行くので、沢山の方に見に来ていただけるように頑張りたいと思います!
入山:本当にお客さんとの近さは、今まで舞台やってきても見てきてもタクフェスが圧倒的というか、こんな舞台はないんです。
そういうところも楽しみにしてほしいですし、本当に笑って泣けるっていうところが文字通り、なんなら笑いながら泣けたり、泣きながら笑えたりするところがあったりします。
本当に感情が全部揺さぶられて、浄化される感覚があって、私たちもお芝居しているというよりは本当に生きているんです。
今回の舞台、シェアハウスなんですけど、「そんなシェアハウス住みたいな!」と思ってもらえるようになってると思うので、ぜひ楽しんでいただけたらなって思います。
あとは写真タイムもあります。写真、動画是非撮りに来てください!(笑)
<タクフェス 第11弾「晩餐」概要>
2023年12月8日(金)~17日(日)
東京都 サンシャイン劇場
作・演出:宅間孝行
出演:永井大、入山杏奈(Wキャスト)、高柳明音(Wキャスト) / 森迫永依、浜谷健司 / 広田亮平、大薮丘、櫻井佑樹、中野恵那、菅原ブリタニー / 加藤貴子 / 宅間孝行
映像出演:山崎静代
コメント